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日本における統一協会の実態と韓国キリスト教界
宣教主事 司祭 木村 直樹
昨年秋に、霊感商法や強引な勧誘などで社会的な問題を引き起こしている世界基督教統一神霊協会(以下・統一協会)に対して、キリスト教界が一致して対応するため、カトリック教会、日本キリスト教団、日本福音ルーテル教会、日本バプテスト連盟、在日大韓基督教会、そして日本聖公会が、統一協会問題キリスト教連絡会を結成しました。
そして統一協会問題キリスト教連絡会は、大学新入生を、統一協会による勧誘から守るために、協働で、『これが素顔!』というパンフレットを作成しました。この冊子は、各教会、各学校あて、この『管区事務所だより』に同封して配布されます。
ところで霊感商法などで集めた資金は、統一協会の本部のある韓国に送られます。彼らの教義によれば、日本は罪ある国家であり、再臨のメシアである文鮮明が誕生した韓国に送金するのは当然だとされています。統一協会問題に関してだけ言えば、日本は被害国となっているのです。
統一協会の日本における実態や、被害の現状を韓国のキリスト教界に訴えるために、1月27日から30日まで、統一協会問題キリスト教連絡会が韓国を訪問しました。
現在、韓国のキリスト教は成長の一途をたどり、プロテスタントだけで、信徒が1200万人と言われています。この中の代表的な教派であるイエス教長老会(統合派)を最初に訪問しました。わたしたちの訪問に対して、同教会の異端対策委員会が対応してくれ、さらに統一協会を最近脱会した牧師を紹介されました。
日本における被害の現実(昨年だけでも霊感商法でお金を騙し取られたと弁護士に訴えた人たちの被害額は25億円)を伝えると、列席した韓国側の人々は、非常に驚いていました。そして協力できることがあるなら一致して、この問題に当たってゆきたいとの発言がありました。
またもう一つの有力なプロテスタントであるキリスト教長老会では、総幹事と懇談することができました。総幹事は、日本が教派を超えて統一協会問題に対応しているならば、韓国側もエキュメニカルな団体であるNCC(キリスト教協議会)を窓口にして、この問題を取り扱う必要があると述べておられました。
わたしは、統一協会問題で韓国を訪問したのは初めてですが、以前にこの問題で訪韓した参加者の方々は、韓国側の積極的な対応に、強く心を動かされていました。韓国のプロテスタント人口は、1200万人。これに対して韓国の統一協会は、2万人と言われています。韓国のキリスト教界にとって、統一協会問題は、弱小の異端問題としてしか考えられないというのが、以前の反応だったようです。なぜなら統一協会は、韓国では、霊感商法などの犯罪行為をしていないからです。また成長期にある韓国のキリスト教は、ある面に混乱しているところもあって、現在も自称メシアが10名以上いるとのことで、文鮮明もその内の一人に過ぎないということもあります。
プロテスタントに続いて、韓国のカトリック教会を訪問し、中央協議会の事務総長と会見することができました。カトリック教会では、統一協会を批判する本も出版しており、この会見の席では、統一協会を研究している研究員の方も同席されました。日本の被害の現状を伝えると、そのような情報をもっと伝えてもらいたいと、カトリックも非常に積極的に対応してくれました。
なお、大韓聖公会も訪問しましたが、教務院長の都合で、会うことができなかったのは、まことに残念でした。
韓国の統一協会は、現在、名称変更を行なっているようで、ソウルの統一協会のある会堂を訪ねると看板は、統一協会ではなく「世界平和統一家庭連合」とあり、会堂は「家庭堂」と名付けられていました。さらに「家庭党」なる政党を作って、政治の世界に進出する計画もあるとのことです。
その家庭堂の中には、日本語の本がたくさんありました。合同結婚式で、韓国人と結婚し、韓国に住んでいる日本人女性は6000人と言われています。韓国の統一協会員が全体で2万人ですから、3分の1が日本人女性だということになります。
これらの多くの人たちが、日本で親との連絡や交流を絶ち切り、お互いが支え合いながら、韓国で生活していることに複雑な感慨を覚えました。
彼らの救出や家族との連絡などについても、韓国のキリスト教界の協力を得られれば、大きく進展してゆくことでしょう。