司祭 マタイ 出口 創
サタン、引き下がれ。あなたはわたしの邪魔をする者。神のことを思わず、人間のことを思っている。
何年も前の事ですが、当時禁煙なさっていたとある先輩聖職に、タバコを執拗に勧めていたことがあります。「一緒にタバコ吸いましょうよ。」
多分、相当執拗で、お嫌だったのでしょう。「サタンよ、退け!」と、叱られたことがあります。
マタイによる福音書の「サタン、引き下がれ」という箇所を当たる時、いつもこの出来事を、何故か懐かしく楽しく思い出します。
ちなみに今では、私も禁煙しています。
今日の箇所で「サタン」とイエスさまに呼ばれているのは、弟子のペトロです。イエスさまが、なぜペトロをサタン呼ばわりしたのかは、聖書本文をお読みいただくとして、私たちが憶えるべきことは、イエス様の弟子の立ち位置です。救い主、キリスト・イエスは、私たちに先立って、十字架への道を歩んでくださっています。ペトロはそれを妨げた訳ですが、イエス様の前に立ちはだかってその歩みを邪魔ゆえに、サタンと叱られたのです。ペトロであっても、私たちであっても同じですが、キリストの弟子の立ち位置は、キリストの後ろなのです。十字架の死とご復活への道を歩んでくださっているイエスさまですから、弟子たちはその後ろから従って歩むべきなのです。
「主に従う」。従うのですから、私たちの立ち位置は、その後ろです。イエスさまの前にしゃしゃり出て、イエスさまを意のままに動かすことはできません。むしろ、その後ろを、ただただ従って歩む。イエスさまが救い主キリストであるから、その歩む後ろこそが、「救いの道」なのです。そしてそれは十字架への道でもあり、天に至る道でもあるのです。その道を共に歩もうと、招いてくださっています。
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