聖路加国際大学 聖ルカ礼拝堂

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2024年 6月16日 聖霊降臨後第5主日(2024/06/18)

チャプレン ヨナ 成成鍾司祭
「 ポテンシャル 」(マルコ4:26‐34)

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「神の国を何にたとえようか。
どのようなたとえで示そうか。
それは、からし種のようなものである。
土に蒔くときには、地上のどんな種よりも小さいが、
蒔くと、成長してどんな野菜よりも大きくなり、
葉の陰に空の鳥が巣を作れるほど大きな枝を張る。」
(マルコ4:30)

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<マルコ4:26-34>

また、イエスは言われた。

「神の国は次のようなものである。
人が土に種を蒔いて、夜昼、寝起きしているうちに、
種は芽を出して成長するが、
どうしてそうなるのか、その人は知らない。

土はひとりでに実を結ばせるのであり、
まず茎、次に穂、そしてその穂には豊かな実ができる。

実が熟すと、早速、鎌を入れる。
収穫の時が来たからである。」

更に、イエスは言われた。

「神の国を何にたとえようか。
どのようなたとえで示そうか。
それは、からし種のようなものである。
土に蒔くときには、地上のどんな種よりも小さいが、
蒔くと、成長してどんな野菜よりも大きくなり、
葉の陰に空の鳥が巣を作れるほど大きな枝を張る。」

イエスは、人々の聞く力に応じて、
このように多くのたとえで御言葉を語られた。

たとえを用いずに語ることはなかったが、
御自分の弟子たちにはひそかにすべてを説明された。


<福音メッセージ>


 ビジネスの世界でよく用いられているポテンシャル(potential)という言葉があります。人が持っている潜在能力や可能性を表す言葉です。まだ発揮されていなくても将来的に開花する才能が秘められている場合や有望だと考えられる場合に使うことが多いです。元々は物理用語であるポテンシャルの語源はラテン語のポテント(potent)ですが、それは目に見えない力や可能性のことを指す言葉です。ポテントからは力を意味するpowerや可能性を意味するpossibleなどの単語も派生します。そのポテンシャルのことをキリスト教では、私たちに蒔かれて段々と「成長する種」(マルコ4:26‐29)に例えます。命あるすべての存在は神様によって蒔かれたポテンシャルの種を魂に包んでこの世に送られる、という理解があります。

 生まれたときから苦しい状況に置かれたにも拘らず、自分のポテンシャルを発見しそれを見事に具現化したある女性のことを紹介致します。彼女は結婚していないティーンエイジャーのカップルの元に生まれ、祖母・父親・母親の元を転々として育ちました。9歳から親戚にレイプされるなどの性的虐待を受け、14歳に妊娠しましたが産まれた子どもは1週間後に亡くなってしまいます。不幸な青少年期少女時代を送りましたが、19歳の時に地方の小さなテレビ局で仕事を始め、彼女の共感力に溢れるアドリブが評価されてトーク番組を担当するようになりました。そのトークショーは彼女の名前を掲げた番組として成長し、後にアメリカのトーク番組史上最高の番組だと評価されるようになりました。今アメリカで最も裕福なセレブリティで慈善家でもある彼女は、大統領候補として名前が挙がるほどの人物として評価されています。彼女の名前はオプラ・ウィンフリー(Oprah G. Winfrey)です。

 彼女のような事例は極めて稀で特別なことだと思われるかもしれません。しかしどのような状況に置かれているとしてもポテンシャルを持たない人は一人もいません。人間は誰もがポテンシャルとして潜在能力や可能性を持って生まれます。正確には自分だけのポテンシャルを神様から授かってこの世に送られているのです。日本の手話パフォーマンスグループHANDSIGHの「自分だけの花」という歌がありますが、どのような花になるかはまだ分からなくても、私たちひとり一人には自分だけが咲かせる花の種が蒔かれているわけです。私たちが存在する意味と目的は、各自が持っているポテンシャルとして花の種を発見し、それを少しずつ成長へと持っていくことだとも言えます。ポテンシャルという花を咲かせることは、いかなる身体的な状況・性的な傾向や国籍の違い・年齢的な状態なども超えて、一人ひとりの個人において何より尊い営みです。そういった意味では、自分が咲かせる花の形や色などを他者と比較する必要もなく、開花の早いか晩いかが問われる事柄でもありません。ではいかがでしょうか。神様によって魂に蒔かれている自分だけのポテンシャル、つまり潜在能力と可能性の種は今、どのようになっているのでしょうか。

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