2012年7月29日      聖霊降臨後第9主日(B年)

 

司祭 サムエル 奥 晋一郎

「安心して歩んでいく」【マルコ6:45−52】

 弟子たちはイエスさまに強く勧められ、船に乗り、向こう岸のベトサイダまで渡ることになりました。またイエスさまは群衆も解散させ、ご自身は祈るために山に登られました。舟に乗った弟子たちは夕方になり、ガリラヤ湖の真中あたりまで来ていました。その時、逆風になり、弟子たちは何とかして漕いで岸まで渡ろうとします。

 弟子たちの中にはガリラヤ湖で漁師をしていた者もいます。決して素人ではありません。だからこそ何とかして、自分たちの力で無事に渡ろうとします。そうしているうちに夜明け前の時刻になりました。その時にイエスさまが向こう岸から湖を歩いて弟子たちの所へ向ってきます。

 彼らは幽霊が来たと思い大声で叫びます。疲れ果ててしまい、自暴自棄になっていたかもしれません。そんな弟子たちの前にイエスさまは現れ、「安心しなさい、わたしだ。恐れることはない」と言います。そして、イエスさまが船に乗り込むと風は静まりました。弟子たちは非常に驚きました。

 その時、弟子たちの気持ちはどうであったでしょうか。イエスさまが来たと言って喜んだでしょうか。弟子たちはその日、イエスさまの指示で大勢の人に食べ物を配りました。さらに、その後、イエスさまの指示で舟に乗り、向こう岸へ渡ろうとしてもうまくいきません。漁師である弟子がいても向こう岸に渡れない、弟子たちのプライドは壊され、心も体も疲れ果ててしまっていたことでしょう。弟子たちは自力で湖を渡りきることができず、がっかりしたことでしょう。弟子たちは何一つ自分の思い通りにいかず、絶望の思いになっていたかもしれません。

 そのような弟子たちの中にイエスさまは現れました。弟子たちが思い通りいかない時に、しんどい、嫌な思いをしている時に、混乱し、イエスさまのことを見失っている時に、イエスさまは弟子たちに「安心しなさい。わたしだ。恐れることはない」と言われたのでした。

 そのイエスさまは弟子たちだけにではなく、現代を生きる私たちにも礼拝、祈りを通して、聖書のみ言葉を通して現われてくださいます。共にいてくださいます。ことに、わたしたちが思い通りいかない時に、プライドが壊された時に、しんどい、嫌な思いをしている時に、混乱し、イエスさまのことを見失ってしまう時、そのような時にイエスさまは「安心しなさい。わたしだ。恐れることはない」と言って私たちの前に現われてくださいます。共にいてくださいます。元気づけてくださいます。

 このイエスさまの「安心しなさい」という呼びかけを受け止めることによって、私たちは元気づけられ、勇気づけられます。そのためにわたしたちは教会に集い、聖書を読み、共に礼拝を行っています。さらに、イエスさまの「安心しなさい」という呼びかけを受け止めることによって、これからも礼拝を続けていくことができ、イエスさまと共に歩んでいくことができます。