関西電力高浜原発3号機(福井県高浜町)再稼働

(2016年1月27日朝日新聞掲載記事より) 2016年1月28日朝日

関西電力高浜原発3号機(福井県高浜町)が2016年1月29日、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)に続き、再稼働する見込みでいます。
電力各社は全国43基の原発のうち25基と、建設中の1基について、基準適合審査を原子力規制委員会に申請しました。川内、高浜に続き、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)も、次の再稼働が見込まれています。

福井県の若狭湾周辺には、廃炉中を含めて15基の原子炉があります。世界屈指の集中立地地域です。災害などで複数の原発が同時に事故を起こせばどうなるのか。福島の事故が突き付けたこの疑問に、答えは示されていません。規制委の審査でも、ほとんど検討されませんでした。
福井に11基の原発を持つ関電は2016年、規模が小さく古い2基の廃炉を決めたものの、3基は運転開始から40年を超えて使い続ける方針を決めました。リスクを最小化する努力が不十分と言わざるを得ないでしょう。
高浜は、ウランとプルトニウムを混ぜたMOX燃料を燃やすプルサーマル発電であるため、安全性への不安がより強くあります。
さらに、事故が起きた時の住民の避難計画も心もとない状況です。高浜原発は避難計画の策定が義務づけられた半径30キロ圏に福井、京都、滋賀の3府県12市町が入り、17万9千人が暮らしています。国の原子力防災会議は2015年末に、各府県がまとめた広域避難計画を了承しました。30キロ圏の住民は最悪の場合、福井、兵庫、京都、徳島の4府県56市町へ避難することになります。ところが朝日新聞の調べでは、住民の受け入れ計画をつくったのは56市町のうち7市だけでした。大半の自治体が「施設や人員、物資を確保できるか」「放射性物質に汚染された車が入ってこないか」といった不安があると答えました。
30キロ圏の多くの自治体が住民の不安を受け、再稼働前の「同意権」を関電に求めましたが、関電は拒み、国も立地自治体の同意さえあればいい、との姿勢を崩しませんでした。

福島原発から50キロ離れたところにある飯館村をご存知でしょうか?
ここは、福島第一原発事故前は「日本で一番美しい村」にも選ばれた事もある自然豊かな村でした。飯館村は原発建設時、原発から30km圏外であり絶対に安全な地区とされ、原発建設に伴う財政的措置はありませんでしたが、住民は事故により多大な損害を受けました。事故当初空間放射線量が44.7μ㏜/hもありながら国や県、さらに村からも被害の実態を隠され、事故から1か月後ようやく全村民に避難指示が出されました。避難が遅れてしまった事により、5ミリシーベルトを超える初期被ばくをした福島県民の約8割が飯館村に集中する事になりました。

原子炉が集中して立地している高浜原発で、30キロ圏内の避難計画すら不十分ななか、もし事故が起きたらどうなるのでしょうか?原発の『安全神話』が再び繰り返されているのではないでしょうか?
世論を無視し、多くの課題を置き去りにしたままの原発再稼働は、人命を軽視しているとしか思えません。