日本聖公会首座主教
ナタナエル 植松 誠
主の平和がありますように。
2011年3月11日の東日本大震災から5年目に入りました。被災地では、「復興」への様々な取り組みが行われています。東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染の問題は、いまだにその解決の方向性も定まっていません。廃炉には今後数十年の危険な作業が必要であり、汚染地域の除染、避難住民の帰還は可能なのか、それがいつになるのかは今も予測はつきません。居住地を追われ、家族が離散させられ、放射能による心身への影響に怯える被災者の苦しみや悲しみは続いています。
これまで、「原子力の平和利用」の名のもと、私たちは「安全神話」を信じて、原発が生み出すエネルギーを享受してきました。多くの人が大震災以前から、原発の持つ問題性を訴えてきたにもかかわらず、私たちはそれに聴こうとしてこなかったことを、今私は心から悔いるものです。今回の事故は、そのような私たちに原発が危険きわまりないものであるということ、一旦事故になると制御できないこと、そして使用済み核燃料の処理問題には全く手がつけられていないという事実を突きつけました。
私たち日本聖公会は、2012年の第59(定期)総会で「原発のない世界を求めて~原子力発電に対する日本聖公会の立場~」を決議しました。そして、原発事故の被災者と共に歩むこと、また、原発問題と取り組むために「原発と放射能に関する特別問題プロジェクト」を設けることを決めました。
多くの問題と取り組んでいくこのプロジェクトは、私たちのものです。皆様がどうぞ積極的に関わってくださいますよう、心からお願いいたします。