(2016年8月13・14・15日福島民報新聞掲載記事より)
震災と原発事故から5年が過ぎ、避難区域の解除が相次ぎ復興が急速に進んでいますが、今も放射能を忘れることが出来ない生活が続いています。なかでも、こうした環境で多感な時期を過ごす子ども達への対応は、一刻も早く整えなくてはならない事だと思います。
チェルノブイリ原発事故により培った経験と知識、そして放射能に汚染された区域の今を学ぶために、現地を訪れる視察事業が福島県で生まれています。
視察事業のひとつである「福島子どもの未来を考える会」では、福島の中高生を対象にベラルーシの首都であるミンスクのキャンプ施設に宿泊しながら、文化活動やスポーツを通じた交流活動を行っています。今年の夏休みはベラルーシにある国立子ども教育保養施設「ズブリョノスク」に10日間滞在しました。
ベラルーシでは、チェルノブイリ原発事故後子ども達の健康のために、国による保養施設が作られました。施設は国内に14カ所あり、子ども達は毎年好きな場所を選んで利用しています。汚染区域に住む幼児から高校生は無料です。
「ズブリョノスク」には、松葉のエキスを使った手足のジェットバスやマッサージ機、アロマセラピー室などの設備が揃っており、滞在した福島の子ども達も積極的に活用し心身共にリフレッシュしました。また、施設内には18世紀末から19世紀初め頃までの農民の生活を伝える博物館が併設されています。そのほかにもわら細工や刺しゅうなどの伝統工芸を教わる施設も充実しており、故郷の文化や歴史を学ぶ事が出来ます。自国の文化を誇りに思っているベラルーシの子ども達の姿を見て、福島の子ども達も故郷への関心を高めたようです。
原発事故以降、福島県内でも子どもたちの健康を考え、線量の低い地域で夏休みなどを過ごす、一時保養事業が様々な団体により行われています。原発問題プロジェクトでもリフレッシュプログラムを行っていますが、放射線量の低い安全な場所で思う存分外遊びを満喫している子どもたちの表情は本当に活き活きとしており、その効果を実感しています。福島で育つ全ての子ども達のために、ベラルーシのような保養施設や、統一したプログラムが一日も早く出来ることを願っています。