(2015年8月3日朝日新聞・2015年8月12日福島民報新聞掲載記事より)
2015年8月11日に九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働し、阿部政権はこれを皮切りに原子力規制委員会の審査をクリアした原発は全て動かす方針です。
再稼働をめぐり、その責任の所在についてあいまいさが浮き彫りになりました。
原子力規制委員会の田中俊一委員長(福島市出身)は「基準の適合性を審査した。安全だとは言わない」と発言し、波紋を広げました。菅義偉官房長官は「規制委の責任で安全かチェックする」、地元の岩切秀雄薩摩川内市長は「国が決めた基準で審査した結果なので安全だと思う」とし、それぞれが責任を押し付け合うような形になりました。いまだにわだかまりは解けていません。これでは大事故が起きた時、だれに責任を問えばいいのか分かりません。
また、同意が必要な「地元」の範囲も不明確なままで、福島第一原発事故の教訓が活かされているとは到底思えません。
原子力政策は、国策ともいえます。再稼働は首相が最終判断を示し、全責任を負うべきなのではないのでしょうか。
福島の惨状は今も続いています。そして、終わりは見えません。
それに目をそむけた再稼働は、決して許すことは出来ません。
福島の原発事故で受けた苦しみや悲しみを、政府も私たち一人一人ももっと知り、その痛みを新しいエネルギー社会へと向かう原動力に変えていかなくてはならないと思います。