2015年6月28日      聖霊降臨後第5主日(B年)

 

司祭 ヨハネ 井田 泉

「ただ信じなさい」

 ある町の会堂長の一人でヤイロという人がイエスのもとにやってきて、「わたしの幼い娘が死にそうです。どうか、おいでになって手を置いてやってください。そうすれば、娘は助かり、生きるでしょう」と懇願しました。
 イエスはヤイロと一緒に出かけて行かれました。途中で別のことが起こって時が過ぎるうち、ヤイロの家から人々がやってきて「お嬢さんは亡くなりました」と知らせました。打撃と悲しみと動揺のヤイロに、イエスは「恐れることはない。ただ信じなさい」と言われました。

 「ただ信じなさい」という言葉を、イエスの人格や思いから切り離して、ただ「〜すべきだ」「〜せよ」という要求的教訓的命令として受け取るなら、非常にむつかしいことです。
 しかしイエスがここで言われるのはそういうことではありません。「お嬢さんのこともあなたのこともわたしが引き受ける。だから恐れるな」ということなのです。
 イエスは道を突き進み、ヤイロの家に入り、少女の家に入って行かれます。イエスは少女の手を取って「タリタ・クム(少女よ、起きなさい)」と言われます。イエスは悲しみと混乱と死が覆う世界の中に突入して行かれます。
 手を取られて起こされた少女は新しく生き始めます。
 ヤイロは「恐れることはない。ただ信じなさい」と言われたイエスにすがって、この危機の時を生きました。
 イエスは私たちの悲しみと混乱と死を引き受けつつ、「恐れることはない。ただ信じなさい」と私たちに呼びかけ、イエスへの信頼を私たちのうちに呼び起こし、私たちをしっかりと保ちつつ未来へと歩ませてくださいます。