1. 「聖公会」の信仰
「聖公会(せいこうかい)」は、カンタベリー大主教を精神的指導者とするイングランド国教会から生れ、世界165ヵ国以上に広がる42の管区(Province)と5つの特別管区(Extra-Provincial
小規模な自治区)からなるキリスト教会です。信徒は数千万人。各管区はいくつかの教区を持って教義を共有していますが、それぞれが自治権を有しています。ローマ・カトリックとプロテスタントに大別される西方キリスト教会の中で、「聖公会」は、両者の持つ要素を兼ね備え、その中間に位置する教派であるといわれてきました。
聖公会の信仰は18世紀から19世紀にかけて、英国と米国の両聖公会により東アジアへと伝えられました。日本には1859年(安政6年)に米国聖公会から2人の宣教師が渡来し、今日の礎を築きました。日本においてキリスト教禁令が廃止された後は、英国やカナダ聖公会の宣教師団も伝道に加わり、1887年(明治20年)に「日本聖公会(にっぽんせいこうかい)」が創設されました。
2. 日本聖公会について
日本聖公会には、北海道から沖縄に至る11の教区があり、それぞれの教区を司牧する主教がいます。11名の主教の中から1名の首座主教が選ばれ、日本の管区を構成しています。11の教区には主教・司祭・執事の三職位の聖職や伝道師・宣教師・聖職候補生ら約270名の教役者が約300の教会・礼拝堂・伝道所に遣わされ、教会では約3万人の信徒が信仰生活を守っています。
教義として、1930年のランベス会議(全世界聖公会主教会議)において提唱された「ランベス四綱領」を遵奉(じゅんぽう)しています。
第1:旧約および新約の聖書を受け、これを神の啓示にして救いを得る要道を悉(ことごと)く載せたるものと信ずる。
第2:ニケヤ信経および使徒信経に示されたる信仰の道を公認する。
第3:主イエス・キリストの命じ給うた教理を説き、その自ら立て給うた洗礼および聖餐の2聖奠(せいてん)を行い、且つその訓戒を遵奉する。
第4:使徒時代より継紹したる、主教(エピスコポ)、司祭(プレスブテロ)、執事(デアコノ)の3職位を確守する。
3. 社会との関わり合い
日本聖公会は社会との関わりを通して、キリストの愛を伝えることを大切にしています。聖公会に関係する教育事業・諸事業として、立教大学や桃山学院大学などをはじめとする学校法人が運営する大学・高等学校・中学校・小学校や、専門学校・国際学校があります。約150の幼稚園・保育園は教会に隣接し、キリストの信仰のもとに運営されています。医療福祉としては聖路加国際病院の他、大小いくつかの病院があります。高齢者福祉事業においては、榛名の新生会や、千葉の九十九里ホーム、和歌山の神愛会などをはじめ、多くの社会福祉法人があります。また、エリザベスサンダースホームや滝野川学園などの児童養護施設、知的障害児(者)施設などもあります。在日外国人の支援活動を行っているのが、NPO法人・聖公会生野センターと、名古屋学生青年センターです。自然を通して環境教育・国際協力に取り組む清里のキープ協会も聖公会に関係しています。また個々の教会でも、住まいのない人たちへの炊き出しや、近隣の方々をお迎えしての講演会・音楽会など、その地域に根づいた社会活動を行っています。その他、正義と平和、人権、青年活動、平和憲法、原発、ジェンダー、在日外国人の支援、ハンセン病、パレスチナ、軍事基地など、さまざまな諸課題について学び、祈り、活動しています。
また海外との関係や働きかけも大切にしています。大きな災害が起った国や地域には、世界のネットワークを活かした緊急援助などを行っています。
4. 日本聖公会の礼拝
毎週日曜日に行われる日本聖公会の各教会の主日(日曜)礼拝では、日本聖公会が発行する「祈祷書」と「日本聖公会聖歌集」、日本聖書協会が発行する新共同訳「聖書」を用いて聖餐式をささげることを基本としています。礼拝では、祭壇の前に進み出てキリストのご聖体(パンとぶどう酒)をいただきます。聖餐には種々の大切な意味がありますが、キリストのご聖体をいただくことによって、主イエス・キリストを信じる者がキリストに養われ、ひとつとされることを表しています。主教による堅信を受けた方、あるいは洗礼を受け、ふさわしい準備や手続きをすまされている方は、聖餐にあずかることができます。また信徒でない方も、祭壇の前で祝福にあずかることができます。
日本聖公会は教会暦を守って、1年を降臨節・降誕節・顕現節・大斎節・復活節・聖霊降臨後の節とに分け、礼拝および、教会生活ではそれぞれの節に与えられた意味を大切にします。降誕日・復活日・聖霊降臨日(ペンテコステ)などの大きな祝日のほか、聖人をおぼえて祈る祝日もあり、多くの教会は特別に礼拝をささげています。
以上、大まかですが、日本聖公会について記しました。教会のことや礼拝のこと、聖書のことなど、そのほかにもお聞きになりたいことがありましたら、ぜひ近くの教会へおこしください。最初は戸惑うことも多いかも知れませんが、霊的な交わりの中で、生きることのよりどころとなり、多くの導きがあることを信じ、私たちはお待ちしています。
|