司祭 アンデレ 松山健作
「あなたは、どこに属していますか?」
「あなたは、どこに属していますか?」という問いに皆さんなら、どのように応えられるでしょう。会社員なら職場?学生なら学校?信徒なら教会?他宗教の方であれば、お寺や所属教会?を応えられるでしょうか。
私自身、このような問いが向けられれば、職場の教会・こども園の名称を挙げるかと思います。世の中にはさまざまな所属先があり、そこでの経験やポジションによって帰属意識が異なることでしょう。
有名なところであれば、あるいは組織に誇りをもっていれば帰属意識は高く、私たちはその所属先について知らず知らずのうちに宣伝しているかもしれません。またその所属先との関係が切れることは考えもしないでしょう。一方で帰属意識が希薄であれば、その組織との関係が切れることは何ら自らにおいてマイナスであるとは考えないかもしれませんし、批判も厭わないでしょう。
ヨハネによる福音書17章13節以下「しかし、今、わたしはみもとに参ります。世にいる間に、これらのことを語るのは、わたしの喜びが彼らの内に満ちあふれるようになるためです。わたしは彼らに御言葉を伝えましたが、世は彼らを憎みました。わたしが世に属していないように、彼らも世に属していないからです。」と、弟子たちに向けたイエスさまの告別説教が一部が記されています。
ここで明らかなのは、イエスさまが「世」という空間・場所・時代に属していないということです。そして「みもと」という属している父である神さまのもとに戻るということが弟子たちに語られます。続けて「彼ら」とされる弟子たちに語られたことは、彼らもまた「世」には属していないということです。
その「彼ら」がイエスさまの説教を耳にしたとき、どれほど「世」への帰属意識があったか、「父である神」もしくは「イエス・キリスト」にどれほどの帰属意識があったかはわかりません。しかしいずれにせよ、彼らは「世」から憎まれるほどに、「世」とは別路線を歩む集団・考え方をもっていたのだろうと思われます。
イエスさまは、父のもとに戻る際に弟子たちのために「わたしがお願いするのは、彼らを世から取り去ることではなく、悪い者から守ってくださることです。わたしが世に属していないように、彼らも世に属していないのです。真理によって、彼らを聖なる者としてください。あなたの御言葉は真理です。」(17:15−17)と祈られます。
このイエスさまの祈りは、「彼ら」という他者である弟子たちをはじめとする信仰者に向けられており、この世においてもキリストに属しているためにイエスさまの業を受け継ぎ、世に神の愛を示すために、さまざまな困難から守られ生きるための祈りです。「聖なる者」という言葉は、神の与える使命を果たすために「神のものにする」という意味合いを含んでおり、「彼ら」のキリストへの帰属意識が高められ、真理である御子イエスさまをこの世に告げる使命が明確にされる瞬間です。
イエスさまの祈りの中には、弟子たちに対する願いとともに、この世を生きる私たちが、どこに属し、どのような使命を果たすかという問いが含まれていると同時に、神の愛によってそこに属する者が守られて、再び生きる者とされる力が秘められています。
イエスさまは、信じる者に対して、今も祈ってくださる方であることをおぼえ、私たちの生き方がイエス・キリストに属す生き方へと変えられますように。
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