司祭 サムエル 奥 晋一郎
「イエスさまの呼びかけに従う」【マルコ 1・14−20】
イエスさまはガリラヤ湖を歩いておられた時、漁師であるシモンとシモンの兄弟アンデレが湖で網を打っているのをご覧になりました。そこで、イエスさまは彼らに「わたしについて来なさい。人間を取る漁師にしよう」と呼びかけます。人間を取る漁師、イエスさまが2人にイエスさまの助けとなって教えを伝えていく人としての務めを果たすことを願って言われたのでした。この時、二人はどうしたでしょうか。二人は戸惑うことなく、すぐに網を捨てて、イエスさまに従っていきました。
また、少し進んで歩くと、イエスさまはヤコブとその兄弟ヨハネが舟の中で網の手入れをしているのをご覧になり、彼らを呼びました。するとこの2人も、父であるゼベダイを雇い人たちと一緒に舟に残してイエスさまについていきました。こうしてイエスさまはシモン、アンデレ、ヤコブ、ヨハネを弟子にして、イエスさまの助けとなって教えを伝えていく旅を続けていくこととなりました。彼らはどうして戸惑わず、すぐにイエスさまについていくことができたのでしょうか。不安はなかったのでしょうか。
この4人の弟子たちは、これまでの生活、漁師の生活を捨てて、イエスさまに従いました。イエスさまの「悔い改めて福音を信じなさい」という宣言を実行したのでした。彼らの行動は、心を神様に向けて、救いの知らせを信じたのでした。
その一方で、4人の弟子たちは家族を残して、イエスさまに従うことになりました。イエスさまは、彼らの家族に対してひどいことをしたのでしょうか。イエスさまは家族を見捨てるようにという意味で、弟子たちに「私についてきなさい」と呼びかけたのでしょうか。
そうではありませんでした。イエスさまは弟子たちの家族のことを大切にしていました。気にかけていました。マルコによる福音書第1章29節から31節の箇所を見てみましょう。
すぐに、一行は会堂を出て、シモンとアンデレの家に行った。ヤコブとヨハネも一緒であった。
シモンのしゅうとめが熱を出して寝ていたので、人々は早速、彼女のことをイエスに話した。
イエスがそばに行き、手を取って起こされると、熱は去り、彼女は一同をもてなした。
このように、イエスさまは熱を出して寝ているシモンのしゅうとめをいやされました。弟子たちの家族を大切にされたのでした。弟子たちを安心させたのでした。さらに、イエスさまは弟子たちの家族だけではなく町中の病人を癒されたのでした。こうして、イエスさまは弟子たちと共にガリラヤ地方を巡回し、神様の救いを人々に伝えていきました。
このイエスさまが弟子たちに安心してついてきてほしい、従ってきてほしい。安心して、心を神様に向けて、救いの知らせを信じてほしい。安心して、多くの人に神様の救いを知らせてほしいと願ったのでした。それに対して、弟子たちはすぐにイエスさまに従っていくことができました。彼らは、安心して心を神様に向けて、神様の救いを伝えていくことができました。
イエスさまは弟子たちに「わたしについて来なさい。人間を取る漁師にしよう」と呼びかけた言葉、これは私たちにも呼びかけている言葉です。イエスさまはわたしたちにも、すぐに後についてきてほしいと願っています。
その一方で、イエスさまは、わたしたちがすぐに従うことに不安を持っていることを知っておられます。だからこそ、イエスさまはシモンのしゅうとめを癒されたように、わたしたちの家族も大切にしてくださいます。また、ガリラヤ地方の多くの人を癒されたように、この地域に住む人々も大切にしてくださいます。こうして、私たちも弟子たちと同じように安心して、イエスさまの呼びかけに答えて、心を神様に向けて、イエスさまが共にいてくださるので神様の救いを伝えていくことができるのです。