某落語家が、「関西では『猛犬注意』なんて書かず、『かむ』と一言だけ書いてあることがある」と言っていたことを思い出しつつ。
道路のいろんなところに設置されている子どもの形の看板のことを、「飛び出し君」というのだと、何年も前に相方が教えてくれました。大体が手作りで、中にはかなりユニークなのもあるそうです。一般には「飛び出し坊や」と呼ばれることが多く、ちょうど40年前に滋賀県の旧・八日市市で考案されたようです。「飛び出し注意」と書かれたものもあり、車を運転する人たちに注意を呼びかけています。
交通戦争が激しかったこの頃、飛び出し君のあとには、「飛び出すな、車は急に止まれない」という標語が現れました。この標語には日本語文法上の問題があると言われて、かなり専門的な論文まであるようですが、ともかくこの標語は歩行者に注意を呼びかけています。子どもは飛び出すのが当たり前と考えると運転者に呼びかけることになり、車はすぐには止まれないものだと考えると歩行者に呼びかけることになります。
イエス様は当時いろんな人に呼びかけておられました。弟子たちも、ぞろぞろついてくる人たちも、ファリサイ派や支配層などの敵対する人たちも、交通戦争でなくてもみんなどこかしら危ないのでイエス様は懸命に「危ないからね、飛び出さないでよく気を付けて人生歩いて行ってね」と呼びかけ、そしてみんなのことを神様に祈り、みんなのために生きてくださいました。
先日カーナビの示すままに走っていて、山あいの小さな集落の中を通った時、「とびだすぞ」という文字が、文字通り目に飛び込んできました。何が飛び出して危ないのか。子どもが?車が?鹿が?お猿さんが?いや、みんな危うさを抱えて生きているのでした。
(教区主教)
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