(2016年3月26日福島民報新聞・赤旗新聞掲載記事より)
四国電力は2016年3月25日、運転開始から来年で40年になる伊方原発1号機(愛媛県伊方町)を5月に廃炉にする方針を決め、経済産業省に届け出ました。地元からは「廃炉判断はあまりにも遅い。2、3号機も廃炉にすべきだ」と声が上がっています。
運転を延長するには、40年になる1年前の9月までに原子力規制委員会に申請する必要があります。四国電は1号機の再稼働を検討してきましたが、伊方1号機は出力56・6万キロワットと出力が比較的小さく、その前提となる対策の工事費負担が1700億円超に上ることを考慮し、運転延長を断念しました。東京電力福島第1原発事故後、原発の運転期間を原則40年と定めた国のルールに基づき、廃炉となる原発は昨春の5基と合わせ6基目となります。
政府が掲げる望ましい電源構成(ベストミックス)では、2030年度に原子力で電源の20~22%をまかなう事を目指しており、原発が30基程度稼働している必要があります。しかし、巨額の安全対策費用が再稼働の重荷となっており、実現が厳しくなるかもしれません。
一方、四国電は同3号機について、原子炉起動前の最終手続きとなる使用前検査を同日、原子力規制委員会に申請しました。3号機は昨年7月、再稼働の前提となる新規制基準に「適合」しており、四国電は今年7月下旬の運転再開をねらっています。同社は2号機の再稼働を検討しています。
国は福島第1原発事故後に、原子炉等規制法を改定し、原発の運転期間を原則40年とし、最長20年の延長を容認。延長には電源ケーブルの難燃加工などの対策を行った上で、新規制基準に基づく原子力規制委の審査を終える必要があります。
原発の機器や設備は、高温、高圧の過酷な環境で使われ、振動による金属疲労や、熱疲労で壊れやすくなります。しかも伊方原発の近くには、日本最大級の活断層「中央構造線」が走っています。運転開始から40年になる伊方原発1号機の廃炉は当然です。
しかし、四国電力が伊方原発1号機の廃炉を決めたのは、動かし続けるためにかかる費用が生み出す利益よりも大きいからという経営優先の考えからであり、安全を重視したためではありません。3号機は、国の新規制基準に「合格」したからと7月にも再稼働しようとしています。
住民の訴えを認め、再稼働したばかりの関西電力高浜3、4号機の運転停止を決定した大津地裁は、再稼働を認めた国の新規制基準について東京電力福島第1原発事故を踏まえて形成されたのに、事故の原因究明は道半ばだと指摘しました。そのような状況で、3号機の再稼働など論外です。3号機を含め、全基を廃炉にすべきです。