司祭 サムエル 小林宏治
大切な教え
あるとき、一人の律法の専門家がイエスさまに質問をしました。
「律法の中で、どの掟が最も重要でしょうか」と。
イエス様の時代、ユダヤ教の教師たちによって、律法には600以上の掟があるとされていました。また、この掟の中でどの掟が最も重要かとしばしば論じられていました。律法とは、今でいうところの法律やルールです。律法の専門家は、その掟を、日常生活の中でいかに守っていくかを研究していました。そして、人々にその掟を守るように教えていました。
聖書の中で、よく知られたルールは十戒ではないでしょうか。モーセが神様から2枚の石板が与えられました。その石板に記されていたのが十戒です。その中には、「あなたはわたしのほかに、何ものをも神としてはならない。」「あなたは殺してはならない。」「あなたの父と母を敬え。」などがあります。律法の専門家はこのような掟の中で、一番大切な掟は何かをイエス様に問いました。
イエス様は言われました。
「『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』
これが最も重要な第一の掟である。第二も、これと同じように重要である。
『隣人を自分のように愛しなさい。』律法全体と預言者は、この二つの掟に基づいている。」
わたしたちはいろいろなルールを守りながら生活をしています。国や地域によってルールは異なることもありますが、どの人にとっても、大切なことがあります。それは、人はだれでも他の人から愛されたい、大切にされたいということです。また、神様から愛されたいということです。
人は誰かから愛されていなければ生きてはいけないのです。イエス様は二つの掟が、同じように大切だと言われています。他の掟の基礎となる大切な掟です。この愛ゆえに、掟が掟として機能しているのだと思います。
すべての人が同じようによい生活をしているわけではありません。貧しい人、苦しんでいる人、虐げられている人、自分の力だけで生きていけない人への愛をなおざりにして、自分だけはルールを守っているとは言えません。隣人愛を持たない神様への愛などあり得ないのです。
わたしたちはルールを守り、生きていこうとするならば、神様への愛と共に、神様が愛しておられるすべての人への愛を大切にしていかなければならないのです。
そのような愛ある心と、また、行いを忘れないようにしたいと思います。