司祭　サムエル　小林宏治

「不正な管理人のたとえ」【ルカによる福音書第１６章１節から１３節】

　今回のお話は、聖書の小見出しによれば「不正な管理人のたとえ」です。このたとえ話は解釈するのがとても難しいと言われています。ここでは、「富」や「お金」について正しく管理することを教えているのではありません。これらのものを賢く用いること、その賢さを見倣うように勧めています。ただし、不正な用い方を勧めているのではありません。
　聖書によれば、「この世の子らは、自分の仲間に対して、光の子らよりも賢くふるまっている。」と記されています。
　今回は、神と富との関係について考えてみたいと思います。「富」という言葉を、「お金」と言い替えても、「財産」と言い替えてもよいと思います。
　旧約聖書では、富を所有することは、神の恩恵のしるしとされていました。ただし、富が人を支配し、人が富に使われているような状態はよくないとされていました。聖書では、「あなたがたは、神と富とに仕えることはできない。」「どんな召し使いも二人の主人に仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛するか、一方を親しんで他方を軽んじるか、どちらかである。」と教えています。
　富は、豊かな財産を意味します。お金は、わたしたちが生活する上で必要なものです。生活に不可欠で、大切なものです。しかし、そのお金には、時に、人を陥れ、堕落させ、道を踏み誤らせる魔力があります。ある人は、お金が増えるにはどうしたらよいかと頭がいっぱいになり、困っている人がいても助けようともせず、所有欲に取りつかれたりします。富が神となり人の心を神の代わりに支配します。神でないものが、まるで神のように敬われ、本来の神を見失ってしまいます。わたしたちは本来、富ではなく、神に仕えなければなりません。
　わたしたちはイエス様の教えにより、何よりもまず、神と人とに奉仕し、特に貧しい人、困った人の必要を満たさなければなりません。神の愛を実践することが求められています。そのためには、わたしたちに与えられた富は、まず、そのために用いなければなりません。わたしたちが富を正しく利用することによって、どれほど多くの人が、貧困から救われ、人間らしい生活を送ることができるでしょう。イエス様は、わたしたちに、神に仕え、この世界にある富を、賢く、正しく使いなさいと教えられているのです。