司祭 プリスカ 中尾貢三子
夜明け前が一番暗い(It's always darkest before the dawn.)
教会の暦では降臨節第一主日から新しい年となります。クリスマス前の4回の主日(日曜日)には、円形の花飾りやまっすぐな花台にロウソクを4本あしらって、日曜日ごとにロウソクを灯す習慣が広く行われています。冬至に近づくにつれて夜の時間の長くなり、闇が深くなることを、21世紀を生きる私たちが実感することは少ないかもしれません。1本のロウソクがどのくらい明るいのかということも。
暗闇の中で、希望が訪れるのを長い期間ずっと待ち望んでいたとき、予期しないできごと、ことに大災害や異常気象が起こったら、待ち続けていた人々の心はどうなってしまうでしょうか。心が折れてしまうか、自暴自棄になってしまうかもしれません。しかし、そのような中でも「光」の到来を待ち望み続けた人々がいました。
四大文明のうちの二つ、ナイル川流域で繁栄したエジプト文明と、チグリス川・ユーフラテス川流域で繁栄したメソポタミア文明(現在のイラク・クウェート付近)に挟まれ、エジプトの歴代王朝、またチグリス・ユーフラテス流域では、シュメール、アッカド、バビロニア、アッシリアなどの王国が武力により支配領域を広げようとするたびに、軍隊の通り道になったのが、ユダヤ・イスラエル地域でした。外からの侵略・暴力にさらされ、住んでいた地域を追われて難民化することも、支配者に自分たちの名前も言葉も信仰も奪われ、禁止された経験が繰り返されたことでしょう。
また、ティベリアス湖(ガリラヤ湖)から死海(Dead Sea)へと流れるヨルダン川は、アフリカの大地溝帯(Great Rift Valley)からつながる、大陸プレートの生まれるところにあたります(余談ながら日本の東南にある日本海溝やマリアナ海溝は大陸プレートが沈み込む場所です)。旧約・新約聖書いずれにも地震や地割れなどの描写があるのは、地下から地面が押しあげられ、東西に広がることによって発生する地震が多発する地域でもあるのです。
政治的に理不尽な目に合い、地震などの自然災害に見舞われながら、自分たちの信じる神さまは、この苦しみから救い出す存在を与えてくださる、という強い希望を抱き、自然と政治の理不尽に耐え続けた人々のところに、神の子の誕生が告げられました。それがイエスの誕生でした。
1月1日16時10分に発生した能登半島地震から始まった2024年。長い猛暑、日照りからの豪雨、さらに奥能登や各地を襲った水害、今年は本当に自然災害が多く発生しました。また日本という国がどうなっていくのか、決して明るい見通しが持てない社会的状況が続いています。ともすれば「お先真っ暗」と言いたくなる状況です。
タイトルに引用した言葉は、シェークスピアのマクベスにあるセリフだそうですが、筆者にとっては『大草原の小さな家』シリーズで、ローラの母が大吹雪に閉じ込められ、外出していた父が戻ってこられないかもしれないときに語ったセリフとして覚えています。この状況でもこの言葉で子どもたち(ローラ、メアリーの二人の娘)と自分を鼓舞できる「母さん」の強さを実感しました。同時に暗闇の中、八方ふさがりの状況でも、あえて、ロウソクをともし、希望を待ち続ける人々の姿とも重なります。
幼子イエスさまの誕生という希望の光を待ち望む季節が始まりました。
|