司祭 アントニオ 出口 崇
『起きて、子供とその母親を連れて、エジプトに逃げ、そこにとどまっていなさい』【マタ2:13】
救い主の誕生は、ヘロデ王にとっては自分の地位を脅かす恐怖でしかありませんでした。ヘロデ王の迫害から逃れるため、イエス様は生後すぐに国から逃れ、エジプトの地で「難民」として生活していました。
イエス様の難民生活、隣国と言えども何の生活基盤、何の保証もないエジプトでヨセフさんは仕事をすること、マリアさんがイエス様を育てることはとてもしんどいものであったことでしょう。「ヘロデから逃げろ」という天使の言葉に従ったことへの後悔、「ひょっとしたら大丈夫だったのでは・夢のお告げだったので、聞き間違えたのでは」という疑心暗鬼に何度も陥ったのかもしれません。いつまで続くのかもわからない、希望の見えなくなる時もあったと思います。
『起きて、子供とその母親を連れて、エジプトに逃げ、そこにとどまっていなさい』
天使の言う「起きろ」という言葉は、ただ、睡眠から目を覚ますことを意味しているだけでなく、神さまから心を離れた人に対して、神さまに心をむけさせる言葉でもありました。
夢で「起きろ」という天使のお告げを聞いたヨセフは、「何で」という疑問、後悔、恐怖に心を満たされながらも、共にいてくださる神様に全てを委ねようと行動したのではないでしょうか?
そして、そんなヨセフとマリアに、幼子であるイエス様は全てを委ねていました。
新しい年、よい年であるように、私たち一人ひとりに関わる全ての人に、あまりしんどいことがないように、と、祈りつつも、復活のイエス様の「起きろ」という言葉に耳を傾けていたいです。
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