聖路加国際大学 聖ルカ礼拝堂

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2024年12月15日(降臨節第3主日)(2024/12/17)

チャプレン ヨナ 成成鍾 司祭
「 アドベンチャーな人生 」(ルカ3:7-18)

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「その方は、聖霊と火であなたたちに洗礼をお授けになる。」
 (ルカ3:16)

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降臨節を意味するアドベント(Advent)は、ラテン語のアドベントゥス(adventus)から由来しますが、それは英語で冒険のことを意味するアドベンチャー(adventure)の語源でもあります。アドベンチャーは、アドベントとベンチャーが合わさった言葉として、ベンチャーには思い切って進むという意味があります。言葉の意味から考えてみますと、神の子キリストが人間として生まれたことを記念するクリスマス、またその準備期間であるアドベントこそ、何よりアドベンチャーなひと時だと言えます。今日の福音書は、後から来られるキリストのためのアドベントの人生を送った洗礼者ヨハネについて伝えてくれますが、彼の生涯はまさにアドベンチャーそのものでした。彼は「らくだの毛衣を着、腰に革の帯を締め、ばったと野蜜を食べる」(マルコ1:6)生き方を選び、荒れ野でひとえにキリストの道を整えるための人生を送り、キリストの道を開くために自分の首までも惜しまずに差し出しました(マタイ14:1‐12参考)。皆さんは聖書が証している以下のような彼の生き方についてどのように思うのでしょうか。

一つ、都市で生活すれば便利であることを、彼は知らなかったのでしょうか。知っていたにもかかわらず、あえて荒れ野にいたのは、世の価値ではなく神様のみ旨を頂くためでした。彼は孤独と試練、その深い沈黙の中で祈りながら、主だけを求めました。「神の言葉が荒れ野でザカリアの子ヨハネに降った。」(ルカ3:2)

二つ、絹で体を包むと感触がいいことを、彼は知らなかったのでしょうか。知っていたにもかかわらず、あえてらくだの毛衣で満足したのは、自分が誰なのか分かっていたからです。服とは存在のアイデンティティを象徴するものです。彼は謙虚に告白しました。「私はキリストの履物のひもを解く値打もない。」(ルカ3:16) 「キリストは必ず栄え、私は衰える。」(ヨハネ3:30)

三つ、腰の紐を緩めば楽であることを、彼は知らなかったのでしょうか。知っていたにもかかわらず、あえて革の帯で腰を固く締めたのは、自分の思いと自己意志を抑えなければ、与えられた使命を果たすことができないことを知っていたからです。彼は神様の心を述べ伝えながら、信仰深く努めました。「悔い改めよ。天の国は近づいた。」(マタイ3:2) 「悔い改めに相応しい実を結べ。」(ルカ3:8)

四つ、よい食べ物は美味しいことを、彼は知らなかったのでしょうか。知っていたにもかかわらず、あえてばったと野蜜を食べていたのは、栄養高い物を食べたその口で、でたらめなことを言う人たちがいたからです。彼は、権力者たちを恐れることなく、命を惜しまずに宣べ伝えました。「ヘロデよ、兄弟の妻をめとることは許されない。」(マルコ6:18)

五つ、「蝮の子らよ、差し迫った神の怒りを免れると、誰が教えたのか」(ルカ3:7)と世の闇に向けて警告したため、洗礼者ヨハネは悪意の刃で首を斬られてしまいました。ところが、その洗礼者ヨハネの生と死を始めとして、キリストの時代は開かれました。クリスマスを迎えるために、私たちも利己という思い、自己という首を差し出さなければなりません。

勿論、私たちに洗礼者ヨハネと同じような生き方が求められるのではありません。かなりストイックに自分に厳しく律した洗礼者ヨハネの生き方は、容易く真似できるものでも、誰もが真似する必要があるものでもないのです。しかし、アドベントを過ごしている私たちには、彼からアドベンチャーな生き方を学び、自分なりの準備をすることは求められます。では、いかがでしょうか。自分にはどのようなアドベンチャーな生き方ができるのでしょうか。降臨節の半ばに来ている今、洗礼者ヨハネのことを黙想しながら自分にできることを求め、クリスマスを通して来られるキリストを迎える準備をしましょう。



<福音書> ルカによる福音書 3章7~18節

7そこでヨハネは、洗礼を授けてもらおうとして出て来た群衆に言った。「蝮の子らよ、差し迫った神の怒りを免れると、だれが教えたのか。 8悔い改めにふさわしい実を結べ。『我々の父はアブラハムだ』などという考えを起こすな。言っておくが、神はこんな石ころからでも、アブラハムの子たちを造り出すことがおできになる。 9斧は既に木の根元に置かれている。良い実を結ばない木はみな、切り倒されて火に投げ込まれる。」 10そこで群衆は、「では、わたしたちはどうすればよいのですか」と尋ねた。 11ヨハネは、「下着を二枚持っている者は、一枚も持たない者に分けてやれ。食べ物を持っている者も同じようにせよ」と答えた。 12徴税人も洗礼を受けるために来て、「先生、わたしたちはどうすればよいのですか」と言った。 13ヨハネは、「規定以上のものは取り立てるな」と言った。 14兵士も、「このわたしたちはどうすればよいのですか」と尋ねた。ヨハネは、「だれからも金をゆすり取ったり、だまし取ったりするな。自分の給料で満足せよ」と言った。

15民衆はメシアを待ち望んでいて、ヨハネについて、もしかしたら彼がメシアではないかと、皆心の中で考えていた。 16そこで、ヨハネは皆に向かって言った。「わたしはあなたたちに水で洗礼を授けるが、わたしよりも優れた方が来られる。わたしは、その方の履物のひもを解く値打ちもない。その方は、聖霊と火であなたたちに洗礼をお授けになる。 17そして、手に箕を持って、脱穀場を隅々まできれいにし、麦を集めて倉に入れ、殻を消えることのない火で焼き払われる。」 18ヨハネは、ほかにもさまざまな勧めをして、民衆に福音を告げ知らせた。



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