聖公会とは(その1)
聖公会の実体を簡単に表現すると
聖公会とは英国国教会を母体として誕生したカトリックとプロテスタントの中道を行く、それらに次ぐ信徒数を持つキリスト教派の一つです。
聖公会の始まり
元来、英国国教会は、西暦 669 年に成立したローマ教皇支配下のカンタベリー大主教が司るローマ・カトリック系の教会だったのですが 1534 年 英国王ヘンリー八世の離婚願いがローマ教皇に拒否されたのを機会にローマ教皇の支配を脱し、英国国教会は国王を首長とした教会となりました。これがアングリカン・コミュニオン(全世界聖公会)(The Anglican Communion)と呼ばれる信仰の共同体の始まりです。つまり英国聖公会の始まりで、聖公会は大英帝国の繁栄とともに全世界へと布教されて行きました。
今では、英国を中心に約 160 カ国、約 40 の管区、7,000 万以上の信徒数を擁するまでになっています。
英国国教会成立についての更に詳しい情報は、イングランド国教会(Wikipedia) にあります。
また、聖公会は、その成立のいきさつと、当時の歴史的流れから、カトリック的要素を持ちながらも、宗教改革から誕生したプロテスタントの影響も受けていますので、それらを橋渡しする「ブリッジ・チャーチ」(架け橋教会)的な側面も持っています。そのため聖公会は中道のキリスト教であると言われています。
なお、韓国、香港および台湾でも「聖公会」を使用していますが、これは Holy Catholic Church を漢訳したものと言われていますので、日本でもその訳を取り入れたものと思われます。 (聖なる公同の教会と日本語的に訳した方がわかりやすいですね。)
日本聖公会の誕生
日本では、キリスト教の布教が禁じられていた 1859 年 ( 安政 6 年 )、アメリカ聖公会の宣教師である
チャニング・ムーア・ウィリアムズ主教 が日本に渡来し、日本での伝道活動を行いました。 その後イギリス、カナダから派遣された宣教師も加わり、日本全国で布教活動が行われ、ウィリアムズ主教渡来 28 年後の 1887 年(明治 20 年)日本聖公会が生まれました
チャニング・ムーア・ウィリアムズ主教については、下記のページに詳細な伝記があります。
「監督ウイリアムス師傳」 (日本聖公会管区資料)
各国の聖公会は各々一つの管区として、独立かつ自主的な活動をしています。
世界の管区については、このページの後半「聖公会とは(その2)」の「アングリカン・コミュニオンの教会」をご覧下さい。
また管区のもとには、幾つかの教区がおかれ各教会活動の連携をとっています。日本では日本聖公会がそれらの管区の一つであり、北海道から沖縄まで、11 の教区を構成し、およそ 350 の教会が全国各地にあり、その信徒数は約 5 万人と言われています。
私たちの「浜松聖アンデレ教会」は、日本聖公会傘下の 横浜教区 の管轄下にあります。
なお、日本聖公会はアメリカの宣教師ウィリアムズ主教による伝道から始まったためでしょうか、現在使われている祈祷書は米国聖公会祈祷書に基づいているとのことです
日本聖公会の教区
北海道、東北、北関東、東京、横浜、中部、京都、大阪、神戸、九州、沖縄の 11教区 があり、各教区は主教が管轄し、その主教の中から日本管区の主教が選出されています。
日本聖公会の関連施設
日本では、聖公会は初期の頃から日本社会の発展に貢献し、特に教育、医療、社会福祉事業の面で草分け的な存在でした。そのため、聖公会の信徒や、牧師がかかわって設立された多くの関連施設が全国に存在します。例えば、
●教育の面では → リンクリストはこちら
立教大学 、
立教女学院、
桃山学院、
プール学院、
神戸松蔭女子学院大学
香蘭女学校、
平安女学院大学、
聖路加国際大学、
神戸国際大学
及び
付属高等学校
など
●幼児教育の面では → 幼稚園のリンクリストはこちら
全国に96 の聖公会関連幼稚園があります。( 2013 年度「聖公会手帳」)
●医療関係では → リンクリストはこちら
聖路加国際病院、
聖バルナバ病院 など
●福祉施設では
エリザベス・サンダース・ホーム、九十九里ホーム、滝乃川学園 、神愛会、岐阜アソシア
特別養護老人ホーム オリンピア、特別養護老人ホーム常楽園、新生会 など
その他、財団法人キープ協会 およびその関連施設
である清里の 清泉寮 など、
全国に数多くの関連施設を持って、日本社会に奉仕しています。
聖公会とローマ・カトリックの違い
カトリック
・ローマ・カトリック教会は全てローマ教皇猊下の司牧の元にあります。
・聖公会は各々の管区が独立で自治権を持っています。
イングランド国教会のカンタベリー大主教は、アングリカン・コミュニオン(全世界のアングリカン教会)
全主教の中における同位者中の首位という位置づけでシンボル的な存在です。
・全聖公会の一致としてランベス綱領にて、下記項目が維持されています。
※ 主教制
※ ニケヤ信経
※ 使徒信経
※ 聖餐式
ランベス綱領(聖公会綱憲)は正確には次の4綱領です。
第1 旧約及び新約の聖書を受け、之を神の啓示にして救いを得る要道を悉く載せたるものと信ずる。
第2 ニケヤ信経及び使徒信経に示された信仰の道を公認する。
第3 主イエス・キリストの命じ給うた教理を説き、其の自ら立て給うた洗礼及び聖餐の二聖奠を行い、
且つその訓戒を遵奉する。
第4 使徒時代より継紹したる主教(エピスコポ)、司祭(プレスブテロ)、執事(デアコノ)の3職位を確守する。
詳細は、下記の「聖公会とは(その2)」をご覧下さい。
聖公会とは(その2)
アングリカン・コミュニオン
160カ国以上に広がる36の独立した教会あるいは管区に、 7000万人近くの聖公会の家族がいます。
アングリカン・コミュニオンの発展の歩みは、二つの段階に分けることが できます。
17世紀にイギリスで始まった最初の段階に続いて、アングリカニズムは、 オーストラリアやカナダ、ニュージーランド、南アフリカ、アメリカなどでの植民地化によって確立していきました。
2番目の段階は、18世紀後半から 始まりました。この時代に、2世紀前から形成されてきたイギリスや アイルランドやスコットランドやウェールズの教会の宣教師たちによる協力した働きによって、
聖公会の教会が世界中に立てられました。
聖公会は、伝統や学問や理性に照らして解釈しつつ、聖書に基づいた 普遍的で使徒的な信仰を保ち、宣言します。イエス・キリストの教えに習い、 教会は全被造物への福音の宣言にたずさわります。
その信仰と職制と実践は、 16世紀と17世紀に初めて作られた祈祷書に表現されています。
そして、 1888年のランベス会議で承認された「シカゴ―ランベス四綱領」にもっとも 簡潔に示されています。この文章はキリスト者の一致の探究のための信仰と 職制の本質的なしるしとして掲げられたものです。
- 啓示された神の言葉としての旧新約聖書
- キリスト教信仰の充分な表現としてのニケヤ信経
- キリストが用いられた言葉と要素を確かにともなって執行される洗礼と聖餐という二つのサクラメント
- 歴史的主教制
聖公会の礼拝の中心はユーカリスト(感謝の祭り)です。これは、聖餐式、ホーリーコミュニオン、主の食卓、ミサとも呼ばれています。この祈りと賛美が捧げられる中で、み言葉の宣言とサクラメントの祝いを通して、キリストの生と死と復活が記念されます。
礼拝は、聖公会の心です。そのスタイルは、シンプルなものから複雑なものまで、プロテスタント的なものからカトリック的なものまで、カリスマ的なものから伝統的なものまで、さまざまに変化します。
祈祷書は、聖公会の全体にわたって多様に改訂 されることによって、教会の中で見出される幅広い表現を与えています。その教会の原則は、エリザベス一世の時代から続き、異なるキリスト教的伝統を結び付けるヴィアメディアを反映しているのです。
父と子と聖霊の名による水を用いる洗礼は、キリストと教会を一つにします。他の式には、堅信礼、聖職按手、告解、結婚、病人のための塗油があります。
アングリカン・コミュニオンの教会は、愛情とお互いへの忠誠によって結ばれています。それらは、カンタベリー管区と完全相互聖餐の関係にあり、このようにカンタベリー大主教は、聖公会の一致のための独特な焦点です。 彼は、10年に一度のランベス会議を呼びかけ、その議長を務め、またACC(全聖公会中央協議会)の総裁役も担っています。聖アウグスチヌスから 数えて103代目の大主教は、1991年4月に就任したジョージ・L・ケアリー大主教です。
ランベス会議
ランベス会議は、カンタベリー大主教の呼びかけによって、10年に1度主教が集まるものです。1867年に初めて開かれて、今日までに12回開かれて います。
次の会議の日程は、1998年と発表されています。1978年までは主教のみの会議でしたが、1988年からは主教だけでなく、ACCのすべての メンバーと、ユトレヒト同盟に属する復古カトリック教会やコミュニオンの関係にある教会(バングラディッシュ、北インド、南インド、パキスタン)の代表の主教が集まるようになりました。
1979年から、アングリカン・コミュニオンの自立した教会の首座主教 (大主教や総裁主教)が、2、3年に一度、神学的、社会的、国際的な課題を協議するために集まっています。会議の場所は次の通りです。
1979年 エリー(イギリス)。
1981年 ワシントン(アメリカ)。
1983年 リムル(ケニア)。
1986年 トロント(カナダ)。
1989年 キプロス。
1991年 アイルランド。
1993年 ケープタウン(南アフリカ)。
1995年 ウィンザー(イギリス)。
1997年 エルサレム。
ACCは、10年に一度の会議よりもさらに頻繁に、より多くの代表による教会間のコンタクトの必要性が認められて、 1968年のランベス会議の決議によって作られたものです。 この協議会は、アングリカン・コミュニオンのすべての教会の総会や大会によって承認 されたものです。協議会は、1969年の10月から始められています。
ACCは、2、3年に一度集まり、 その現在の方針は、世界の異なる地域が出会うことです。すでに9回の会議が開かれています。
1971年 リムルー(ケニア)。
1973年 ダブリン(アイルランド)。
1976年 トリニダッド。
1979年 ロンドン、オンタリオ(カナダ)。
1981年 ニューキャッスル (イギリス)。
1984年 バダグリー(ナイジェリア)。
1987年 シンガポール。
1990年 ウェールズ。
1993年 ケープタウン(南アフリカ)。
1996年 パナマ。
活動
以下の活動とプロジェクトは、 ランベス会議と首座主教会議とACCによって、様々な方法で始められ、実行され、支援されているものです。
・ パートナーシップ・イン・ミッション(宣教における協働)
・ 姉妹教区プログラムエキュメニカルな対話
(ルーテル教会、 正教会系オリエント教会、正教会、改革派諸教会、ローマ・カトリック教会)
・ 聖公会代祷表アングリカン・ワールド全聖公会神学・教理委員会
・ ローマ 聖公会センター
・ 聖公会礼拝協議会
・ 全聖公会出版ネットワーク
・ 全聖公会インフォメーション・ネットワーク
・ 国連オブザーバー全聖公会ネットワーク
事務局はロンドンにあり、第99代の 事務総長はジョン・L・ピーターソン司祭が担っています。事務局のスタッフは、ランベス会議、首座主教会議、ACCに奉仕しています。 それらは、会員数や財政に合わせた聖公会のすべての教会の支援による全聖公会関係予算によって成り立っています。
メンバーの教会とその他の組織は、パーソナル・エマージェンシー・ファンドのような、協議会によって認可された特別なプロジェクトへの貢献も期待されています。
The Anglican Communion Secretariat
157 Waterloo Road, London SE1 8UT, England
TEL: (0171) 620 1110
FAX: (0171) 620 1070
IAIN/Quest: ACC
Internet: acc@ecunet.org
Produced by the Communications Department - January 1997
「アオテアロア・ニュージーランド・ポリネシア聖公会」 「 オーストラリア聖公会」
「バングラディッシュ聖公会」 「ブラジル聖公会」 「ブルンディ聖公会」 「カナダ聖公会」
「中央アフリカ聖公会」 「セイロン聖公会(スリランカ)*」 「英国聖公会(ヨーク、カンタベリー)」
「インド洋聖公会 」「 アイルランド聖公会」 「日本聖公会」 「エルサレム・中東聖公会」
「ケニア聖公会 」 「大韓聖公会」 「メラネシア聖公会」 「メキシコ聖公会」 ミャンマー聖公会(ビルマ)」
「ナイジェリア聖公会」 「北インド教会」 「パキスタン教会」 「パプアニューギニア聖公会」
「フィリピン聖公会」 「ポルトガル・ルシタニア教会*」 「ルワンダ聖公会」 「スコットランド聖公会」
「スペイン改革監督教会* 」 「東南アジア聖公会」 「南アフリカ聖公会」 「南アメリカ聖公会 」
「南インド教会」 「スーダン聖公会」 「タンザニア聖公会」 「ウガンダ聖公会」 「米国聖公会 」
「ウェールズ聖公会」 「西アフリカ聖公会」 「西インド諸島聖公会」 「ザイール聖公会」
(注)*の印が付いている教会は管区ではありません。
このほかに、バミューダ、台湾、キューバ、香港、マカオ、コスタリカ、プエルトリコ、ベネズエラに特別教区があります。いくつかの新しい管区が、現在でも形成されつつあります。
コミュニオンにある教会には、「マル・トマ・シリア教会」、「フィリピン独立教会」、ヨーロッパにあるいくつかのルーテル教会や復古カトリック教会も含まれています。
中国教会は、聖公会も含めて形成された「教派以後の教会」として知られています。
アングリカン・コミュニオンにおいては、この千年期の最後の10年を、福音宣教の10年と位置づけています。キリストの福音を分かち合うことは、 それぞれの独自の方法による、教会とそのすべてのメンバーの仕事です。管区教区、パリッシュ、宣教のための組織は、様々なプログラムによって、 キリスト者が福音宣教を成し遂げることを可能にします。
アングリカン・コミュニオンのエンブレムであるコンパス・ローズの実際の画像は、このページの右側に掲載してあります。→ ここ
アングリカン・コミュニオンのエンブレム、コンパス・ローズは、もともとニューヨークの故エドワード・ウェスト氏によってデザインされたものです。現在のデザインは、ギルズ・ブルームフィールド氏によるものです。カンタベリー大聖堂の本堂におさめらたこのシンボルは、1988年のランベス会議の最後の聖餐式において、カンタベリー大主教によって捧げられたものです。
大主教は、その使用がますます世界大になることをあらわして、1990年に ワシントン大聖堂にも同様のシンボルを、1992年にはニューヨーク大聖堂にオリジナルデザインのものを捧げました。
中央は、聖公会にその起源を思い 起こさせる聖ジョージの十字です。十字架のまわりに「真理はあなたがたを自由にする」とギリシャ語で刻まれており、コンパスは、聖公会の世界中への広がりを思い起こさせます。一番上のマイターは、コミュニオンの教会の核心にある主教制と使徒職の職務を強調しています。
コンパス・ローズは、聖公会の教会の家族によって広く用いられており、全聖公会事務局のロゴにもなっています。そして、コミュニオンの一致のシンボルとして用いられています。
原著者:ジェームズ・ローゼンターク
「アングリカン・ワールド」
アングリカン・コミュニオン・コミュニケーション・ディレクター
ロンドン, イギリス
翻訳者:相原太郎
E-mail: taro-aihara@nifty.com