司祭 ヨブ 加納嘉人
どの掟が最も重要でしょうか?
最近まで放送されていたテレビドラマに、「マルモのおきて」があります。わたしの娘はこれに夢中でした。特にこのドラマの最後には主題歌に合わせて毎回ダンスを踊ります。このダンスが人気で、私も5歳の娘といっしょになって、その振り付けを必死で覚えました。必死で取り組んだかいあって、自分で言うのはなんですが、親子ともども、なかなかの腕前になりました。腕前はおかしいか。このダンスは夏祭りや運動会など、さまざまな場所で踊る機会がありました。周囲を見回すとかなりの腕前。う〜む。上には上が…。
さて、ダンスはともかく、「マルモのおきて」というテレビドラマの内容です。亡くなった親友からあずかった子どもたちと、新しい家族関係を築いていこうとするマモル。よい家族になるためには、自分たちで決めた新しい決まり、「おきて」が必要であると考え、「おきて」ノートが作られます。「すききらい言わないのこさない」「遠慮は無用」「はなれていても家族」など、様々な掟が書き込まれます。こうして見ていると、掟というのは、ただ守らなければならない規則なのではなくて、みんなが気持ちよく過ごしていくために必要な「おやくそく」なんだ、と思いました。いっしょにドラマを見ていた娘が、「おきてノート作ろうよー」と言います。新しいノートにいろんな掟を書いていきます。でも、書いていると、どうも違和感があるなあ、と感じます。違和感の原因はすぐにわかりました。子どもに守ってほしいことを押しつけているような決まりが多いのです。「テレビのことでおこらない」「10じまでにはねる」娘に守ってほしいことを、親の都合で書いていたのです。「マルモのおきて」は、家族が経験する一つひとつのできごとの中から生まれてきた、みんなが気持ちよく過ごすために、みんなでつくる家族のお約束。これを守ることによって、新しい家族に、ひとつのきずながうまれてくるのです。
そこで本日の福音書。
律法の専門家が、イエスを試そうとして尋ねた。「先生、律法の中で、どの掟が最も重要でしょうか。イエスは言われた。「『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』これが最も重要な第一の掟である。第二も、これと同じように重要である。『隣人を自分のように愛しなさい』律法全体と預言者は、この二つの掟に基づいている。」
律法の規定を守ることだけが律法の心ではないことをイエスさまは教えてくださいます。
神さまを心からいっしょうけんめい愛することと、自分のように隣人を愛すること。
本当に大切なことは、そんなにたくさんはありません。そして、この最も重要な、二つの掟は、たった一つのことから生まれてきたのだ、と信じることができるのではないでしょうか。それは、何より、神さまがおつくりになったわたしたち、生きとし生けるものを、神さまご自身が、心から、いっしょうけんめい愛してくださっている、という、たった一つのことです。主に感謝。