執事 アンデレ 松山健作
「家の戸の鍵をかけていた」【ヨハネによる福音書20:19−23】
新型コロナウイルス感染の恐れと不安は、毎日募るばかりです。「本当であれば、家に閉じこもりたい」と思っていても、さまざまな働きがあって、家から出なければならないケースがあるでしょう。また一方では、もう家に閉じこもって数ヶ月、感染防止のために家からほとんど出ずに過ごされている方もおられるでしょう。日に日に変わる状況の中で、何が正しいのかを探すことの難しさ、そして各々の意見や認識に亀裂が入り、目に見える形で偏見や差別、暴力が生まれる現実を目の当たりにする状況になってきました。
さて、このような感染症の恐れと不安に怯える中で、私たちは心の健康を保てているでしょうか。毎日のしかかる見えない緊張感に押しつぶされそうになる。人との交わりが少なくなる中で、知らず識らずの内に疲弊しているかもしれません。
イエスさまの弟子たちは、イエス・キリストの十字架刑に直面しました。彼らは、弟子であるにもかかわらず、イエスさまを知らないと偽り、逃げ、隠れもしました。そこには、イエスさまを裏切ってしまったという罪責の念とイエスさまをメシアであると信頼していたことへの失望とが交差するような状況であったのではないかと思います。彼らはイエスさまの死に直面し、家の戸に鍵をかけ、イエスさまに信頼を置くことができず、心の扉も閉ざしてしまいました。その家の中には、恐れと不安が充満し、また弟子同士においては人間的な関係性が崩れかけていたのではないかと想像します。
そのような険悪な雰囲気を断ち切られたのが、復活のイエス・キリストです。イエスさまは、鍵のかけられた家の真ん中に来て、「あなたがたに平和があるように」とおっしゃいます。そして弟子たちの恐れと不安、罪責の念という暗闇にいた弟子たちに息を吹きかけ、派遣されます。
さまざまな思いの中に埋没し、苦しみの中にいた弟子たちの思いは、どのように変化したでしょうか。イエスさまは、弟子たちの行動を真っ先に赦されます。弟子たちは、「赦し」という愛を復活のイエスさまから受け取りました。それと同時に弟子たちには、赦され、聖霊の働きによって生かされ、不安を希望に変える使命が与えられます。
イエスさまは、今、恐れと不安の中にいる私たちの心の真ん中に来られます。私たちのさまざまな心の思い、苦しみを聞いてくださいます。そして私たち一人ひとりに息を吹きかけられ、「あなたがたに平和があるように」と復活の希望の中へと招いてくださっているのです。イエスさまは死という苦しみを通して、復活されました。その中に潜む神さまの聖霊の働きに私たち自身が動かされ、希望を生きることができますようにお祈りしています。
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