2017年7月2日      聖霊降臨後第4主日(A年)

 

司祭 ヨシュア 大藪義之

自分の十字架を担ってわたしに従わない者【マタイによる福音書10:37〜38】

 世の中にはいろんな便利屋さんや代行屋さんがいる。スズメバチの巣の駆除もあれば、遺品整理、ゴミ屋敷のお掃除などもある。代行屋では、まず車の運転。お酒好きにはありがたい。その他には慶弔事の家族のなりすまし代行、会社のクレーム処理を代行してくれる「謝り専門」の方もいるという。

 ある日曜日、教会の礼拝に行くと一人の男が段ボールの切れ端に「あなたの十字架背負います。〜s、〜円から」と書いて玄関の階段に座っていた。ある信徒は「あなたの十字架を背負う。十字架って? ん???。そうだ、思いと、言葉と、行いで罪を犯しちゃうんだったよね。そんな自分の罪をイエス様が十字架で背負ってくれたんだっけ。でもなぁ、いつもあの懺悔の祈り、あまり好きじゃないんだよね。説教も退屈だし、それに楽な方がいいに決まってるからさ。」ということで、その男に話しかけた。
 「いったい、キロでいくらぐらいなんだい?」「そうですねぇ。あなたなら500円/sでどうですか?後から請求書送るので振り込んでくださいね。」「えっ?そんな安くていいのかい。自分はこのところそんなに大きな罪も犯していないし。きっと、まぁ千円もあれば・・・。献金したと思えばいいんだからな。じゃぁ、今日の礼拝はあんたにお任せだ。一つ頼んだよ。」と言ってさっさと街の中に遊びに行ったのです。
 しばらくしてその男からの請求書が送られてきました。信徒は見てびっくり。「一金、20,000円也 但し、重さ40s」とある。下には「十字架背負い代行屋 〜〜〜〜。住所:得去夢、軽針の丘一丁目一番地。090−????−????」と書かれているので、怒った信徒はすぐに電話をかけ「いったい、どういうことだ!」とまくし立てた。男は「いやいや、あなたの十字架の重かったこと。45sもあったのですが、少しだけオマケしておいたんですがね。」「いや!そんなに重いわけはない!」と信徒は反論する。
 男は言った。「今までいろんな人の十字架を負ってきました。人に重荷ばかり背負わせて自分の重荷まで背負わせる人。人生で一度も重荷を背負ったことがない人。お箸より重いものを持ったことがない人、背負いきれなくて泣いてばかりいた人には、思わず一緒に半分だけ背負ったこともあります・・・。でもね、あなたの重荷だけは違ったんですよ。まず、棘だらけ。それに硬くて硬くて。私の肩や背中には食い込むし、祭壇まで歩くのがやっとだったんです。20,000円でも安すぎるのですが・・・。それに、そんなに軽い十字架だったら自分で背負って礼拝に行けば良かったんですよ。」

 さて、これをお読みになった方はこんな代行屋さん、利用します? それとも自分で背負って歩きます?