One Family ~つながる心 福島支援プログラム~に携わって

東日本大震災から5年が経過しました。節目である年を迎えるに当たり、共に歩んできた方々がこれまでを振り返り今想う事を、リレー形式で掲載します。
9人目は、沖縄教区の崎原美奈子さんです。
崎原美奈子さんは、沖縄県沖縄市の諸聖徒保育園で先生をされています。『One Family~つながる心 福島支援プログラム~』では郡山セントポール幼稚園へ保育補助にも度々来て頂いており、絆を深めています。また、夏のプログラム『沖縄でホームステイ』では、参加者をご家族の皆さんであたたかく受け入れて下さいました。
沖縄と福島で距離は遠く離れていても、絶えず関心を向けて寄り添って下さるその姿勢に、福島で暮らす私たちは明日へと向かう勇気を貰っています。


 

『One Family ~つながる心 福島支援プログラム~に携わって』

 諸聖徒保育園 崎原美奈子

1.はじめに

2011年に起こった東日本大震災の時のことを今でも鮮明に覚えている。「東北が地震で大変なことになっている!」との大きな声が保育中の園内に響き、急いでテレビを付けた。巨大地震に伴い大きな津波が発生し濁流となって、いろいろなものをあっという間にのみこんでいく映像に愕然とした。こんなことが、同じ日本で今起きているのかと信じられず、神さま!止めて下さい!と祈る事しかできなかった。震災のニュースを聞くたびに、被災された人たちのために私にできることは何だろう…と心が揺さぶられた。そんな中、原発問題プロジェクトの池住圭さんとの出会いがあった。

 

2.プロジェクト立ち上げ

池住圭さんより、福島には目に見えない放射線を心配しながら、幼稚園で子どもたちのために懸命に働く先生方がいること、その先生方の心と体のリフレッシュを沖縄の地でできないか、その間、沖縄から職員を派遣することは可能か、などの話があった。ちょうど同じ場に上原主教や岩佐司祭、園の保育士も数名いて、できることをすぐに始めようとの事でプロジェクトを発足。福島の人たちに寄り添っていきたいという思いを込め「One Family」という名前を付けた。

 

3.One Familyプログラム

・セントポール幼稚園での保育支援(2015.10.27~10.30)

どのクラスに入っても、子ども達や先生方が快く受け入れてくれることに感謝し、ゆったり楽しく過ごせた日々。天気のいい日の園庭は、元気に遊び駆けまわる子どもたちの笑顔でいっぱいだった。子ども達の表情を見ている先生も笑顔で嬉しそうだった。そんな当たり前の、ほのぼのとした光景の裏には、子ども達の安全を守るために、常に放射能線量の事を考え、風向きや風の強さを見ながら、外遊びの制限時間を設け対応していく先生方の苦労がある。また、園児が登園する前に、園舎内外の水拭きをしたりと、震災から5年経った今でも張り詰めた気持ちのまま保育をしている。先生方の心と体は大丈夫なのだろうか?いつになったら本当の意味で復興されるのだろう…と複雑な心境になった。聖公会の保育施設で働く福島の先生だけが背負わされている現実を、もっとみんなで担うことができたら、いや担わなければならないと強く思った。セントポール幼稚園がいつでも笑いの絶えない、子どもたちにとってホッとする場所であってほしい。

 

・ホームステイの受け入れを通して

昨年の夏休み、我が家に福島からステキな女性がホームステイに来てくれた。家族のようにリビングで一緒にテレビを観たり、小学生の娘たちのラジオ体操に付いて行ってもらったり、食事を共にしながらおしゃべりを楽しんだりと過ごした。又、地域の行事へも参加し、沖縄の盆踊りを踊ったり、エイサーを見たりと沖縄の文化にも触れる機会があり、楽しい時間となった。彼女との出会いがきっかけとなり、家族で福島の事をよく話すようになった。原発の関連ニュースが流れると「○○さん、大丈夫かな」と心配する子ども達。「お母さん、学校で福島の話を聞いたよ!」「原発は悪いことなのに鹿児島はどうして再稼働するの?」など原発の問題にも関心を持っているようだ。私たち大人は、原発が許されない理由を子どもたちにしっかりと伝え、福島の問題を風化させないようにする責任があると強く思った。

 

4.おわりに

初めて福島に行った時、汚染土が黒いシートに入れられ、住宅の庭に置かれている光景に驚いた。除染が進んでも汚染土を保管する施設が足りないらしい。あまりにも進まない復興に、福島で生活する人たちの心が折れてしまわないか心配である。私にできることは、これからも福島の現状に思いを寄せ、周りの人へ伝えていく、できる限りの支援を続けていくことだと思う。ゆっくりとした小さな歩みかもしれないが、この取り組みを長く続けていきたい。