(2016年3月4日朝日新聞・福島民報・赤旗新聞掲載記事より)
原子力規制委員会の有識者調査団が北陸電力志賀(しか)原発1号機(石川県)直下の断層について、「活断層と評価するのが合理的」とする評価をまとめました。活断層の可能性を否定できないとした昨年夏の評価書案に続き、これで評価が確定しました。
今後、志賀1号機の廃炉を懸けた議論は審査会合に移ります。調査団の判断は「重要な知見の一つ」として扱われ、北陸電が新たなデータを示すなどして、これを覆せなければ1号機は廃炉に追い込まれます。
問題になったのは三つの断層。1号機の真下を通るS-1断層は「地盤をずらす可能性がある断層(活断層)」との最終判断となりました。1号機と2号機のタービン建屋直下を走るS-2、S-6断層については「ずれが地表に及んでいないものの、12万~13万年前以降に活動した可能性がある」としました。
規制委は、前身の経済産業省原子力安全・保安院から活断層の追加調査を指摘された6原発を対象に有識者による現地調査を続けてきました。志賀1、2号機と日本原子力発電敦賀2号機(福井県)、東北電力東通1号機(青森県)について、活断層の可能性が指摘されました。原発立地の不適が今ごろ問題になるのは、建設当時のずさんな審査にあると考えられます。志賀1号機の安全審査は旧通商産業省と原子力安全委員会が1987~88年に行いました。北陸電はその際、断層の追加調査を実施しました。有識者調査団が活断層と指摘するのはその時の図面です。活断層を疑わせる試掘溝の断面が、なぜか見落とされた可能性が高いのです。安全審査の公正さを疑わせますが、保安院はさかのぼって検証することに否定的な姿勢を崩しませんでした。
~児玉一八原発問題住民運動石川県連絡センター事務局長の話~ |
志賀原発1、2号機は、東京電力福島第1原発事故の直前から停止していますが、これまで北陸電の電力供給に大きな支障は出ていません。同社は大規模な水力発電も持つことで知られます。見通しの立たない原発再稼働に今後も資金を投入し続けるのは疑問です。
はたして、規制委は科学的根拠に基づき、厳正公平な判断を示せるのでしょうかー。
活断層の存在を無視した再稼働を許すことになれば、原発の安全規制そのものが揺らぐでしょう。
※志賀原発・・・北陸電力が、日本海に面した能登半島の石川県志賀町に建設した原発。 福島第1原発と同型の沸騰水型軽水炉(BWR)2基の原子炉があり、1号機は1993年に運転を開始し、出力は54万キロワット。2号機は2006年に運転を開始し、出力は135・8万キロワット。2007年、操作ミスで起きた1号機の臨界事故を8年間隠していたことが発覚。1号機ではその後も制御棒にかかわる事故が続きました。2011年3月から定期検査のため運転停止中。志賀原発には周囲に活断層がいくつもあり、2013年に北陸電がこれまで活断層でないとしていた、志賀原発から約1キロの福浦(ふくら)断層について活断層と認めています。 |