司祭 バルトロマイ 三浦恒久
生まれてきてよかった【ヨハネによる福音書20:19〜31】
あなたがたに平和があるように。ヨハネ20:19
ISのテロが相次いで起こっています。そして、多くの難民が困難な生活を余儀なくされています。心が痛みます。平和が実現することを願っています。
イエスが十字架上で息を引き取られて3日目の夕方、復活の主イエスが弟子たちの前に現れました。そして言われました、「あなたがたに平和があるように」と。この言葉は、イエスを裏切り、死に追いやった弟子たちにとって涙が出るほどうれしかったと思います。また、イエスの追随者として逮捕されるのを恐れていた弟子たちにとって、勇気を与えられる言葉だったと思います。
聖書では平和(シャローム)は、家族・共同体・諸民族の間で交わされる友好的挨拶で、物心両面における調和と互恵という社会的政治的原則を意味していました。復活の主イエスが弟子たちに「シャローム」と声をかけたのは、イエスは弟子たちと同じ地平に立たれた、一人のかけがえのない存在として弟子たちを認めてくださった、ということを意味します。これはとても重要なことです。
「へいわって どんなこと?」(浜田桂子/作 童心社)という絵本があります。日本・中国・韓国の絵本作家が手をつなぎ、子どもたちにおくる平和絵本シリーズ全12冊の1冊です。次のような内容の絵本です。
へいわって どんなこと?
きっとね、へいわって こんなこと。
せんそうを しない。
ばくだんなんか おとさない。
いえや まちを はかいしない。
だって、だいすきな ひとに いつも そばにいてほしいから。
おなかが すいたら だれでも ごはんが たべられる。
ともだちと いっしょに べんきょうだって できる。
それから きっとね、へいわって こんなこと。
みんなの まえで だいすきな うたが うたえる。
いやなことは いやだって、ひとりでも いけんが いえる。
わるいことを してしまったときは ごめんなさいって あやまる。
どんな かみさまを しんじても かみさまを しんじなくても だれかに おこられたりしない。
おもいっきり あそべる。
あさまで ぐっすり ねむれる。
いのちは ひとりに ひとつ、たったひとつの おもたい いのち。
だから ぜったいに、ころしたら いけない。ころされたら いけない。ぶきなんか いらない。
さあ、みんなで おまつりの じゅんびだよ。
たのしみにしていた ひが やってきた。パレードの しゅっぱーつ!
へいわって ぼくが うまれて よかったって いうこと。
きみが うまれて よかったって いうこと。
そしてね、きみと ぼくは ともだちに なれるって いうこと。
この絵本の結びの部分で、作者は「へいわって ぼくが うまれて よかったって いうこと。きみが うまれて よかったって いうこと。」と謳いあげています。「シャローム」の本質的な意味はここにあるのではないかと思います。イエスが裏切られてもなお、裏切った弟子たちに「あなたがたに平和があるように」と言われた言葉の背後には、互いに愛し合うことの大切さを願うイエスの思いが込められているのではないでしょうか。
主に感謝