司祭 サムエル 奥 晋一郎
「からし種のように小さくとも」【マルコ3:26−35】
今週の福音書の箇所では、神の国を「からし種」にたとえています。からし種、これはものすごく小さな種です。小さな点ぐらいの大きさです。とても大きく伸びていくものとは思えないほどに小さな種です。ところが、成長すると3メートルから4メートルまでの高さに成長していきます。ですから、32節に書かれているようにどんな野菜よりも大きくなり、空の鳥が巣を作ることができるほどの大きな枝を張ることができます。
では、その本当の神の国の実現、いわゆる神様の支配がからし種のように小さいこと、それは具体的にどのようなことを言っているのでしょうか。それは聖書に記された、イエスさまのこの世でのご生涯からわかります。イエスさまはユダヤ北部のガリラヤ地方で神様の救いを伝えるために弟子たちとともに旅を続けました。そして、最後の訪問地であるエルサレムで、何の罪も見出されなかったにもかかわらず、イエスさまは神さまのみ心に従って、人々に罪の赦しを示されるために十字架に架かられました。その後、イエスさま3日後に復活され、復活されてから40日後に天に昇られました。さらにその10日後には、弟子たちに聖霊、神様の力、神様からの息吹が降りました。これら出来事は現在、世界中でとても有名で、クリスチャンの私たちにとっては信仰の根幹にかかわるものすごく大切なものです。からし種が成長して大きくなったように、ものすごく大きなことです。
しかし、それの出来事も、最初は人間の目から見れば、世界の歴史でみれば、地球規模で見れば、元々、ユダヤという小さな国の、小さな、小さな出来事でした。からし種ほどの小さな出来事でした。ところが、これらの出来事が、弟子たちによって、からし種が伸びていくようにユダヤ近辺、地中海沿岸の都市へとキリスト教が伝えられていきました。その後、ヨーロッパに伝えられ、さらに年数を重ね、現在では世界中に伝えられるようになりました。その結果、現在、世界各地で、また日本各地で教会が設立されていきました。
現在の日本で、クリスチャンの数は少人数です。わたしたち一人ひとりはカラシ種のように小さい存在です。しかし、神様はそんなわたしたち、一人ひとりの賜物を用いて、神の国、神様の支配がこの世に実現する状態、神様からの救いの実現のために、わたしたちの目には直接見えませんが活動してくださっています。ですから、現在もからし種が成長するように、神の国も成長している状態です。だからこそ、わたしたちはその神の国の成就、神様の支配の実現、神様の救いの実現である、再臨、イエスさまがこの世に再び来られる日まで、希望を持って、これからも教会に集い、礼拝をこれからも行なっていくことが大切だと思います。現在、コロナ渦で厳しい状況が続き、主日礼拝を休止している教会もありますが、このことを覚えながら日々、お祈りをすることができればと思います。
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