(2016年1月25日赤旗新聞掲載記事より)
九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)で再稼働前に行われた原子力規制委員会による使用前検査で、火災防護のためのケーブルの分離敷設状況の現場確認は各号機でわずか1カ所のみであることが分かりました。
問題の発端となった東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)では、多いものでは1基あたり数百本のケーブルで不適切な状態でした。川内原発1、2号機などを特別扱いして、徹底した調査をしていない事が問われます。
新規制基準では、原子炉の緊急停止などに必要な安全上重要な機器のケーブルは、火災の影響軽減のために複数系統を用意し、それぞれ分離して敷設することを求めています。規制委は2016年1月6日、柏崎刈羽原発の中央制御室床下で1000本以上のケーブルが不適切に敷設されていた問題を受けて、すべての事業者に各原発のケーブルの敷設状況を確認することを求めました。しかし、2015年8、10月に再稼働した川内原発1、2号機と再稼働の準備を進めている関西電力高浜原発3、4号機(福井県)は、使用前検査で確認済みあるいは確認中であることを理由に除外されました。
使用前検査のあり方については規制委の定例会合でも「仮に組織として隠蔽しようとした場合、書類上の審査だけで、本当にそれを見抜けるのか」(6日、伴信彦委員)など疑問の声もあります。しかし、田中俊一委員長は「細かいことについて、どこまで検査をするかというところについては、まだ十分に詰め切っていない」と述べています。
(2016年1月27日朝日新聞・赤旗新聞掲載記事より)
2016年1月26日に行われた原子力規制委員会の安全審査の会合で、九州電力から規制委へ、川内原発1、2号機(鹿児島県)が事故を起こした際の前線基地「緊急時対策所」について、免震構造での建設を断念し、耐震構造に変更する計画を初めて説明しました。これに対し規制委は「安全性が向上しているとは見えない」などと批判し、計画の見直しを求めました。
九電は川内原発の再稼働に伴う審査の過程で、2016年3月末までに免震棟(※)を新設すると表明していましたが、1、2号機が再稼働した後の2015年12月、一転して計画を撤回しました。免震棟完成までの暫定的措置として設置した小規模の対策所を使い続けるとしたのです。川内原発の審査では設置が前提とされ、合格証にも盛り込まれていました。
田中委員長は「審査をクリアできればもういいというところが(九電に)あるのかもしれない」と不快感を示しました。
規制委の対応について、免震棟計画撤回を九電に抗議した反原発の市民団体「玄海原発プルサーマルと全基を止める裁判の会」の石丸初美会長は『この問題は規制委の本気度が問われている。(計画変更の)申請を突き返すぐらいなら、稼働自体を止めろと命じるのが筋。都合が悪いことは、適合性審査で合格した後に修正すればいいという悪例をつくっては絶対にいけない』と批判しました。
これらの報道から、電力会社や規制委の「再稼働さえ出来れば、後はどうにでもなる」という態度が透けて見えてきます。
政府は、今もなお原発事故のために苦難を強いられている被災者や、国民の過半数が再稼働に反対している現実を無視し、原発再稼働へ加速しようとしています。
これからは、私たち国民一人一人が電力会社や規制委へ厳しい目を向け、世論で対抗していかなくてはならないのだと思います。そして福島原発事故以前のような根拠のない「安全神話」が再び蘇る事の無いように、願っています。
※免震棟とは・・・ 2007年の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発の事務棟が使えなくなった教訓から東京電力が所有する原発に設置し、福島第一原発事故では対応拠点として極めて重要な役割を果たしました。免震装置で地震の揺れを大幅に低減する構造で、自家発電機や通信設備、被ばく対策設備のほか、休憩施設や物資置き場も備えています。原発の新規制基準では義務付けられていないが、ほとんどの原発で設置が進んでいます。