2015年11月1日      諸聖徒日(B年)

 

司祭 マーク シュタール

 今日、11月1日は諸聖徒日です。キリスト教のカレンダーに古くからある記念日です。今年はたまたま日曜日ですが、必ずしも日曜日に重ならないので、多くの教会では11月第一日曜日に祝います。日本で、今も諸聖徒日が記念されていることは素晴らしいことです。西洋では、あまり重きが置かれなくなり、諸聖徒日を祝う習慣が薄れてきました。一方、関連のある祝い事に取って代わられてしまっています。また後で、それについては述べます。
 私達は日頃、先のことばかりに思いが行きがちです。学校や仕事のスケジュール、休みの予定、資金繰り、将来の目標...。「将来を見据える」という言葉自体、「過去を振り返る」、もっと言えば「過去に囚われる」という言葉より、ずっといい響きがあります。
 「過去を振り返る」ことを恐れるあまり、私達は偉大な先人達への思いも忘れがちです。それでも、私達は2000年前に私達のために命を捧げて下さったイエス様を思い、遠い昔に書かれた聖書をこうして読んでいるわけですから、先人達に対する崇拝をしていると言えるでしょう。そして、先人達が残したみ言葉は、私達を養い、より良く生きる道を示してくれています。その先にある、永遠の命、私達の行き着く先...。昔々に約束された、私達の将来。心を開いて、神様の愛を受け入れ、その約束を思う時、私達の心は豊かになります。
 諸聖徒日は十二使徒とその他の殉教者たちを記念する日です。キリストの為、義の為に戦った先人達です。それが世界的にはあまり祝われなくなったのは残念です。さらに残念なのは、先ほど述べた関連する祝い事に取って変わられてしまったことです。
 ここ15年ぐらいの間に日本でも店先、街角、学校にさえも急速な広がりを見せているハロウィーン。その本来の意味を理解している人はどれほどいるでしょうか。8世紀にローマ法王が諸聖徒日を5月13日から11月1日に移動しましたが、それは偶然、ケルト族のサムハインという祝日と同じ日でした。サムハインは収穫感謝祭と、地上にうろうろしている悪霊をなだめる日でした。諸聖徒日の前に悪霊を追い出すというのは話としてとてもしっくりきました。ですから、ハロウィーンにはお化け、魔女など怖い衣装を着て、カボチャの提灯やかがり火を用意したりするのです。諸聖徒日前夜はAll Saints' Eveです。またの名をAll Hallowed's Dayといいます。Hallowedは聖人という意味です。その前夜は、All Hallowed's Eveです。それがHallowed's Eveに省略され、だんだんなまって、Hallowe'enになりました。日本人に説明する時、節分とお盆が一緒になったようなものと言うと納得するようです。悪霊を追い出し、良い霊を招き、ご先祖様を思い出す。
 ハロウィーン本来の意味を知り、諸聖徒日との関連を理解すると、ハロウィーンが単に変装を競ったり、ばか騒ぎをするお祭りではないことがわかります。ハロウィーンの意味を人に説明するのは難しいですが、イエスはもっと難しいことをたった一人で説き始めたのです。そしてやがて、その教えは広がって行き、時を越え、私達にまで届いたのです。この諸聖徒日に当り、イエスと出会い、イエスと生きる時、「主イエスを復活させた神が、イエスと共にわたしたちをも復活させ、あなたがたと一緒に御前に立たせてくださる」(コリントの信徒への手紙二4章14節)と実感できると思います。