チャプレン ヨナ 成成鍾 司祭
「 今を生きる 」(ルカ4：14-21)

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「この聖書の言葉は、今日、あなたがたが耳にしたとき、実現した」
(ルカ4：21）

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「 今を生きる 」

アメリカの俳優ロビン･ウィリアムス(Robin Williams、1951-2014)をご存じでしょうか。聖公会の信徒で演技派俳優として知られた彼の代表作に『今を生きる』という映画があります。原作は『Dead Poets Society(死んだ詩人の社会)』です。映画にラテン語の「カルペ・ディエム(Carpe diem)」という紀元前1世紀の古代ローマの詩人ホラティウス(Horatius、BC65-BC8)が残した詩の一句が度々引用されます。「カルペ・ディエム」は「その日を摘め・一日の花を摘め」という言葉ですが、意訳すると「今この瞬間に忠実に生きなさい(enjoy the moment)」となります。つまり過去のことを後悔することも、未来のことを心配することもせず、今この瞬間を忠実に歩みながら楽しみなさいという意味です。

映画は卒業生の七割以上が一流レベルの大学に進学する全寮制の名門私立学校を舞台とします。伝統と大学入試だけが重要視される学校に、キーティングという英語教師が赴任してきますが、彼を通して学校に大きな変化が起こり始めます。彼は特色のある教育方法を用いて「カルペ・ディエム」、つまり「今この瞬間を忠実に生きなさい」と力説しながら、学生たちに人間らしい生き方について考えさせ、それを見る目を開かせます。社会的な通念に引きずられるのではなく、自らが未来のことを設計し日々を忠実に生きることこそが何よりも大切であると教えたのです。

ところで皆さんは、今この瞬間を楽しんでいるでしょうか。神様が与えてくださった日々に忠実でありながら未来に向かって進んでいるでしょうか。もしかしたら過去についての後悔や未来についての不安のために、今を生きることができなくなっているのではありませんか。中世の偉大なる霊的な師マイスター･エックハルト(Meister Eckhart、1260?-1328?)は“最も大切な時は、いつも今である。最も大切な人は、いつも今あなたが向き合っている人である。そして最も大切な行為は、いつも今、愛することである。”という言葉を残しました。では、皆さんは今をどのように生きているのでしょうか。

今日の福音書の中でキリストは「この聖書の言葉は、今日、あなたがたが耳にした時、実現した。」(21)と語られました。これは福音書に記されているキリストの説教の中で最も短いものですが、この一言の中に福音の核心があります。それは、キリスト教が最も大切にしていることは、いつも今であり、今こそ福音の実現の時であるということです。つまり、今こそが救いの時であり、今を生きることによって生活の場で救いが実現されるようになるのです。キリストは、ただ過去に存在した歴史的な人物だけではありません。今現在も私たちと共に生きておられる存在です。それゆえ、キリストを信じる信仰も、教会も、聖書のみ言葉も過去のものではなく今現在のものなのです。そして神様を信じる人たちも、いつも今この瞬間を生きる者であり、キリストと共に永遠なる今を生きる者なのです。

皆さん、今この瞬間を生きてください。私たちの人生は過去のものでも未来のものでもありません。今日という新しい日が毎日与えられますので、いつも今日だけを生きながら自分自身を絶え間なくアップグレードしてください。過去を教訓とし未来を準備する現在進行形の人生を送ることができますように。



＜福音書＞ ルカによる福音書 4章14～21節

14イエスは“霊”の力に満ちてガリラヤに帰られた。その評判が周りの地方一帯に広まった。 15イエスは諸会堂で教え、皆から尊敬を受けられた。

16イエスはお育ちになったナザレに来て、いつものとおり安息日に会堂に入り、聖書を朗読しようとしてお立ちになった。 17預言者イザヤの巻物が渡され、お開きになると、次のように書いてある個所が目に留まった。

18「主の霊がわたしの上におられる。
貧しい人に福音を告げ知らせるために、
主がわたしに油を注がれたからである。

主がわたしを遣わされたのは、
捕らわれている人に解放を、
目の見えない人に視力の回復を告げ、
圧迫されている人を自由にし、
19主の恵みの年を告げるためである。」

20イエスは巻物を巻き、係の者に返して席に座られた。会堂にいるすべての人の目がイエスに注がれていた。 21そこでイエスは、「この聖書の言葉は、今日、あなたがたが耳にしたとき、実現した」と話し始められた。