2023年6月4日 三位一体主日・聖霊降臨後第1主日(A年)

 

司祭 アンナ 三木メイ

「思いを一つにしなさい。平和を保ちなさい。そうすれば愛と平和の神があなたがたと共にいてくださいます。」(コリント二13:11)

 今日は、三位一体主日です。天地を創造された父なる神と、神の子である主イエス・キリストと、そして私たちと共にいてくださる聖霊なる神は、三つの位格(ペルソナ)をもつ一つの神である、という信仰は、4世紀から5世紀にかけてかなり長い神学論争の後に、キリスト教の正統な教理として定められ、それは現在も変わりありません。
 私たちが生きているこの世界——朝には太陽が昇り、夕暮れには日が沈み、雨が降り、川が流れ、海や湖は静かに魚を育み、地には緑豊かに木や草が生え、穀物が実り、動物や人間はそれらの豊かな自然によって生み出されたものによって養われているーそれらはすばらしい調和のなかにあり、そのすべての恵みを神様に感謝し、神が共にいてくださると信じる。それはきわめて自然な信仰ですし、私たちの心とからだの健康と平安の源でもあります。
 しかし、すばらしい調和のうちに存在していた自然環境を破壊していったのが、人間です。最初は、森を切り開いて畑や田んぼを作って農作物を作っていきました。さらに時代が進んで文明が発達して、科学技術が開発されていくうちに、工場や自動車からの二酸化炭素排出量が多くなり、今では深刻な温暖化を招く事態となっています。今日は「地球環境のために祈る日」でもあります。私たち人間が、神様から与えられた本来の自然環境を破壊しつつあるということを自覚して反省し、本来の地球環境をとりもどす使命を果たすためにどうしたらいいか、具体的な対策を考えて実行していく必要にせまられています。今、私たちは、神さまが与えて下さった本来的な調和のとれた自然環境の回復を、真剣に祈り求めていくことが求められています。
 創世記おいて、神は混沌のなかから「秩序と調和」を造り出す神として描かれています。混沌のなか、「光りあれ」という言葉から、すべてが神の創造の秩序のもとに、調和をもって存在するように造られていきます。そして、神は人間を創造しました。「神はご自分にかたどって人を創造された。神にかたどって創造された。男と女に創造された。」この「神のかたち」というのは、人間が神の呼びかけに耳を傾け、神の声に応答していくことができる性質を与えられている、ということです。だから、私たちは神に祈りをささげ、神の声を聞き、この世で果たすべき使命を悟ることができるのです。
 旧約聖書に示された父なる神から、神の御心を真実に悟ったのがイエスです。イエスは、当時の人々や社会のありようをつぶさに見て、神から与えられた本来の「秩序と調和」が失われていることに気がついたのでしょう。病気の人々や障害をおった人、貧しい人などが不当に差別されていていたからです。神の秩序と調和を回復するために、命をかけたのが主イエス・キリストです。その使命は、イエスを救い主=キリストと信じる者たちに「わたしは・・・いつもあなたがたと共にいる」という言葉で引き継がれています。
 私たちは、父なる神と、子なる神キリストと、聖霊なる神によって、真実の「愛と平和」を知らされ、その素晴らしさ、その大切さを知らされました。ですから、神の「秩序と調和」、「愛と平和」をこの世において実現し、回復していく使命を果たせるよう、「神が私たちと共にいてくださるように」と祈り求めていきましょう。