(2015年7月30日中日新聞掲載記事より)
政府や東京電力は「復興」の名のもと、福島第一原発事故に伴う避難者らに対する被害賠償や住宅支援などの打ち切りを急いでいます。福島県富岡町出身者らでつくるグループは「原発被害者生活支援法」の制定を目指し、国会議員らに訴えるため、被害者の「生の声」を集めてきました。アンケートを集約した小冊子には、『こんな理不尽な扱いには耐えられない』など、好転の兆しが見えない状況に対する避難者の憤りがあふれています。
アンケートで「最もつらかったことは何か?」という質問では、「生活不安」60%、「見通しが暗い」56%、「狭い住居」55%、「家族離散」40%、「失業」33%と続いています。
現在避難指示の対象者には、一律で月額10万円の精神的損害賠償があります。アンケートではこれに対して「生活費として足りない」が87%と多数を占めています。放射線のへの恐怖から一家離散となるケースも回答者の59%を占め、離散による家計への負担も看過出来ません。
富岡町は現在、帰還困難区域と居住制限区域、避難指示解除準備区域が混在しています。自宅が富岡町内にある女性(75歳)は『自宅は準備区域にあるが、近く解体せざるをえない状態だ。しかし国は帰還困難区域のみ手厚い賠償を行い、そのほかの区域への賠償を軽んじている』と訴えています。
被害賠償では「給付」に力点が置かれていますが、被災者間で格差が生まれ人間関係に亀裂が入る状態が起こるなど、その「形態」に問題が潜んでいます。
このアンケートを実施した会の代表者は、『精神的損害賠償打ち切り後、数年にわたり、就職先の無料あっせんや標準的な収入が得られない場合差額分を国が賄うといった「自立支援」が必要である』と訴えています。
私は郡山市在住ですが、しばしば周囲の人との間で、避難者への賠償金について話題にのぼることがあります。たいがいは、賠償金を手にすることで人間関係が壊れたり、勤労意欲が損なわれ破綻している、といった内容です。福島で暮らす賠償金を支払われていない立場にいる人たちが、賠償金が本当の自立支援になっているのか疑問を抱いているのを実感しています。
原発事故後から時間の経過とともに、求められている支援の内容は刻々と変化しています。
本当の「復興」のためには、政府は避難者の置かれている状況や必要としている支援にもっと目を向ける必要があり、そして被災者自身も主張を伝えていく努力が必要なのだと思います。