司祭 エレナ 古本みさ
「みんながみんなの後ろになる世界」【マルコ9:30−37】
弟子たちは、旅の途中で、イエスからご自分の受難予告を聞かされた後、誰がいちばん偉いかということについて議論していました。この箇所では、弟子たちがいかにイエスを理解していなかったかが示されていると言われますが、ひょっとしたら、イエスにこれからどうなるか尋ねることが怖くて出来なかった弟子たちは、そのことについて、自分たちの間で話し合ったのかもしれません。「人の子は、人びとの手に引き渡され、殺される。殺されて三日の後に復活する。」これを聞いて、即座に日ごろイエスから聞かされていた神の国を思い浮かべ、そこでイエスの右腕となるのは誰なのだろうと。
イエスはそんな弟子たちの心の中をすっかり見抜いておられました。「君たちは、分かっていない。いちばん先になりたい者は、すべての人の後になり、すべての人に仕える者になりなさい。」神の国では、この世における価値観が完全に逆転します。すべての人がすべての人の後ろに回り、仕える者となるのです。想像してみると、それは大きな、そして最高に美しい円になります。その円を作っているのは、小さな粒、大きな粒、いろんな形、いろんな色の粒です。それらが丸くなって、完全な調和を生み出す。これが神の国です。そして、これはわたしたちがこの世の生涯を終えた後にある、手を伸ばしても届かない遠い世界ではなく、今まさに、わたしたちの間に神さまが造ろうとしておられる世界なのです。その世界の造り方を御子イエスさまがわたしたちに示してくださいました。
今、私たちは、この先私たちの住む日本という国が将来的にどのような道をたどるのか、心を騒がせています。より良い社会を作り上げるリーダーが選ばれるよう、私たちは祈らなければなりません。でも、どのような状況にあろうとも、キリストに従う私たちが目指すのは、ただ一国の平和ではなく、いちばん先になりたい者がいちばん後にまわり、すべての人がすべての人に仕えるという、この世の価値観がひっくり返った神の国であることを、しっかりと心に留めておきたいと思います。
|