緊急声明等

【原発と放射能に関する声明等】

▮ 川内原子力発電所の即時停止を求める要望書


首相 安倍晋三 殿
経済産業大臣 林 幹夫 殿
原子力防災担当大臣 丸川珠代 殿
鹿児島県知事 伊藤祐一郎 殿
九州電力 取締役社長 瓜生 道明 殿

川内原子力発電所の即時停止を求める要望書

九州の熊本を中心に2016年4月14日及び4月16日に震度7、震度6といった大地震が発生し、その後も強い余震が続いています。震源地も移動し続ける中、熊本県に隣接する鹿児島県にあり、今回の地震の震源となった活断層上に建設されているといわれる九州電力の川内原子力発電所は稼働を続けています。もし、福島第一原子力発電所のような事故が起きれば、九州全体が放射能に汚染されてしまうことは想像に難くありません。豊かな自然と住民のいのちを守るために、川内原子力発電所の稼働を即時停止する決断してください。

原子力防災担当相を兼務している丸川珠代環境相は16日に、政府の地震非常災害対策本部会議で、稼働中の九州電力川内原子力発電所について、「原子力規制委員会において停止させる必要はないと判断されている」と報告、強い余震があるたびに、原子力規制委員会は「安全上、問題ない」と繰り返しています。重大事故が起こってからでは取り返しがつきません。すべての自然と人間のいのちを守るという観点から、日本国内のすべての原発は廃炉にすべきだと考えますが、まずは予防的稼働を即時停止することを強く要望します。

私たち日本聖公会は、2012年5月の定期総会で、「原発のない世界を求めて」という声明を採択し、神様から与えられたすべてのいのちを脅かしてはならない、いのちを危険にさらす原発の存在を許容してきた歴史を省み、原発の撤廃と安全な代替エネルギーの開発に向けた政策の転換を提言しています。2011年3月の福島第一原子力発電所の爆発、放射能の拡散被害によって、多くの人々が住み慣れた故郷を奪われ、今も避難生活を余儀なくされている現実をご存じのはずです。また、今も大量の放射能物質が流出し、海や空や大地を汚染している現実をご承知のはずです。未だに処理技術が確立されていないため、除染され集積された放射能汚染物質が各地に山積みにされている現実をどう説明されますか。多くの人々に、このような危険を与えている原発の問題を知りながら、原発を稼働させて人々を危険にさらさなければならないのでしょうか。国内外で原発・放射能の危険性が指摘されているなかで、県民のいのちと生活を守る努力、「想定外」と再び言い訳をしないためにも、責任ある立場にあるみなさまの、予防的な稼働停止という英断を願うものであります。

2016年4月20日
日本聖公会 正義と平和委員会 委員長 主教 渋澤一郎
日本聖公会 原発と放射能に関する特別問題プロジェクト
運営委員長 司祭 相澤牧人

▮ 川内原子力発電所再稼働に対する抗議声明


内閣総理大臣 安倍晋三殿
九州電力株式会社 代表取締役社長 瓜生道明殿

川内原子力発電所再稼働に対する抗議声明

去る2015年8月11日、九州電力は川内原発1号機の原子炉を再稼働させました。安倍政権と各電力会社ではこの審査手続きを「ひな形」にして、今後の再稼働手続きを加速させ、なし崩し的に原発依存に戻す意向が透けて見えます。避難計画にも不備が指摘されており、各種世論調査では再稼働反対が賛成を大幅に上回っています。また、火山噴火予知連絡会は大規模噴火の可能性に関する原子力規制委員会の審査内容に大きな疑問を投げかけています。
高レベル放射性廃棄物の最終処分場も確保できておらず、更に、万一の際の責任を誰が負うかも明確に定まっていない状態です。
福島第一原発事故によって、未だに将来を見通せないまま11万人に及ぶ人々が避難生活を強いられています。また、福島県内各地で実施されている除染は効果が低く、線量の高い場所が点在する中、多くの人々は不安に向き合いながら様々な葛藤を抱えて日常を送っています。特に、将来の世代の人々の健康が長期に亘り蝕まれ続けていくのではないかと懸念されています。
また、日本政府は経済成長戦略から原発輸出を外さず、再稼働を容認することで原発の輸出を促進しようとしており、国内世論だけではなく国際社会からも大きな非難を浴びています。
人命より経済を優先させ、民意や疑問を置き去りにした見切り発車の再稼働は言語道断であり、東京電力福島第一原発の事故の被災者を初め、事故によって傷つけられた全てのいのちを冒瀆するものです。
政府が今取り組むべきエネルギー政策は、原発を主軸に戻すことではなく、再生可能エネルギーを主軸とした分散型エネルギー社会を築くことです。福島の事故での経験を、新しいエネルギー社会に向かう原動力にしていかなくてはいけません。
わたしたちはキリスト者として、神によって造られたいのちを脅かし、創造された自然を破壊し、与えられた平和な暮らしを奪う原子力発電所に反対し、再稼働のみならず、すべての原発の廃炉を強く求めます。                              

2015 年 8 月 14 日
日本聖公会 正義と平和委員会
委員長 主教 渋澤一郎
日本聖公会 原発と放射能に関する特別問題プロジェクト
運営委員長代行 司祭 越山 健蔵

 

▮ 川内原子力発電所再稼働に関する鹿児島県知事及び県議会による「地元同意」に対する抗議声明


鹿児島県知事伊藤祐一郎殿
鹿児島県議会議員各位

川内原子力発電所再稼働に関する鹿児島県知事及び県議会による「地元同意」に対する抗議声明

去る11月7日、鹿児島県議会は川内原子力発電所再稼働賛成の陳情を可決し、伊藤祐一郎知事も再稼働に同意を表明いたしました。私たちは、その報道を信じられない思いで聞きました。国内外で、これだけ原発・放射能の危険性が指摘されているなかで、県民のいのちと生活を守るべき代表者たちが、原発再稼働に同意するということは、経済優先、人命軽視の誹りを免れません。
皆さんは、2011年3月の福島第一原子力発電所の爆発、放射能の拡散被害によって、多くの人々が住み慣れた故郷を奪われ、今尚、避難生活を余儀なくされている現実が続いていることをご存じだと思います。また、今尚、大量の放射能物質が流出し、海や空や大地を汚染している現実をご承知だと思います。また、未だに処理技術が確立されていないため、除染され集積された放射能汚染物質が各地に山積みにされている現実をご承知だと思います。多くの人々に、このような危険を与えている原発の問題を知りながら、なぜ、今、原発を稼働させ、人々を危険にさらさなければならないのでしょうか。
しかも、鹿児島県のいちき串木野市はじめ周辺自治体では、再稼働反対・廃炉決議などもなされていると聞いています。更に、日本火山学会では、11月3日、巨大噴火の予測が可能であることを前提にした原子力規制委員会の火山影響評価ガイドの見直しを提言しています。伊藤知事は、九州電力の説明に基づき火山リスクは問題ないと言明していますが、火山学会は、火山の専門家による科学的知見とかけ離れたものであると批判しています。
このような数々の問題が指摘されているなかで、原発再稼働に舵を切ることは、民意を踏みにじり、安全性を無視し、住民のいのちを守るという職務を放棄した行為であると言わざるを得ません。
私たち日本聖公会では、2012年5月に行われた定期総会において、「原発のない世界を求めて」という声明を採択しました。その主旨は、神様が与えた生きとし生けるものすべてのいのちを脅かしてはならないということです。いのちを危険にさらす可能性の高い原発の存在を許容してきたこれまでの歴史を反省し、今こそ原発を撤廃し、より安全な代替エネルギーを開発するようエネルギー政策の転換を提言しています。このことは、私たちキリスト者だけでなく、多くの国民の願いでもあると信じます。
私たちは、このような立場に立ち、このたびの鹿児島県知事及び県議会の決定に対して抗議を行うとともに、県民のいのちを最優先とする政策を行うよう強く求めるものであります。

2014年11月10日
日本聖公会正義と平和委員会
委員長 主教 渋澤一郎
日本聖公会原発と放射能に関する特別問題プロジェクト
運営委員長 司祭 野村潔

▮ 電力会社による原発再稼働申請に関する要望書(緊急)


内閣総理大臣 安倍晋三殿

電力会社による原発再稼働申請に関する要望書

北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力の四社が、5原発10基の再稼働申請をしたことに心からの怒りを覚えます。東日本大震災によって白日の下にさらけ出された原子力発電の危険性と問題性は、何一つ変わっていないどころか、それに対する対策も何一つ行われておりません。東京電力福島第一原発の事故は「収束」とはほど遠い状態にあり、危険な放射能が地域や世界を汚染し続けています。これまで行われてきた「除染」作業だけでは、地域の線量はとうてい下がらないことが明らかになっています。子どもたちはそのような危険な状態の中で生活をせざるを得ません。使用済み核燃料や放射能汚染物質の量はますます増加し、「中間貯蔵」等というごまかしの手段がとられようとしています。東南海大地震をはじめ巨大地震の可能性も指摘されており、全国の国民は等しく恐怖しています。
それにも関わらず、電力会社は再稼働の申請をしました。政府は「新たな規制基準」によって、これを認可するのでしょうか。わたしたちはキリスト教信仰の立場から、政府が人々のみならず自然のすべての生命を脅かす原発の再稼働を決して認めないように要望します。現在稼働中の大飯原発を含めて、直ちにすべての原発を廃炉にするように求めます。そして、適切な代替エネルギーの開発を政府として奨励するように求めます。

2013年7月19日
日本聖公会「原発と放射能に関する特別問題プロジェクト」
運営委員長 司祭 野村 潔

▮ 福島第一原子力発電所の事態に当たっての要望(2011年7月21日) -正義と平和委員会ー


内閣総理大臣 菅直人殿
経済産業大臣 海江田万里殿
原発事故収束・再発防止担当大臣 細野 豪志殿

福島第一原子力発電所の事態に当たっての要望

東日本大震災における福島第一原子力発電所の大事故発生から4ヶ月が経過しました。この間の事態は、原子力発電所から環境に放出される放射能が人々の生命にとって重大な脅威を与えていることを示すとともに、原子力発電所の存在そのものに大きな問題があることも明らかになってきました。その問題性とは、特に次の点にあります。
(1)大規模地震に対する対策が不十分なまま、世界的に見ても地震多発国である日本に立地されていること。この事実に目をふさぎ、「安全神話」が作られてきたこと。
(2)今回の事故が明らかにしたように、いったん事故が起きると、炉心溶融を初め重大な事態を引き起こし、大量の放射性物質を環境に放出し続けること。
(3)使用済み核燃料の処理技術が未確立であり、使用済み燃料の貯蔵量は増加する一方であること。また、その放射能を閉じ込める対策も不十分であること。
(4)発電に使用されない大量の廃棄熱が二次冷却水によって環境に放出され続けること。
(5)要するに、民生用の科学技術としては未完成な技術であること。

これらの問題性が何の解決も見ないまま、今、原子力発電所の再稼働を主張する人々もいます。これは、国民・住民の命を省みない論理であると言わざるをえません。われわれは、神によってつくられた人間の生命と、多くの命を育む自然環境を大切にする立場から、以下のことを要望いたします。
(1)外部被爆のみならず内部被爆も含めた被曝量の安全基準を厳密に定め、その科学的・医学的根拠を明らかにすること。福島県はもとより、東日本各地における放射線量の測定を厳密に(地上付近で)行い、安全基準を超える結果が測定された地域から、特に乳幼児・児童・生徒を初め、若い世代および妊産婦を優先的にすぐに避難させること。その受け入れ体制を造ることに全力を挙げること。また、校庭の汚染土壌の除去など、乳幼児・児童・生徒に対する放射能汚染を防ぐ最大限の措置を講じること。
(2)今後、数十年にわたって、住民の放射能汚染の影響について追跡調査し、必要な医療措置を講じること。
(3)食品に対する放射能汚染の測定を長期にわたって継続し、その結果をすべて公表すること。
(4)全国の原子力発電所の耐震対策を全面的に見直し、その地域における過去1000年以上の地震の歴史をも再調査し、東日本大震災級の地震および津波に十分に耐えうる構造にすること。その科学的根拠を公表し、立地県の住民および自治体のコンセンサスを得るまでは、絶対に再稼働を認めないこと。
(5)老朽化した原子力発電所から、十分な放射能対策を講じた上で順次破棄し、新規原子力発電所の建設を行わないこと。
(6)太陽エネルギー、風力、地熱、その他再生可能な自然エネルギーを用いた発電システムの開発と普及を奨励し、政府としても開発に力を入れること。また、独立系電力事業者の電力の利用を含め、従来の電力政策を改革し、新たな電力源開発に対する障害を取り除くこと。
以上

2011年7月21日
日本聖公会・正義と平和委員会 委員長 谷 昌二