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宇野徹首座主教に聞く−
「聖公会首座主教会議」に出席して
2003年6月4日北関東教区教務所にて
(聞き手:管区広報主査会)
聖公会の「首座主教会議」がブラジルのグラマードで5月19日から26日まで開催され、日本聖公会からは宇野首座主教が出席された。今回の会議は、ローワン・ウィリアムズ師がカンタベリー大主教として初めての首座主教会議で、世界の聖公会38管区から33管区の主教が出席した。この会議の模様、意義と成果、そして日本聖公会のこれからについて、宇野首座主教にお話しいただいた。
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(ブラジルあれこれ) | |
――首座主教会議が行われたのは、ブラジルのどのあたりですか。 | |
宇野主教: | サンパウロより1時間半ほど飛行機で、そこから1時間半ほど自動車で行ったグラマードという南の方の避暑地です。サンパウロは今、秋で、気温が14.5度で少し寒く、グラマードはそれよりまだ南ですが、過ごし易い気候でした。 |
――参加されたのは? | |
宇野主教: | 首座主教はカンタベリー大主教を入れて38名ですが、そのうち33名が出席しました。香港の大主教がSARSで来られず、北インドと南インド、それにもう2人が来られず、5人が欠席でした。 |
――会議がブラジルで行われたのには、何か理由があったのですか? | |
宇野主教: | ブラジルの首座主教がこの会議の後、すぐに開かれるブラジル聖公会総会で定年退職されることもあって、ブラジルで開くことを提案なさったのではないかと思います。 |
――ブラジルはカトリックが殆んどですよね。聖公会はどれくらいの勢力ですか。 | |
宇野主教: | そんなに大きな勢力ではないと思いますが、今ブラジル聖公会には変化が起こっています。といいますのは、他教派の聖職が聖公会の聖職に多数転回してきています。サンパウロ教区にもカトリックの神父やプロテスタントの牧師が聖公会に転回し、活躍しています。私が感じるのは、聖公会;Anglican Chrchというのは、非常にブロードであるということ。聖公会はプロテスタント的な要素もカトリック的な要素も含んでいるという点で、許容力があるのだと思います。また、聖公会は主教制を採っておりカトリックに近いので、そういう点でより入りやすいのではないかという気がします。 |
――今の聖職のお話ですが、信徒も聖職と一緒に移ることがありますか? | |
宇野主教: | 信徒はどうなっているか聞いてせん。首座主教会議の後、サンパウロ教区のある牧師を訪ねたのですが、その牧師はプロテスタントの教派から来た人で、薬物依存症の人たちのケアに関わっておられました。それにもう一つのことは、今、ブラジル聖公会には約40名の女性司祭がいます。 ブラジル聖公会では、基本的には他に仕事を持ちながら、司祭をやっています。殆どの教会が経済的に自立出来ないのです。例えば、サンパウロの聖ヨハネ教会は自立教会で、専従の牧師を雇うことが出来るのです。その聖ヨハネ教会は今、日本語会衆のために岡野利治主教さんを招聴し、ボルトガル語会衆のためにカトリック教会から転回してきた司祭を招聴しています。サンパウロ教区の伊東宏主教は主教になられる前は商工会議所の事務局長をしながら、サンパウロの聖十字教会の牧師をしておられました。聞くところによりますと、教会から報酬をいただかないで牧師の働きをしておられたようです。 |
(−致と多様性) | |
――このたびの首座主教会議の全体的な印象と感想は? | |
宇野主教: | いくつかの問題があったのですが、その一つは神学教育です。前回の首座主教会議で、聖公会の神学を考える「聖公会の神学教育タスク・グループ」が設置されました。プロテスタントは非常に違いを強調いたしますが、いわゆるアングリカンの神学的立場は、多様性の一致ということで、何が一致できるかということを大事にしていくのだと思います。聖公会は伝承、聖書、理性を基本にし、祈梼書を用いながら礼拝をすることが聖公会の伝統的なあり方です。しかし、祈梼書を用いない礼拝もあるわけです。例えば、サンバウロ教区の主教座聖堂の夜の礼拝に行きましたら、全く祈梼書に則らないで、若者たちを中心にした礼拝がなされていました。 |
――プロテスタントの教会のようなやり方ですか? | |
宇野主教: | そうですね。カリスマ的な感じの礼拝でした。朝は英語の礼拝で、祈梼書に従った礼拝がなされていると聞いています。日本聖公会の教会は殆ど現行祈梼書に則った礼拝をなされていますが、アメリカ聖公会、英国聖公会ではいくつかの祈梼書があって、その中から選択することが出来るのだと聞いております。ブラジルではそれをもっと超えて祈梼書に則らないカリスマ的な礼拝をやっている教会もあるという状況です。特に、若者に対する礼拝は決められた祈梼書による礼拝が少しずつ馴染まなくなって来ているのかなあという感じがします。 |
欧米の神学や欧米で行われてきた礼拝、慣習を踏襲する形で私たちは礼拝をなし、物事を捉えているのではないかというように思います。アフリカでは礼拝の中での賛美を現地の音楽や踊りを用いています。カンタベリー大主教の就任式にアフリカの踊りが取り入れられていました。従って、一つのパターンで治まらなくなってきているし、その点において神学的なことがしっかりとしていかなくてはならないように思います。私自身、欧米の神学を「良し」として従ってきたように思います。もっと日本の人たちにフィット出来るようなもの、日本独自なものを創造していかなけれぱならないように思います。 | |
〈同性愛と工イズの問題〉 | |
――今、聖公会は神学的に揺れていますね。首座主教会議の牧会書簡の中にもありましたが、例えば性の問題。これをいくら多様といってもどう同意できるのでしょうか。 | |
宇野主教: | 会議でも出ましたが、この問題についてもう20年も討議して来て、もういい加減にして欲しいという意見もありました。もうこの問題は解決しているのではないか、同性愛は認められないのだと主張するアフリカの主教もいるわけです。しかし、欧米の教会には、現実に同性愛者の人たちが来ているわけです。そして、現在同性愛者の祝福、結婚についてどうするのかということが問題になっており、神学的な問題となっているのです。神学というのは、聖書にはこう書いてある、ああ書いてある。だからこうしなければならないというだけでは済まされないことがあります。神学というのは、現実に起こっている事柄に対して神がそれをどう受け止められ、考えておられるかということを謙虚に考えることではないかと思います。現実に起こっていることから離れてああではない、こうではないと議論することは、聖書を律法主義的に解釈する危険性があるように思います。イエス様が一番嫌われたのは律法主義であると思います。イエス様はこのことに対してどう考え、なされただろうかということを考えることが神学ではないかと思います。同性愛について言えば、同性愛の人たちは同性愛になろうと思って同性愛になっているのではなくて、そういうふうに創られている神の創造の業であると考えることが出来るのではないでしょうか。その同性愛の人たちを「お前は間違いだ」「お前は罪深い者だ」と言って、排除することが出来るのでしょうか。このようなあり方に最も心を痛められていたのがイエス様であったように思います。 |
イスラム教では、旧約聖書のレビ記などを律法として用いているわけですから、同性愛は認められないということになります。イスラム教の強い影響のあるアフリカなどでは、同性愛はどうしても受け入れられないということを理解することが出来ます。しかし、ランベス会議の時に、同性愛=エイズという認識しかなかった主教たちもいました。 | |
今回の首座主教会議では、エイズは神の裁きではなくて、エイズという病の中に神の愛のみ業を見出し、その業に参与していくこと、エイズで苦しんでいる人たちの苦しみを共に担っていくことの大切さを討議されていました。 | |
ローワン・ウイリアムズ大主教は同性愛の理解者であると思うのですが、神学的にまだ確立していないと慎重な姿勢を示しておられました。聖書に基づき、それをどう理解するかが神学的な問題であります。 | |
それからエイズの問題ですが、アフリカでは大変な問題となっています。子供にもどんどん広がっていって、エイズについての教育をしていくためにすごく力を入れています。今回、日本聖公会も重債務国開発協力資金の中から南アフリカのハイベルド教区のエイズ教育活動に対して1年1万ドルを5年間献げることにしました。このことを南アフリカの首座主教が大変喜んでくださり、牧会書簡の中に記すべきではないかと発言されていましたし、ACCのジョン・ピーターソンもすごく評価してくれていました。 | |
――エイズの問題なのですが、世界的に見た場合にアフリカでは本当に大変になっていますね。人口の60%<らい。日本国内では、アフリカに比べれば数は少ないのですが、やはり増えています。そういう時に、教会としては、エイズの人たちに教会に来てもいいのだよということは言えると思いますが、こちらから入っていかないと、そういう人たちは絶対来ないと思います。白書によると、今の段階では、一番問題になっているのはインド、中国、その次が日本になっているのです。教会として何らかの働きをこちらからしていかないといけないと思うのですが…。 | |
宇野主教: | ええ、共に生きるという積極的な姿勢でエイズの問題をもっと考えていかなければならないと思います。日本はエイズについては行政がきちんと対応しているから増えるなんて考えられないと思ってはならないのですね。アフリカでは人口の50%にまでなっている地域もあるという大変な状況です。私たちが気付いていないだけであって、エイズの問題を日本の教会がどう取り組んでいくか、皆で考えていかなければならないと思います。牧会書簡に書いてありましたが、コンゴなどの国は民族の争い、貧困、紛争等で民衆が疲れきっています。そういう中で教会が何に希望を抱いて生きていくのかということを本当に宣教の使命として捉えています。そして、アフリカの信徒は増えているのです。非常に状況の悪い中で信徒が増えているのです。日本は今、大変だ、大変だと言っていても、アフリカなどと比べればそんなに大変なことではないと言えましょう。状況が悪いから宣教が出来ないのではなくて、日本の場合、経済的にも、知識的にも色々なことが十分に満たされているところで、教会は宣教をどう考えているのかということが問われているのだと思います。 |
〈日本聖公会が担うべきものは〉 | |
――首座主教会議によって顔と顔が見える関係を築くことはとても大切ですね。 | |
宇野主教: | そうです。今度の首座主教会議においても顔と顔を合わせることによって互いに理解し合えますし、紛争や貧困の中にあるコンゴの主教さんがどうしてこんなに明るく、素敵なんだろうと思わされました。 |
――アフリカの主教さんたちは、欧米で勉強された方が多いのですか? | |
宇野主教: | 多いのでしょうね。例えば、USPGだとか、CMSといった伝道団体がサボートして色々な支援、教育に関わっております。アフリカには経済力がありませんので。 |
――そうだとすれば、日本は一応日本の中で神学教育が成り立っているのに、どうしてまだ日本的なものが作れないというのか、いつまでたっても、英国の教会に寄りかかって、それが素晴らしいというふうになっていく。アフリカなどと、その違いというのは何でしょうね。 | |
宇野主教: |
私にははっきり分かりませんが、例えば、竹田主教さんを中心にして日韓神学会議が開かれています。北東アジアという状況の中で宣教というものをどう捉え、考えていくのか。それは大事なことだと思います。欧米の神学をコピーするのではなくて、日本なり、北東アジアという状況の中でわれわれは今、何を問題としなければならないのか、何を考えなければならないのかという視点に立って神学をしなければならないように思います。 |
私が一つ考えていることは、少子化が進んでいる日本は、将来ますます外国人労働者に依存しなければならない状況になってくることが予想されます。日本の教会がこの在日外国人のためにどう関わり、対応していくかということを問題にしなければならないように思います。また、世界や北東アジア、日本の政治的、経済的、社会的状況の中で、教会が何をしなければならないのか、どのような使命を与えられているのかを真剣に考えなければならないと思います。 | |
また、教会の周辺の地域にある高齢者の問題、育児の問題、乳幼児の虐待の問題等を教会の問題として受け止めていくことの大切さを感じます。これらの問題が単に行政の問題として考えるのではなくて、教会の問題として、信仰の問題として、神から教会に委ねられた使命として考える必要があるように思います。多くの教会は地域に開かれた教会を目指しながら、地域の問題に目が開かれていないように思いますし、具体的なプログラムを見出すことが出来ていないのではないでしょうか。また、これらの問題を教会の力だけでやらねばならないと考えるがゆえに、何も出来ないといって放棄してしまわざるを得ない状況にあることも考えられます。しかし、ある時には行政の力を借りることも、行政を動かすことも大切なことであると思います。 | |
――ブラジルで首座主教会議があり、それから今度、ランベス会議が南アフリカで開かれますね?いずれはアジアの地でもランベス会議が開かれることになりませんか。 | |
宇野主教: | そうですね。イギリスだけではなくて、他の国においても開かれるようになるのではないかと思います。 |
――英語圏と非英語圏というのがありますが、本当にそういう国際的な会議では、非英語圏というのは弱いというか、何かやっぱり差別されていますよね。 | |
宇野主教: | 首座主教会議の間、毎日、ローワン・ウイリアムズの聖書研究があったのですが、グループの司会者であるアイルランドのイームズ主教さんは最初に聖書研究の内容をまとめてくれ、ゆっくりと話してくれていました。そして、必ず私に発言する機会を与えてくれました。本当に素晴らしい人でした。私も安心してグループに参加できました。 |
――言葉の障壁はありますけれど、いずれ、日本でもそういう聖公会の世界規模の重要な会議があることも、首座主教のご構想のうちに入れていただきたいと思います。今日はたくさんのお話をうかがわせていただきました。どうもありがとうございました。 | |
(聞き手・管区広報主査会 まとめ・竹田和子、鈴木 一) |
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日本聖公会婦人会の今後へ
京都教区報「つのぷえ」
(第529号・2003年4月20日発行)
日本聖公会婦人会に一昨年検討委員会が立てられました。京都など4教区から6人の委員が集まって、婦人会の現状把握と存在目的・意義・活動の再確認、そしてこれらを踏まえて感謝箱と被献日献金の再考作業をしています。
今回、この委員会の呼びかけで、全国11教区から婦人会長方2名ずつに集まっていただきました。日本聖公会婦人会の役員方も交え、2日間ゆっくりとした中で各教区婦人会内に抱える問題と展望を、お役目がらと、個人としての両面から語っていただこうとの目論みです。
頑張っているところもありますが、幾つかの教区で、教会婦人会が無くなったり、教区婦人会から抜ける婦人会が増えて、役員の担い手が揃わなくなり、教区婦人会の活動や存続の先行きが心配されています。
これらの根底には、教会を取り巻く社会環境の変化が婦人会の活動年齢層と、それに続く若い人たちの減少や男女協働の増加、婦人会にとらわれない自発的グループの活発化などを促し、教会の婦人数に比べて婦人会存在意義の範祷が狭められつつあることが原因としてあるようです。教区や教区婦人会の経済的苦しさも訴えられました。
しかし我々の抱えている問題はこれではない。婦人会の目的「一致して神の宣教への参与」を具体的にするための目標を明確にし、目標との密接な係わりを保つための情報伝達の工夫と努力が急務である。目標の明確化と密接化は、若い人たちも含めて、婦人たち一人一人に切実な祈りを生み、グループとしての婦人会にも活力が戻るでしょう、との意見も明快に出されました。
検討委員会からは、先達の祈りが百年余の歴史を育み、現在につながれた感謝箱献金運動を見直し、その活性化を日本聖公会婦人会目的達成の中心に据えて、母性を持つ婦人だからこそ可能な働きの展開をと提言しました。
会の終わりには、管区「ジェンダー委員会(正義と平和委員会)」のアピールを受け、またイラク 戦争反対声明文の安保理提出を全員一致で決めました。 (検討委員会 尾松澄代)
GFS総会に出席して
北海道教区報『北海之光』
(第525号・2003年4月20日発行)
2003年2月9日(日)、日本聖公会GFS総会が京都の教区センターで行われました。前日の 午後6時から受付が始まり、7時から10時まで総会準備を行い、翌日午前7時礼拝、朝食8時、9時から午後4時まで総会と、初めて支部長代理として参加した私にとって、この過密なスケジュールには、驚かされました。
ご高齢な方々が多い中、毎年このスケジュールをこなしているのかと思うと、あらためてGFSに対する皆さんの思いの強さを感じました。
各教区の担当部門の報告、各教区ブランチの活動報告、今年決めなければならない諸々のこと等、順に話し合いが進んでいきます。
時々脱線したり、元に戻ったりと、時間だけが過ぎていくのもご愛敬というものでしょうか?会長や議長、他の役員の方々の涙ぐましい努力をも垣間見た思いがしました。
話し合いの中で今年開催されるはずだったGFSフイリビン・プロジェクトが延期という結果になり、「今年も参加する、今年は行きたい。」と、思っていた方々には、残念なお知らせとなってし まいました。また、財政難から、今後の総会出席にかかる費用をどのように捻出するかを話し合いました。事業部の活性化、各教区も互いに努力し、この財政難を乗り切りたいとの意見も出まし た。
新しく横浜教区にGFSの支部が出来たことや、より良い活動をするために財務規定を作成することなど前向きな話し合いも行われました。
私には子どもが二人います。二人とも男の子です。私の活動に付き合うことが多く、男子ですが、楽しんでいる姿も見ます。
これから、若い女`性が活動していく間には家族皆でGFSの活動に参加して行けたら、どんなにステキなことでしよう。世界につながっているGFS、暗い時代を乗り越え、未来に希望を持って活動していきたいものです。 (札幌聖ミカエル教会 今川あかね)
東北大地震の被害について
2003年5月27日
日本聖公会東北教区教務所
26日夕方に発生した地震について、27日午前11時現在分かっている教区内教会の被害状況をお知らせいたします。
〔釜石神愛教会〕
・地震発生時はまだ保育中だったが、全員無事避難。
・礼拝堂天井、一部落下。
・保育園(内部)一部崩壊(保育室使用不可、保育は通常通り)
・司祭館2階べランダ窓ガラス全部(4枚)落下
・エアコン1台落下
・給食室、保育室、司祭館散乱
・信徒、園児の家屋についても、ほぼ同様のようです。(人的被害はありません。)
〔室根聖ナタナエル教会〕
・現在、連絡が取れず、被害については不明。分かり次第報告します。
〔盛岡聖公会〕
・幼稚園及び2階会館の建物の歪みが拡大。保育は通常通り行われているが、専門の診断を
要する状態。
○その他の教会については物が倒れる程度で、特に大きな被害はない模様です。
以 上