聖路加国際大学 聖ルカ礼拝堂

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2024年6月23日 聖霊降臨後第5主日(2024/06/25 )

チャプレン ヨナ 成成鍾司祭
「 帆・舵・櫂 」(マルコ4:35‐41)

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イエスは起き上がって、風を叱り、
湖に、「黙れ。静まれ」と言われた。
すると、風はやみ、すっかり凪になった。
(マルコ4:39)

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<マルコ 4:35~41>


その日の夕方になって、イエスは、
「向こう岸に渡ろう」と弟子たちに言われた。

そこで、弟子たちは群衆を後に残し、
イエスを舟に乗せたまま漕ぎ出した。

ほかの舟も一緒であった。

激しい突風が起こり、
舟は波をかぶって、
水浸しになるほどであった。

しかし、イエスは艫の方で枕をして眠っておられた。

弟子たちはイエスを起こして、
「先生、わたしたちがおぼれてもかまわないのですか」と言った。

イエスは起き上がって、風を叱り、
湖に、「黙れ。静まれ」と言われた。

すると、風はやみ、すっかり凪になった。

イエスは言われた。
「なぜ怖がるのか。まだ信じないのか。」

弟子たちは非常に恐れて、
「いったい、この方はどなたなのだろう。
 風や湖さえも従うではないか」と互いに言った。




<福音メッセージ>

「 帆・舵・櫂 」

日本には年に何回もの台風がやってきます。統計によると年間の平均発生数は25.9個です。台風は人間の営みにおいては悪い影響が多いですが、地球生態系の全般からみると無くてはならない自然現象です。科学者たちによりますと海は命を育むために絶えず浄化されなくてはなりませんが、台風がその役割を果たすそうです。台風によって表面の温かい水と深いところの冷たい水が混ざり合って、海水がサンゴなどの生き物の生息に適した温度に調節されることもその一つです。また地方によっては台風によって海の栄養素が陸地の山奥にまで運ばれて森林の砂漠化を防ぐという研究結果もあります。

“人生は苦海だ”というお釈迦様の言葉を借りなくても、人生という航海にもまるで台風のように強風と高波が何度も押し寄せてきます。世の全ての存在は突然吹いてくる強風と荒々しい高波のような試練に悩まされたり溺れたりすることがあるわけです。ところが、台風を通して樹木の根が強くなり海が底から綺麗になるように、避けられない強風と高波が起こることによって、一人ひとりの魂はより清くなり、私たちが乗っている船だとも言える家庭や教会などの共同体、病院や学校などの組織の根もより丈夫になるのです。

たしかに突然押し寄せてくる強風と高波は恐怖の対象です。いくら私たちを清め、成長と成熟へと導いてくれる役割を担ってくれるものだとしても、または神様によって与えられているビジョンを成し遂げる過程としてあるものだとしても、航海中に遭遇する強風と高波は恐れそのものです。真理についての人間の最初の反応が恐れと逃避であるように、たとえ霊的な風や波であるとしても最初は恐れとして感じるのが私たち人間です。しかし、もし恐れがあったとしても、それらのことを避け続けることはできません。避けようとすればするほど恐れは強くなり、その恐怖感は自分が乗っている共同体という船をさらに揺るがしてしまいます。

それゆえ、そのようなときには目線の方向を強風と高波という外部ではなく、船の内部へと変える必要があります。つまり、既に船に備え付けられている帆・舵・櫂などを用いて強風と高波を逆に利用するということです。一人の個人であろうとも共同体などの組織であろうとも、その船の中心となる帆、進むべき方向性を定める舵、また船を前に進ませるため櫂が与えられています。理念と価値としての帆、ビジョンとしての舵、計画と実践としての櫂があるわけです。共同体が力を合わせて帆を立て、舵を取り、また櫂を漕ぐことを通して、逆に風と波を利用できるようになるのです。そしてもう一つ、既に船に一緒に乗っているキリストの助けを頂くということ(38-39節)が何より重要なこととして求められます。全ての船には「向こう岸に渡ろう」(25節)という言葉で象徴されるビジョンが与えられています。では私たちの聖路加コミュニティという船に与えられているそのビジョンは、今どのようになっているのでしょうか。


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