今月の特集

  1. 第51(定期)総会後常議員会報告
  2. 総理大臣へ“要望書”を提出
  3. 新刊紹介
    草津のタルピッ〈月あかり〉 ―在日韓国朝鮮人ハンセン病者の証言―
  4. 信徒使徒職のためのリーダーシップ・トレーニング に参加して
  5. 夏の研修行事…さまざま――


第51(定期)総会後常議員会報告  <TOP>
 日時:1999年5月25日(火)11時〜15時
 場所:日本聖公会センター(牛込聖バルナバ教会)

 1986年の第39(定期)総会で、定期総会開催が“3年に1回”から“2年に1回”に変更され、“常議員会は、定期総会のない年に1回”開催されることとなった。この時から、常議員会の権限は “予算の補正、総会で選出した委員等の補充その他緊急かつ軽微な事項について、総会を代行する”という、限られたものとなった。組織の規模も小さくなり、『各教区主教、各教区の聖職・信徒常議員各1名の合計33名』(1986年以前)から、『首座主教、教区主教より3名、各教区から聖職または信徒常議員各1名の計15名』(1987年以降)の規模に改められた。また、33名の常議員会のときには各委員会の委員長のほぼ全員が報告者として出席していたが、現法規下では、総主事の出席について定めがある他は、“議長は必要と認めた者に議案その他の事項について質問に答え、かつ発言させるため、常議員会に出席することを求めることができる”…という程度となり、特別に委員長の出席が求められる場合を除いては担当主事が委員長に代わって報告することとなった。報告内容も、総会報告の半分(前半部分)というそれまでの考え方を改めて、中間報告として極めて簡単な報告となるよう改められた。
 というわけで、最近の常議員会では報告はおよそ2時間前後、議案は緊急かつ軽微な事項についてのみであるので審議の時間は余りかからず、しかしこの常議員会出席のため各常議員は1日あるいは2日がかりで出席していただくわけで、この時をより有効にするため、この数回の常議員会では、特にテーマを絞って、勉強する機会を設けることがあった。
 1991年の常議員会では首座主教報告の一環として、加盟協議会・団体(ACC、WCC、NCC、日本キリスト教連合会、同宗連)についての報告があり、1993年には「部落差別問題研修会」(これは総会の決議によって開催)、また、1995年の常議員会では、その年の1月に起きた阪神淡路大震災の支援活動について報告を受けた。
 そのような趣旨とは異なるが、今常議員会は、首座主教の発案で、前総会で設けられた管区機構検討委員会、およびことに財政的に困難に陥っている年金問題について焦点を当て、これらの委員会の報告をよく聞き、次総会の審議に備えることとなった。

  1. 報告
    今常議員会報告は、主教会報告、総主事報告を含めて24の報告があり、当初の予定では、一報告平均5分として120分(約2時間)かかる見込みであったが、以下の2つの委員会報告を除いて実際に要した時間はおよそその半分であった。
    1. 管区機構検討委員会(報告者:西村逸郎委員長) 次号『管区事務所だより』に委員長から中間報告をする予定です。
    2. 年金委員会(報告者:水澤郁夫委員長) 報告の大略を以下に記します。
       年金財政が危機に瀕していることは、この数年来の総会で報告しているとおりである。どのように危機に瀕しているか、ということを年金信託の幹事銀行でである三菱信託銀行に数字で示していただいた。これらの資料をもとに現状をご理解いただき、次期総会の審議の材料としていただきたい。
       日本聖公会年金制度が必要とする責任準備金(現在の受給者が最後まで受給できて、加入者にはこれまでの掛金に利息をつけて一時金として返済できるだけの金額)は、およそ9億5千万円である(受給者分4億9千5百万円、加入者分4億5千5百万円)。
       では、日本聖公会の現在の年金資産はいくらかというと、3億5千万円弱であり、受給者に対する責任準備金だけでも1億5千万円ほど不足している。
      日本聖公会の年金の特徴は、1)本人が存命中ずっと支給される終身年金であること、さらに 2)本人が亡くなった後遺族にまたその半額が終身支給される連生年金であるということである。日本では、この制度は数えるほどしかない珍しい制度である。かつて、オランダの船員の年金が同じ制度をとっていたが、崩壊したという。このような手厚い年金制度の維持は、余命年数が延びている今日、ますます困難になっている。さらに、昨今の運用環境の悪化があげられる。かつて2万円年金を5万円に引き上げるために予定利回りを 4.5%から、6.5%に引き上げたが、この数年の実質利回りは、1%台となってしまった。これだけでも1年間で何千万円かの差(利差損)が出てしまう計算となる。
       これに対応する大きな選択肢は2つある。
      (1) 年金制度に終止符を打つ。(この場合、残った資産を分配することになろうが、受給者に手厚くすることは当然であろう。)
      (2) 年金制度を何とか存続させる。(これが総会の大方の意思ではなかろうか。)
       制度を維持するためには、 1)掛金を増やす 2)支給額を減らす 3)掛金を増やし、かつ支給額を減らす( 1)、2)の折衷)の3つの方法しかない。  2)の支給額を減らす方法としては、(ア)支給月額を減額する(イ)受給期間を短くする(支給年齢を70歳〈現行〉から75歳に引き上げる)(ウ)遺族年金の支給を当該配偶者が65歳になったときからとする、等々の制限をつける…ことが考えられよう。(このシミュレーションを三菱信託銀行に示していただいた。
       これらの選択にあたっても、大方は急激な変化は望まないと思う。どの方法を選択するにしてもそれぞれの理由があり、どの方法を選ぶのがベストであるといい切ることはできない。総会が判断することである。
       銀行には、決算報告を受理する次の年金委員会(9月開催予定)で、さらに制度改善のための具体的提案をしていただくようお願いしてある。
  2. 決議
    ・ 委員の辞任・選任の承認
    ・ 儀礼決議
    ・ 「アジア太平洋平和・和解」資金規定(ガイドライン)の承認

以上


◎ 常議員会決議録は、6月20日付発行いたしました。総会議員・代議員、各委員長には直接送付、
それ以外の各教役者および各教会宛には教区事務所・教務所を経由してお届けする予定です。
(総務主事 阪田隆一)<TOP>

総理大臣へ“要望書”を提出

 新ガイドライン関連法案、日の丸・君が代の法制化、通信傍受法案……国民の論議を呼んでやまないうちに、これらの法案が次々と国会に上提されている。キリスト教の教派を越えての反対運動が展開されている中で、日本聖公会では、「日の丸・君が代」の法制化に対しては、社会正義と平和に関わる各委員会の委員長連名で総理大臣と文部大臣宛に、また「新ガイドライン関連法案」については首座主教が総理大臣宛に要望書を提出している。
以下、その全文を掲載する。宗教者からの真摯な発言を為政者どのように受け止めるのだろうか ――。


要 望書(国旗・国家の法制化について)

内閣総理大臣 小渕惠三 殿
文部大臣 有馬朗人 殿

1999年4月7日

                   宗教法人「日本聖公会」          
                   総主事 輿 石 勇            
                   天皇制・靖国問題委員会委員長 佐治 孝典
                   学生青年運動協力委員会委員長 野村 潔 
                   「正義と平和」委員会委員長  柴本 孝夫
                   日韓協働委員会委員長     宮嶋 眞 

 去る2月28日、広島の県立高校の校長が、卒業式を前日に控えて自殺するという痛ましい事件が起こりました。これは文部省の強引な学習指導要綱に沿って、県教委が「日の丸・君が代」の掲揚・斉唱を学校長に強権的に求める異例の職務命令を出したために起こった悲劇的な出来事であったと考えます。
元来、憲法にも法律にも規定されていない「日の丸・君が代」を、文部省の一片の学習指導要領で、国家・国旗として社会や教育の現場で扱うよう強要し続けてきたこと自体が国家権力による不当な干渉であり、違憲行為にほかなりません。
 「日の丸」は、幕末に日本船の国籍識別旗として慣習化されたものであり、「君が代」は、明治の「大日本帝国」づくりの中で、「君」即ち天皇の統治する「御代」が永遠に続き、栄えていくことを願う歌として普及化されたものであります。しかも、つい半世紀前まで「日の丸」は、日本の植民地として過酷な支配を強いられた朝鮮・台湾において、また日本軍に踏みにじられた中国を始めとする東南アジアにおいて、征服・侵略の旗として至るところではためいていたものですし、アジアの民衆にとって「日の丸」は、「流血と白骨」の象徴として今日も根強く印象づけられています。「君が代」についても、敗戦前までの侵略的天皇制国家においてこそ、それに相応しい歌であったかもしれませんが、敗戦後に日本国民が選びとった新憲法では、天皇は主権者・元首としての地位から、単なる日本国及び日本国民統合の象徴となったのであり、「君が代」の歌詞は、今日の日本の国を代表する歌としては明らかに不適切であり、時代錯誤といえるでしょう。
 したがって、「日の丸・君が代」は、1945年の敗戦時において、当然廃止されるべきものでありましたが、依然として存続しつづけ、最近になっては、文部省をはじめとする国の機関が、国民の合意もなしにいよいよ強引に国旗・国歌として問答無用に強制しようとしています。このことは、日本の最高の国是である国民主権・基本的人権、民主主義の理念を踏みにじる暴挙であります。日本国憲法によれば、主権は国民にあり、日本国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利(憲法第97条)であります。この原則に矛盾し、相反する国家の恣意的な法律・規則・要領等は、憲法第98条によって「効力を有しない」ことは明白であり、このことをしっかりと認識し、遵守することは文部省をはじめ国の機関の最高の義務(憲法第99条)であると考えます。
 以上のことから、政府が「日の丸・君が代」を、国旗・国歌として十分の論議も合意もなく法制化しようとすることは、日本国憲法の理念に対する意図的な挑戦であり、平和と人権と民主を大切な信念とするキリスト者として、到底容認できません。速やかに法制化の手続きを撤回するよう強く要望します。


要 望書(日米安全保障条約ガイドラインについて)

1999年5月25日

内閣総理大臣 小渕惠三 殿

宗教法人日本聖公会 首座主教 竹田 眞

 昨日、日米安全保障条約ガイドラインが衆議院本会議で可決され成立いたしましたことは、イエス・キリストを平和の君として仰ぐキリスト教会の一員といたしまして誠に遺憾に存じます。今世紀、世界は二度の大戦を経験し戦争がもたらす悲惨を私たち自身が体験いたしました。それにもかかわらず、殊に、日本の戦争責任の清算も済んでいない現在この法案が提出・可決されたことはまことに残念であります。
 今世紀の二度の世界戦争は、富や権力の不正な所有構造とそれを固定化しようとする邪な欲望に起因していることは申すまでもありません。遅れて近代化した日本はこの不正な所有構造の中で、新興国の権利を武力をもって主張することを余儀なくされ、今から見れば無謀とも言える戦争に突入したのでありました。今回成立いたしましたガイドラインが暗黙に前提している仮想敵は、日本の侵略のせいもあって、近代化が遅れた諸国のように見受けられます。殊に第二次大戦の被害を集中的に受けた、内外の人々の本ガイドラインに対する反応を柔軟に受け止め、近隣諸国を仮想敵として武装を強化することによって世界の不正な所有構造を擁護するのではなく、日本のかつての新興国としての経験からも、近代化の途上にあり、それゆえに国内的な富の所有の不公正に対する不満が爆発するかも知れない諸国を、同じ小さな地球に住む隣人として処遇するよう、国家指導者にお願いしたいと思います。
 ガイドラインは成立いたしましたが、紀元二千年を迎えるにあたり、21世紀を平和の世紀とするため、貴職が言明しておられますように、「太陽政策」を積極的に支持され、近隣諸国の民を友人としてその困難を共に分かち合う政策を進められますようお願いし、世界の平和に寄与されますことを期待するものであります。

 

新刊紹介

草津のタルピッ〈月あかり〉 ―在日韓国朝鮮人ハンセン病者の証言―

 本書は、日本聖公会日韓協働委員会のメンバー9人による、草津楽生園に在園する在日韓国朝鮮人に面接しての聞き書き集で、完成までに3年の労力を要した。2時間テープ1本に1人の証言をインタビューしながらまとめたもの。日本人夫妻1組を含む9編(12人)の聞き取りからなる。
 草津楽生園は1932年(昭和7年)、国立療養所粟生楽生園として開所、ピーク時(1944年)には1,335名が入所したが、特効薬の発明から患者は減り、1998年8月1日現在全療養者345名(男182、女163)、その平均年齢は74.8歳である。うち在日韓国朝鮮人は15名(男12、女3)という。
 ライ予防法が撤廃されたものの、ハンセン氏病に対する偏見はなくなったわけではない。本書はハンセン病と、゛在日゛という二重の苦難の中を生き抜いてきた人達の姿を、聞き書きの手法を生かしてありのままに描いている。「歴史の谷間に置かれた方が語るHistoryを聞き取っていただきたい」と、編者である宮嶋眞司祭(日本聖公会日韓協働委員会委員長)は記している。
 聞き書きに応じた11人の、さりげない、語り口の奥には言いつくせない悲しみが横たわっていることを本書は伝えてくれる。
 1981年、年金法の改正によって国籍事項が撤廃されて、ようやく外国人にも年金が支給されるようになったこと。英国伝道協会(SPG)の自給伝道師として来日し、草津に聖バルナバ・ホームを開設して病者の療養に献身したコンウォール・リー女史のことなどを記して、聞き書き集を奥行きのあるものにしている。――『草津のタルピッ』の「タルピッ」とは朝鮮語の「月あかり」という意味である。月あかりの浅間山を目にしながら、冷え冷えとした園内の温泉浴場に向かう時、この静かな広大な園内に、沢山の波乱を越えて来た人生の息吹が潜んでいるのをつくづくと感じさせられる……(菊池邦杳)、と「まえがき」に記されているが、日韓協働委員会諸氏の手になる、ねんごろなこの聞き取り集は、各教会内での読書会のテキストに好適であると思う。(広報主事 鈴木 一)

▽ 草津のタルピッ〈月あかり〉 四六判252p.口絵4p. 聖公会出版 1,800円+税

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信徒使徒職のためのリーダーシップ・トレーニング に参加して

 「宣教」型の教会へ飛躍するためには、聖職者と共に、信徒もまた教会の伝道の宣教の務めを担う者、すなわち使徒職に与る者であることを自覚する必要があります。従来の教会生活で、あるいは眠ったままになっている使徒職を、ファシリテーター(引き出し役)の助言・援助のもとに、自分で再発見し発掘していくためのトレーニングを重ねることが、このセミナーの目的でした。
 参加者は、北関東・東京・中部・京都・大阪・神戸・九州の各教区から24名、聖公会訓練計画委員会(委員長吉田雅人司祭)から8人。計32人の参加者が5つの小グループに分かれてワークショップに取り組みました。自分の主張と相互理解を織りまぜ積み重ねることによって、まず「教会の現実と課題」を絵にまとめ、次に「理想の教会」を共同制作画を通して表現することが課せられました。
 2泊3日のセミナーはきわめて密度が高く、あっという間の3日間でした。それぞれに得るところが多い出会いであったと思います。参加者各自が、それぞれの教会でファシリテーターになることの必要性を感じ取ったのではないでしょうか。セミナーの詳細な記録は後日委員会から報告されます。
 このセミナーは、時期をおいて同一参加者で2回実施することになっており、次回は来年1月の予定。聖書を主題にするとのことでした。 (広報主事 鈴木 一)

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夏の研修行事…さまざま

  • 第18回部落解放セミナー 「周縁から視る―展望を求めて―」
    期間  8月23日(月)〜25日(水)
    場所  千葉県人権啓発センター(印旛郡酒々井本佐倉352)
        千葉県部落解放同盟久留里支部下町集会所 (君津市久留里市場350−4)
    宿泊  佐倉第一ホテル(佐倉)、山徳旅館(久留里)
    プログラム
     23日 ビデオ「未来への伝言」
         支部の方々のお話
         講話1 鎌田行平さん(部落解放同盟千葉県連合会事務局長)
     24日 現地視察(酒々井)
         講話2 小林泰之さん(久留里支部支部長) 他3名
         現地視察(久留里) 交流会
     25日 発題 分かち合い、まとめ
    費用  16,000(宿泊、食事、資料代など)
    主催  日本聖公会部落差別問題委員会
    協力  部落差別同盟千葉県連合会
    協賛  日本聖公会横浜教区
    申込  日本聖公会管区事務所
    締切  8月16日(月)
    問い合わせ
     司祭 高田真(横浜教区・松戸聖パウロ教会)
      電話FAX 047(387)1550
     司祭 田光信幸(東京教区・神愛教会)
      電話 03(3802)2464 FAX03(3802)2434
  • 第44回日本聖公会保育者大会 創られた喜び、造り出す保育
    期間 7月21日(水)〜23日(金)
    会場 オークラホテル新潟(新潟市)
    主催 聖公会保育連盟
       第44回聖保新潟大会実行委員会
       実行委員長 司祭森田日出吉
  • 第5回日韓聖公会青年交流キャンプ 十字架と希望のしるし OKINAWA
    主題聖句
     平和を実現する人々は、幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる。(マタイ 5:9)
    日程  8月5日〜10日
    場所  沖縄県那覇市および愛楽園、ほか
    申込先 日本聖公会管区事務所
    締切  7月4日
    募集人数 20人(定員次第締切)
    費用  9万円
     (申込金4万円…郵便振替 00120−0−78536「日本聖公会」、必ず「日韓青年キャンプ申込金」とお書きください)
  • 日本聖公会プレ全国青年大会1999 みつめよういろいろな壁―歩もうキリストと共に―
    日程 8月13日(金)〜15日(日)
    会場 名古屋学生センター
       名古屋市昭和区宮東町260
        電話 052(781)0165 桙O52(781)4334
    参加費 25,000円(原則全日参加)
    資格 18歳以上(高校生不可)
    定員 40人
    締切 7月14日(定員次第締切)
    主催 プレ青年大会実行委員会
    事務局 司祭黒田裕 彦根聖愛教会 電話FAX0749(24)4914     <TOP>