原発再稼働しなければ交付金を減額-国が自治体へ圧力-慎重な新潟県へ狙い撃ち

2015年12月30日赤旗
国が地方自治体に出す交付金をてこにした原発立地自治体への圧力が強まっています。なかでも知事が再稼働に慎重姿勢をとっている新潟県の下落幅が最も大きくなる事が分かりました。

(2016年1月5日赤旗新聞掲載記事より)

国が地方自治体に出す交付金をてこにした原発立地自治体への圧力が強まっています。安倍晋三政権は2016年度予算案の作成にあわせて電源立地地域対策交付金の算定方法を変更しました。再稼働しなければ交付金が大幅に減額される仕組みです。なかでも知事が再稼働に慎重姿勢をとっている新潟県の下落幅が最も大きくなることが分かりました。

同交付金は、発電所の立地自治体を支援する名目でつくられた制度です。2011年に起きた東京電力福島第1原発事故で全国の原発が停止するなか、発電電力量に応じて払われる交付金の扱いが問題になってきました。
これまで国は、停止中の原発について一律81%の“みなし稼働率”を適用し、発電電力量を試算してきました。2016年度以降は、原子炉ごとに福島事故前10年間の平均稼働率を適用します。上限は68%で下限はありません。市町村に対しては下限や激変緩和措置があり、下限なしで一気に減額する道県と二重基準になっています。
原発が再稼働した場合は、実際の発電電力量に基づいて交付金額を算定し直します。全国43基の原発のうち平均稼働率が68%を下回るのは18基多くの原発は再稼働で交付金が増える可能性が高く、再稼働に向けた動きが強まる恐れがあります。

新潟県の東電柏崎刈羽原発は、2000年代に東電のトラブル隠しや中越沖地震によって運転停止が相次いだため、7基合計の平均稼働率が約48%と2015年度までのみなし稼働率と比べ30ポイント以上落ち込みます。同県の担当課は「減額でいろいろ影響がでてくる」と語ります。

~元経済産業省官僚の古賀茂明さんの話~
『原発の交付金見直しは、経産省の官僚がいくつものパターンをシミュレーションしてつくったものでしょう。来年の知事選も念頭に、再稼働に慎重な新潟県を狙い撃ちしたものだと思います。再稼働に前向きな自治体には補助金で優遇するが、後ろ向きな自治体は他の予算を含め徹底的に冷遇するという脅しです。』
今、世界では自然エネルギーが急速に台頭し、分散型の自然エネルギーを中心とした電力システムへの転換が進んでいます。
日本には単位面積当たりの自然エネルギー資源量はドイツの9倍もあるにも関わらず、自然エネルギーによる発電量はドイツの1/9しかありません。ドイツは、3.11直後に原子力発電所の41%を閉鎖しましたが、そのうち3/5は自然エネルギーの増加分で賄いました。この日本とドイツの違いは技術や人材ではなく、制度の違いによるものです。

東日本大震災と原発事故という大きな喪失経験をした日本にとって、地域の特徴に合わせた再生可能エネルギーでの自給自足が可能な社会を目指す事は、一つの希望と言えます。
既に、国内でも小規模でのエネルギー自給自足を目指した政策を積極的に進めている市町村も出てきています。そうしたなかで、政府は原発再稼働へ向けて地方自治体へ圧力をかけようとしているのです。原発を再稼働させる事で得をするのは誰なのか、私たち国民がしっかりと把握し、民意を無視させない事の大切さを感じています。