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核燃料サイクルが経済性を持たない事実が明らかに

(2016年2月28日朝日新聞掲載記事より)

電力各社は「契約に関わる事項」などとしてMOX燃料の価格を明らかにしていませんが、貿易統計で輸送費や保険料を含むとされる総額が公表されています。それを輸入本数で割ると、MOX燃料1本あたり2億604万~9億2570万円。時期でみると、99年の福島第一は1本2億3444万円なのに対し、直近の2010年と13年は7億~9億円台。13年6月に高浜に搬入されたものは1本9億2570万円となりました。 ウラン燃料の価格も非公表ですが、同様に98年7月輸入分は1本1億1873万円。13年10月の輸入分は同1億259万円で、13年6月輸入のMOX燃料はこの約9倍にあたります。
電力各社はMOX燃料の価格を明らかにしていませんが、貿易統計で輸送費や保険料を含むとされる総額が公表されています。それを輸入本数で割ると、MOX燃料1本あたり2億604万~9億2570万円。時期でみると、99年の福島第一は1本2億3444万円なのに対し、直近の2010年と13年は7億~9億円台。13年6月に高浜に搬入されたものは1本9億2570万円となりました。 ウラン燃料の価格も非公表ですが、同様に98年7月輸入分は1本1億1873万円。13年10月の輸入分は同1億259万円で、13年6月輸入のMOX燃料はこの約9倍にあたります。

使用済み核燃料を再処理して作るウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料は、通常のウラン燃料より約9倍高価なことが、財務省の貿易統計などから分かりました。再稼働した関西電力高浜原発3、4号機(福井県)などプルサーマル発電を行う原発で使われますが、高浜で使うMOX燃料は1本約9億円となっています。

プルサーマル発電は使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを再利用する国の核燃料サイクル政策の柱とされます。核兵器に転用できるプルトニウムの日本保有量(47・8トン)を増やさない狙いもありますが、国内の再処理施設は未完成なうえ、コスト面でも利点が乏しいことが浮き彫りになりました

1本のMOX燃料で利用できるプルトニウムは多くありません。一方、燃料の値段は電気料金に反映されます。原発のコストに詳しい立命館大の大島堅一教授(環境経済学)は「安価になるからリサイクルするはずなのに、MOX燃料は逆に高価で、経済的におかしい。国は商業的にも技術的にも破綻している政策を続けており、負担は国民に回ってくる」と指摘します。

そもそも、MOX燃料は当初高速増殖炉で使うはずでした。しかし原型炉もんじゅ(福井県)は実現の見通しが立っておらず、プルサーマルが核燃料サイクル政策の軸とされます。電力各社は、16~18基の原発でプルサーマル発電をすれば年間6トン前後のプルトニウムを利用できると想定しています。しかし、青森県六ケ所村の使用済み核燃料の再処理工場とMOX燃料加工工場は、稼働が大幅に遅れています。加えて、使用済みMOX燃料は建設中の加工工場で処理できず、その処分方法も決まっていません。

内閣府原子力委員会の小委員会は2012年、核燃料サイクルのコストの試算を発表しました。将来の電源に占める原子力の比率にかかわらず、使用済み核燃料を再処理せずに地下に埋める「直接処分」の方が、再処理してプルトニウムを利用するより安いとしています

(2016年3月3日朝日新聞掲載記事より)

2016年3月3日朝日
MOX計画の発端は、冷戦終結を受けて米国とロシアが2000年に結んだ核軍縮協定にさかのぼります。解体した核兵器のプルトニウムをMOX燃料にして、それぞれ原発と高速炉で消費することで合意しました。米国は07年に工場を建設し始めましたが、計画は思うように進んでいません。 代替案の「希釈処分」は、プルトニウムをほかの物質と混ぜて分離しにくくして、ニューメキシコ州にある核廃棄物隔離試験施設で地下655メートルに地層処分することを想定しています。米エネルギー省のモニツ長官は「(MOX工場に比べ)確実に技術的な挑戦が少なく、今からでも半分以下のコストですむ」と評価。MOX工場より15年以上早い20年代前半には搬入を始められるとしています。

米政府では、サウスカロライナ州で進めていたウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料工場の建設を打ち切る方針を打ち出しました。核兵器の余剰プルトニウムをプルサーマルで利用する計画でしたが、総額400億ドル(約4・5兆円)ともされる費用高騰が「重荷」になっているからです。代替案として、プルトニウムをほかの物質と混ぜて捨てる「希釈処分」を検討しています。

米国が陥った苦境は「プルトニウム利用はコスト高で割に合わない」ことを改めて示すものです。費用面から考えてプルトニウムを地中に捨てざるを得ないという米国の判断は世界に影響を与えるでしょう。約100トンもつ英国もMOX燃料での利用をめざすとしながら、同時に地中に捨てる研究もしています。
「捨てる時代」が始まる中で、日本は再処理工場を新たに動かしプルトニウムをつくろうとしています。すでに50トン近くあり、主な利用先としていた高速増殖炉の開発が全く見通せないのに、です。核燃料サイクルが経済性をもたない事実から目をそむけず、原子力政策を見直すことが必要です

日本が核燃料サイクルから手を引けないのは、やめると原発を動かせなくなる事があります。原発のプールにある使用済み燃料が「資源」から「ごみ」に変わると、捨て場を見つけない限り、プールが満杯になってしまいます。このため、すべての使用済み燃料を再処理する「全量処理」という非現実的な政策を捨てられないのです。
しかし国際的に見ても、破綻している事が明らかとなってきました。これ以上リスクや負担を増やさないためにも、国民一人一人がエネルギー事情へ関心を持ち、正しい方向を示していく事が今求められているのだと思います。

~4月からの電力自由化~ 『再生可能エネルギーの推進』よりも『安さ』をアピール

(2016年2月28日朝日新聞掲載記事より)

2016年4月から一般家庭でも電力の購入先を選べるようになり、電力会社間で契約競争が起きています。今のところ、アピールの中心は「安さ」。価格競争の中でかすんでみえるのが、東京電力福島第一原発事故後に機運が高まった、再生エネの割合を高めようという視点です。電力会社を自由に選べるようになれば、原子力や二酸化炭素排出の多い発電所を持つ会社を避け、再生エネに力を入れる会社を支援できると期待されていました。

国が認可した電力事業者の一覧は資源エネルギー庁のホームページに出ています。ただ、どこから電源を調達しているかを示す「電源構成」を開示しているのはほとんどなく、消費者が再生エネに力を入れる事業者を調べるのは困難です。

情報が入手しにくい一因は、国が電源開示の義務化を見送り、事業者の判断にゆだねたためです。小規模事業者にとって開示の事務作業に手間がかかることなどを理由にしていますが、環境団体は開示に慎重な電力会社に配慮したのは明らかと反発しています。

ドイツでは、電源の100%が再生エネという事業者もあり、環境意識が高い人たちが選んでいます。国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの柏木愛さんは「少しぐらい高くても環境にいい電気がほしい、という人は日本にもいる。現状は関心を持っている人ほど選ぶに選べない」と話しています。

再生エネを応援したい場合、どうすればいいのでしょうか。
ネット上の比較サイトをみると、料金以外に電源構成や二酸化炭素排出といった項目もあります。ただ、現在のところ、環境項目に回答していない会社も目立っています。逆に料金の表示は一切せず、独自の環境基準をもとに推薦する電力会社を紹介しているのが、環境保護団体などでつくる「パワーシフト・キャンペーン」のホームページです。事務局は公表資料をもとに再生エネに対する各社の取り組みを調査し、事業者に面談したうえで推薦対象を決めています。これまでに認可申請中を含めて10社を推薦しました。同事務局は「環境に配慮した電力会社の契約数が増えれば、再生エネの比率は上がっていく」としています。

■再生エネを電源の中心にする主な新電力会社
(2016年2月27日現在で「パワーシフト・キャンペーン」の基準を満たし、2016年度中に供給開始を目指す事業者の一覧。※の事業者はグループ内の子会社が予定)

◇4月1日から供給開始予定
 <水戸電力/水戸市>
 事前予約を受け付け中。茨城県中心の東京電力管内に供給
 <Looop/東京都文京区>
 3月中旬に契約プラン発表。東京電力、中部電力、関西電力の営業地域
 <みんな電力/東京都世田谷区>
 事前予約を受け付け中。4月以降は27の発電所を選択可能。首都圏中心に9都県に供給
 <みやまスマートエネルギー/福岡県みやま市>
 事前予約を受け付け中。当面は九州電力管内(離島除く)に供給

◇2016年度中に供給予定
 <トドック電力/札幌市>
 コープさっぽろの組合員の家庭が対象。6月から供給目指す
 <千葉電力/千葉県八千代市>
 4月の供給開始を目指し事前予約中。一般家庭向けは遅れる可能性も。東電管内
 <パルシステムグループ(※)/東京都新宿区>
 9都県にある生協「パルシステム」組合員の家庭が対象
 <生活クラブエナジー/東京都新宿区>
 21都道府県にある生協「生活クラブ」組合員の家庭が対象。首都圏1500世帯は6月、ほかは今秋以降の供給予定
 <湘南電力/神奈川県平塚市>
 事業用高圧電力の安定供給を優先。一般家庭向けは今秋以降の見込み

■パワーシフト・キャンペーンなどが示す、環境を重視した電力会社を選ぶ際のポイント
・電源構成などの情報を開示している
・電源の中心は風力、太陽光、小水力、バイオマス
・原子力発電や石炭火力発電は極力使わない
・地域や市民に根付いた活動を重視
・大手電力会社と資本関係がない
・親会社に石炭、石油会社がない

 

また、『再生可能エネルギー』と一言で言っても、必ずしもエコとは限りません。
例えば、再生可能エネルギーの中でも、バイオマス発電だけは燃料を必要とします。バイオマス発電は、廃材や産業廃棄物、糞尿や、トウモロコシやサトウキビを原料に精製されるバイオエタノールなどを原料にした燃料を使って発電することですが、これらの燃料の確保には、慎重に臨まなければなりません。
バイオエタノールを燃料にする場合は、本来食物であったトウモロコシやサトウキビを大量に必要とするため、食料問題につながりかねません。実際生産地では、すでにこれらが高騰するという問題が起きています。また、耕作をするために広大な土地が必要になり、米や野菜、果物が、トウモロコシやサトウキビに転作され、食料不足が起きる可能性も指摘されています。さらに、土地を確保するために山林や熱帯雨林などを切り開いてしまっては何の意味もありません。
他にも、廃材の確保が難しい場合には、森林資源の乱獲が懸念されています。
自然エネルギーを利用するために自然を破壊するという本末転倒な事態は避けなければなりません。その地域で産出される廃棄物を燃料資源として、上手に活用できるような仕組み作りが大切なのではないでしょうか。
是非『安さ』だけではなく、長い目で見て本当に良いと思う電気の調達方法を、じっくりと調べて選んで頂ければと思います。

(2016年2月29日赤旗新聞掲載記事より)

ドイツでは1998年に電力事業が全面自由化されました。EU(欧州連合)全体で一つの電力市場を作るためです。2005年制度改革があり法律の改正を経て、電力の購入先を変える消費者が増え始め、小売り事業者も増え、卸取引市場が活発になっていきました。
ドイツでは1998年に電力事業が全面自由化されました。EU(欧州連合)全体で一つの電力市場を作るためです。当初は小売りと卸の循環が上手くいかず、2005年制度改革があり法律の改正を経て、電力の購入先を変える消費者が増え始め、小売り事業者も増え、卸取引市場が活発になっていきました。これにより再生可能エネルギーも爆発的に伸び、主要な電源となり、石炭は先細りです。原発も2022年末までに全て廃炉にする事が決まっています。電力自由化と再生可能エネルギーの進展は、ドイツのエネルギー事情を根底から変えようとしています。

一足先に自由化に踏み切ったドイツでも、当初はなかなか上手くいかなかったようですが、法律を改正する事で問題を解決していきました。その結果、今では再生可能エネルギーが主要な電源となり、2022年までにすべての原発を廃炉にする事が決まっています。自治体では再生可能エネルギー100%化を競い合うように目指し、原発にこだわり時代の流れから取り残された大手企業が存亡の危機に立たされています。

これから日本でもドイツのように、消費者が自ら電力を選びやすいよう、国がルールを定めていく事が必要だと思います。そして、国民一人一人が自分の使っている電気について関心を持ち、国のエネルギー政策に国民の意志が繁栄される社会となる事を願っています。

原発事故から5年 いまだ消えない不安と溝に苦しむ母親達

(2016年2月23日朝日新聞掲載記事より)

東京電力福島第一原発事故からまもなく5年がたちます。除染などで放射線量は下がりつつありますが、日々の暮らしやなりわいなど至るところに事故の影響はなお残っています。
東京電力福島第一原発事故からまもなく5年がたちます。除染などで放射線量は下がりつつありますが、日々の暮らしやなりわいなど至るところに事故の影響はなお残っています。

東京電力福島第一原発事故からまもなく5年が経過します。

いまだ7万人もの人が政府の指示で避難を続けているとはいえ、福島県ではスーパーに並ぶ地元産の食材を買う親子も増え、子ども服がベランダで揺れるようになりました。しかし、事故前の日常を取り戻せない人も少なくありません。人々の間に生まれた溝は、時がたっても埋まりません。

事故直後に親子3人で、福島県沿岸部から郡山市に引っ越した母親(40)もその溝に苦しんでいます。5年生の娘(11)はクラスメートが給食を配膳し始めると、ランドセルからお弁当をとり出します。給食には放射性物質の検査を通った県内産の米や野菜が使われています。しかし、母親は娘の体への影響を心配し弁当を持たせています。

娘は「机を並べている他の子と違っていても、気にならなくなった」と言います。でも、クラスメートに「給食を食べないなんてノイローゼ?」と陰で言われているのも知っています。仲良しだったが今は口をきかないそうです。母親は「いつか娘が病気になるかもしれない。そう思うともう押しつぶされそうで」と話しています。
福島県教委職員は「数は多くないとはいえ学校に弁当を持ってくる子はいる。屋外の運動会でマスクをしたまま徒競走をする子もいる。放射能への思いは様々で強要できない」といいます。

(2016年2月21日福島民報新聞掲載記事より)

平成27年度の学校給食の福島県産品活用割合は27.3%で、前年度を5.4ポイント上回り、三割近くまで回復しました。
2015年度の学校給食の福島県産品活用割合は27.3%で、前年度を5.4ポイント上回り、三割近くまで回復しました。

上記のグラフから分かるように、福島県内の学校給食では福島県産品の活用率が震災後から年々上がっています。
郡山市在住の、ある小学生の子を持つお母さんは、震災以降福島県産の飲食物は一切購入せず、北関東の食品の購入でも躊躇しています。それでも、子どもの学校給食は仕方が無いので食べさせているのだそうです。震災から5年経った今も食品への不安に変化は無く、今後もずっと福島県産は避けるつもりでいる、とお話してくれました。
福島では、誰にも言えず1人で不安を抱えているお母さん達が沢山います。母親の緊張感は、子どもや家庭に少なからず何らかの影響を及ぼす事と思います。学校給食に福島県産を活用する事は、復興のアピールになるのかもしれませんが、そのようなお母さん達の気持ちに寄り添う事も大切な事だと思います。

この他にも同新聞では、母子避難をきっかけに離婚したケースや、賠償金を理由に誹謗中傷を受け傷ついている母親のケースが紹介されています。

中京大学の成元哲(ソンウォンチョル)教授らは事故後から継続して、福島市など9市町村で、事故当時1~2歳の子どもがいた母親を対象に以下の調査をしました。2015年回答を寄せた1200人余りの5割「(福島での)子育てに不安がある」と答えました。「地元産の食材を使用しない」の項目では、「あてはまる(『どちらかといえば』を含む)」が、事故後半年の8割超からは大幅に下がりましたが、まだ3割近くいました。賠償には7割以上が「不公平感がある」と答えました。成教授は放射能への不安は人それぞれで対策が難しい。せめて不満の矛先が避難者に向かわないような施策が必要だ」と述べています。

人の心が形成されるうえで一番大切な子どもの頃、その日々が放射能のせいで傷つく事が無いように、子育てに安心して取り掛かれる環境を取り戻すことが、今しなければならないことなのだと思います。手遅れになる前に・・・・。

2016年2月6日に、ロンドンのサザーク大聖堂で『東日本大震災5周年記念礼拝』が行われました。

式文
東日本大震災5周年記念礼拝での式文

2016年2月6日に、ロンドン・ブリッジ近くに位置するサザーク大聖堂で、東日本大震災5周年記念礼拝が行われました。

(撮影:Shu Tomioka,Shin Adachi )

礼拝の中で、ゲストスピーカーとして原発問題プロジェクトの事務局長池住圭さんより、原発の被災者と被災地の現状報告がなされました。

大聖堂内には、当プロジェクトの活動内容を紹介するブースも設置されました。被災者とボランティアの方々の交流の様子がうかがえる写真とともに、「Let Us Walk Together」と書かれたティータオルが掛けられました。このティータオルには、被災者の方々の言葉や支援者の言葉がデザインされています。

この追悼礼拝は、2013年に次いで2度目となります。震災から5年目を迎えるに当たり、日本から遠く離れた英国で、被災者とそのご家族に思いを馳せる時を共にするこの追悼式は、英国に在留する日本人と英国人の協働により提案されたものです。

パリ在住のソプラノ歌手、伊藤愛さんの歌声が響く中、マイケル・イプグレイブ主教のもとに始まった追悼礼拝。

(マイケル・イプグレイブ主教によるお説教はこちら➡  原文 /日本語翻訳文

お説教の後には、パイプオルガンが奏でる「ふるさと」に思いを馳せて、在英日本大使館の加藤元彦特命全権公使やサザーク市長を筆頭に、参列者全員が祭壇の横に置かれた2本の木に桜の花びらを飾り付けました。

事前に参列者一人ひとりに配布された花びらの一枚一枚には、震災で死者の出た地名が記されており、亡くなった方々や遺族、そして、今もなお困難の中にいる被災者一人ひとりを覚え続けるという強い思いが込められています。

満開となった桜はライトアップされ、復興に向けての希望の光を放っていました。

2016年2月6日チャーチタイムズ
2016年2月6日イギリスの新聞『CHURCH TIMES』に掲載されました。

追悼式の前後には、いくつかの場所で当プロジェクトの活動や原発事故による被災状況に関する報告会が開かれました。

ある報告会で、『JAN UK』という団体の方が、自己紹介に来てくれました。この『JAN UK』は、原子力発電所立地国である英国において、反原発・脱原発に向け声をあげようと集まった、日本人を中心とした個人の団体です。
『JAN UK』のwebサイト➡   ツィートはこちら➡)

2012年8月から日本大使館前で毎週金曜に抗議行動を開始し、同年10月からは東電ロンドンオフィス前でも活動を始めています。

『JAN UK』は団体というよりもネットワークに近く、代表者もいません。問題意識を抱えた個人が、出来る範囲で集合しているそうです。参加者の一人である女性は、『何もしなければ犠牲者の上に成り立っている原発、そしてそれを許すシステムを黙認することになってしまうとの一心で、どうすれば良いのか悩みながらできることを模索している。』とお話されています。

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このティータオルは、当プロジェクトに関わった方々の寄せ書きと、『被災者支援センター しんち・がん小屋』の方々の言葉を掲載したものです。

現在イギリスに在住の聖公会信徒であるユキ・ジョンソンさんが、震災から5年経った今も福島を忘れずにいようとの願いを込めて、作成して下さいました。

1枚4.5ポンドで販売し、そのうち制作にかかったコストを除いた分を当プロジェクトへ寄付して下さっています。
震災や原発事故が時間の経過と共に次第に風化されゆくのを実感する昨今ですが、このようなあたたかな励ましに支えられています。ご協力頂きました方々へ、心より感謝致します。

もんじゅ廃炉3000億円 原子力機構2012年に試算

(2016年2月16日福島民報、2月17日福島民報・赤旗新聞掲載記事より)

高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)を運営する日本原子力研究開発機構が、もんじゅを廃炉にするには30年間で約3000億円の費用が必要との試算を原発事故の次の年に行っていたことが分かりました。原子力機構は「当時、もんじゅの存続の是非が議論されたため、内部で試算した」としています。

もんじゅの廃炉費用が明らかになったのは今回が初めてで、その額は通常の原発の数倍に上ります。もんじゅにはこれまで1兆円超がつぎこまれ、再稼働する場合も改修費など1000億円超が必要です。運転を再開しても廃炉にしても、さらに巨額の費用負担が発生する実態が明らかになりました。

 

『もんじゅ』は、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使い、高速の中性子で核分裂を起こし、発電しながら消費した以上のプルトニウムを生み出すことから“高速増殖炉”と呼ばれます。政府は「夢の原子炉」として、使用済み核燃料の再処理工場とともに核燃料サイクルの両輪と位置付け、1兆円を超える多額の国費を投入して研究開発を続けてきましたが、事故やトラブルが後を絶たず運転実績はほとんどありません。2012年には大量の機器の点検漏れが発覚、原子力規制委員会が13年5月、事実上の運転禁止命令を出しました。

では、もんじゅはなぜ今まで運転を続けてきたのでしょうか?それは、運転をやめる事が出来ない色々な理由があるからです。日本はすでに、核兵器数千発分に相当する47トン以上のプルトニウムを保有しており、もんじゅなどでプルトニウムを利用することを理由に、その保有を国際的に容認されています。もんじゅの廃炉などで、その前提が崩れれば、「日本も核兵器に転用か」といった国際的疑念が高まりかねないからです。
又、核のゴミの問題もあります。高速増殖炉は核のゴミのリサイクルを目標に研究開発されていましたが、実際は失敗続きで破綻しています。しかし、核燃料サイクルが不可能である事を認めれば、原発が『トイレの無いマンション』であると認めてしまう事になります。原発の再稼働や核の輸出を目指している政府や電力会社としては、それでは都合が悪いため、やめるにやめられない状況となっているのです。

もんじゅの継続が、問題の先送りでしかない事は明らかです。無駄な国費がこれ以上費やされる事の無いように、一刻も早く廃炉へと進む事を願っています。

除染ごみ 搬出遠く ―中間貯蔵施設用地取得1%―

(2016年2月13日・17日福島民報・14日朝日新聞掲載記事より)

東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の予定地は、福島第一原発を取り囲むようにしてあります。放射線量が高く人が許可なく立ち入れない「帰還困難区域」です。福島県と大熊、双葉両町が除染廃棄物の搬入受け入れを決めてから、間もなく1年を迎えます。
又、除染廃棄物を中間貯蔵施設建設予定地内の保管場に搬入する“パイロット(試験)輸送”は、順調に進めば2016年3月中にも完了する見通しです。
しかし、中間貯蔵施設建設予定地の用地交渉は進んでおらず、施設整備と廃棄物の本格輸送を始める見通しは立っていません。交渉の結果予定地の取得が出来たのはわずか1%未満に留まっています。福島県内の復興に欠かせない施設ですが、交渉に携わる人手不足が深刻であり、地権者からは「先祖伝来の土地を手放したくない」という複雑な思いも聞かれます。

一方、福島県によると除染廃棄物の仮置き場は、ほぼ満杯に近い状態です。
中間貯蔵施設への本格輸送開始に見通しが立たない事で、新たに出た除染廃棄物の行き場は無く、住宅や事業所などの除染現場敷地内に置かざるを得ない状況となっています。
私の住む郡山市でも、普段外を歩いていると、道路の至る所に除染廃棄物が置かれているのが目に入ります。一軒家では、自宅の除染で出た汚染土を庭の下に埋めています。除染によりいくらか線量が下がったとはいえど、庭の下に汚染土が埋まっているのは気持ちの良いものではありません。ここで生活していく上では、放射能を忘れる事は出来ないのです。

当プロジェクトの事務所付近にあるアパートの軒下に置かれた汚染土
当プロジェクトの事務所付近にあるアパートの軒下に置かれた汚染土
除染で出た放射性廃棄物を埋める為に、庭に穴を掘っている様子
除染で出た放射性廃棄物を埋める為に、庭に穴を掘っている様子

福島の復興のためには、放射性廃棄物の行き場を定める事は急務です。
このまま、除染廃棄物がある風景の中で、次の世代が育って行く事は心配です。未来のある子ども達の為にも除染廃棄物の受け皿となる中間貯蔵施設を早く作って欲しいという想いはありますが、中間貯蔵施設予定地の方にとって人生が詰まった『家』を手放す事を迫られる心情を考えると、その解決の難しさを感じています。

凍土遮水壁の設置完了したものの認可・運用めど立たず

(2016年2月10日福島民報・朝日新聞・赤旗掲載記事より)

 

東京電力が福島第一原発の汚染水対策の柱として建設している凍土壁(※)が、凍結を始められない事態に陥っています。地下水の動きによっては汚染水の増加を抑えるどころか、逆に汚染水が漏れ出すおそれがあるとして、原子力規制委員会が凍結開始を認可しないからです。東電は2016年2月9日、工事の完了を発表しましたが、規制委を納得させられるかどうかは見通せません。

【(※)凍土壁とは・・・・福島第一原発では、溶けた燃料が落ちている建屋地下に地下水が流れ込むことで、高濃度汚染水が生まれ続けています。その対策として1~4号機の建屋地下を長さ1500メートルの「氷の壁」で取り囲み、地下水を遮断する計画を立てました。計1568本の凍結管を約1メートル間隔で深さ30メートルまで埋め、零下30度に冷やした液体を循環させて周りの土を凍らせます。しかし、過去にこれほど大規模な凍土壁が造られた前例は無く、凍結期間も2020年までと長期間に及ぶ事を懸念する声もあります。約345億円という巨額の税金を投入した壮大な無駄遣いになりかねないと、実現性を含めて多くの疑問が出されています。】

凍土壁を認可する立場の規制委は当初から効果を疑問視してきました。「氷の壁」で囲んで地下水位が下がりすぎると、建屋にたまっている高濃度汚染水が逆に地中へ漏れ出してしまうリスクがあるからです。

安全に運用できるか審査する検討会で、東電に再三説明を求めてきました。他の対策もある中で凍土壁の早期凍結にこだわる東電への不信感もあり、田中俊一委員長は昨春、「凍土壁ができたら汚染水の問題がなくなるかのような変な錯覚をまき散らしているところに過ちがある」とまで述べました。

実際、昨春に始まった試験凍結では、予想外に水位が下がる場所が見つかりました。水位は場所ごとに異なり、流速や流れる向きも未解明な部分が多いですいったん凍らせると溶けるまでに2カ月ほどかかるといい、問題が起きてもすぐに後戻りできません

敷地内にたまった処理済みの汚染水は70万トンを超え、タンクの増設も難しくなってきました。新たな汚染水の発生をとにかく減らしたい東電と、汚染水漏れは何としても避けたい規制委。隔たりが埋まらないまま工事完了が近づいた2015年12月、規制委は建屋から汚染水が漏れ出すおそれが少ない凍土壁の部分凍結を文書で「提案」する異例の対応をとりました。東電は全面凍結を目指す姿勢を崩していませんが、「提案」の検討も進めています。

2016年2月10日(水)園外保育『雪遊び』へ行ってきました。

2016年2月10日(水)郡山セントポール幼稚園では、猪苗代町にある国立磐梯青少年交流の家に『雪遊び』へ行きました。

着いてみると想像以上に雪が積もっており園児は大喜びです。すぐに吹雪も収まり、お天気にも恵まれました。

さくら組とたんぽぽ組では、幼稚園にある遊具のシャベルを使っておままごとをしたり、雪だるまを作ったりしました。IMG_2392

もも組とひかり組は、そりすべりや、チューブやおにぎり型の遊具にまたがって身体を大きく使い、雪面を滑って思い切り遊びました。IMG_2780

そして雪合戦では、雪を両手でわしづかみにして、みんなで大いに楽しみました。IMG_2786

年長組の男の子は、彫刻遊びに夢中になっていました。IMG_2790

青空の下沢山の雪に触れ合い、園児と先生共にリフレッシュ出来たプログラムとなりました。帰りのバスではみんな遊び疲れて、ぐっすりと眠る様子が見られました。IMG_2795

電力会社 経営再建は原発頼み

(2016年2月8日朝日新聞掲載記事より)2016年2月8日朝日

東京電力福島第一原発事故からまもなく5年。事故を収束させる見通しも立たないなか、東電は世界最大級の発電規模を持つ柏崎刈羽原発(新潟県)を再稼働させようと、地元で積極的に動いています。
―原発をコントロールする中央制御室。「地震加速度大」「原子炉スクラム」の赤い表示がともる。「確認して」と指示が飛ぶ。事故時に司令塔となる緊急時対策所では「警戒態勢を発令する」と発電所長。建屋の外では、作業員が非常用の電源車を起動し、別の作業員が消防車にホースをつなぎ込み、放水する。
「どんな状況でも対応できるよう、訓練に全力を注ぎます」。作業を担う9人が口々にそう語る。―

これは、東電が新潟県だけで流すテレビCMです。2015年6月から始まり、この訓練編を含めて5種類あります。主に、再稼働に向けて十分な準備を進めていることを訴える内容です。毎月約240回。事故後、電気を供給する関東地方でCMを原則自粛している東電としては「異例」の対応です。
そんなCMを流し始めたころ、原発がある柏崎市と刈羽村では、あちこちに東電社員の姿がありました。「ぜひ発電所の安全対策を見てください」。115人の社員が約4カ月かけて、ほぼすべての住戸となる4万戸強を訪ね歩きました。
東電がここまで再稼働にこだわる理由は明快です。柏崎刈羽が動かないと、再建が成り立たないからです。原発1基が動けば、その分、火力の燃料費を減らせるので、月に最大140億円ほど収支が改善するといいます。東電の再建計画は柏崎刈羽6、7号機の再稼働を前提にしています
地元同意のカギを握るのは新潟県知事ですが、知事の東電への不信は消えていません。新潟県は、国会や政府の事故調査委員会とは別に、専門家による技術委員会を独自につくり、福島の事故検証を続けています。7基で821万キロワットを超える世界最大級の柏崎刈羽は、福島と同じ「沸騰水型炉」です。大きな事故が起きれば、その被害は福島とは比べものにならないとされます。知事の決まり文句は「事故の検証と総括がなければ再稼働は議論しない」。東電側は2015年秋、委員会の求めに応じて、当時の社長や現地の作業員ら約30人の聞き取り調査を実施し、内容を報告しました。それでも知事の理解は得られていません。
又、再稼働に慎重な姿勢を見せる知事に対し、国は交付金減額という形で新潟県へ圧力をかけています。(詳しくは2016年1月5日赤旗新聞掲載記事についての投稿をご覧下さい
秋には知事選があります。柏崎市と刈羽村の議会は早期の再稼働を求める請願をすでに採択しました。東電の「地ならし」が選挙にどう影響するのでしょうか。答えはまもなく出ます。

 

原発事故後、全国すべての原発が止まりました。電力の需給は厳しくなる局面もありましたが、5年間で状況は変わりつつあります。
電力10社の2015年夏の電力需要(ピーク時)は、事故前の2010年夏より約13・5%減りました。企業や家庭で節電が進んだほか、新電力による供給が増えたからです。一方で「原発頼み」の経営は変わりませんでした。
原発は長く運転するほど利益を生みます。建設費などの初期投資は巨額ですが、燃料のウランは化石燃料を使う火力より安く、運転にかかる費用を抑えられます。再稼働した川内1、2号機、関西電力高浜3号機(福井県)は運転開始から約30年。原子力規制委員会に申請した26基は建設中を除くと平均25年ほど。初期投資の回収が進み、安定して利益を出す「働き盛りにあたります。震災後に追加した安全対策は2兆円超の見通しですが、各社は再稼働できれば「回収可能」と判断しています。
ただ、震災後に定められた新規制基準では、原発を新たにつくるにも、廃炉にすると定めた原則「40年」を延長して運転するにも、これまで以上の設備投資と安全対策費が必要になります。世界経済の減速で原油安が進み、原油価格に連動する液化天然ガス(LNG)価格は下落。火力の発電コストは下がりつつあります。
コスト面での原発の優位は期間限定でしかありません。原発が経営の「重荷」になった時の答えは、まだ見当たりません。

相馬市、南相馬市で原発事故後慢性疾患が増加

(2016年2月6日福島民報新聞掲載記事より)

相馬中央病院の森田知宏医師、南相馬市立総合病院の坪倉正治医師、尾崎章彦医師らの研究チームは5日、東京電力福島第一原発事故前後の相馬、南相馬両市民の慢性疾患発症の変化について研究結果を公表した。避難の有無にかかわらず、事故後に糖尿病、高脂血症の患者が増えている現状が明らかになった。
相馬中央病院の森田知宏医師、南相馬市立総合病院の坪倉正治医師、尾崎章彦医師らの研究チームは5日、東京電力福島第一原発事故前後の相馬、南相馬両市民の慢性疾患発症の変化について研究結果を公表しました。避難の有無にかかわらず、事故後に糖尿病、高脂血症の患者が増えている現状が明らかになりました。

2016年2月5日、東京電力福島第一原発事故前後の福島県相馬市、南相馬市の両市民の慢性疾患発症の変化について研究結果が公表され、避難の有無にかかわらず、事故後に糖尿病、高脂血症の患者が増えている現状が明らかになりました。

研究では、事故前、事故後にそれぞれ1回以上特定健康診断を受診した両市民(40~74歳)計6406人を対象に、避難区域内の住民と区域外の住民のグループに分けて分析しました。
事故後3年間(平成24~26年)の慢性疾患の発症割合を事故前3年間(20~22年)と比べた値は【表】の通りです。事故前3年間の平均値に対し、区域内の住民は糖尿病が1・21~1・60倍高脂血症は1・16~1・30倍に増加区域外の住民は糖尿病が1・11~1・33倍、高脂血症が1・03~1・14倍に増えていました増加率は避難区域内の方が区域外より高い傾向にあります。
研究チームではこの結果を受け、上昇の原因については「現時点では、生活習慣の変化や社会状況、環境の変化という表現をせざるを得ない」と説明し、「災害後は長期的な慢性疾患の管理が重要」と述べました。

 

チェルノブイリ原発事故では、甲状腺疾患に限らず様々な病気の増加が報告されています。事故から2年後には、大人については糖尿病、慢性気管支炎、虚血性心疾患、神経系統の病気、胃潰瘍、慢性呼吸器系の病気などが、それ以前に比べて2倍から4倍に増加しています。(1989年 IAEA非公式会議。ベラルーシの保健大臣からの報告より)

そしてチェルノブイリ原発事故から27年経った今も、様々な疾患が依然増加傾向にあります。現地の医師は、研究現段階で実際にチェルノブイリ原発事故が国民にもたらした健康被害を総括するのは時期尚早であり、がんの分野についての結論を出すのはまだ早いと述べています。

福島原発事故かもうすぐ5年となる今、健康被害はまだ始まったばかりと言えます。事故と病気との因果関係について結論が出るのも、きっと果てしなく先の事なのでしょう。今私たちに出来る最善の事が何であるのか、改めて考えさせられます。