(2016年3月25日朝日新聞掲載記事より)
史上最悪の原発事故から来月で30年を迎えるチェルノブイリ原発で、建設の進む「新シェルター」が報道陣に公開されました。
チェルノブイリ原発4号機は1986年4月26日、試験運転中に爆発しました。火災も起き、10日間で東京電力福島第一原発事故の約6倍の放射性物質を放出しました。直後の消火活動で30人以上が死亡し、周辺は今も立ち入りが制限されています。
その後4号機は石棺で封印されていましたが、老朽化による一部の壁や屋根の崩壊が始まっており、再び放射性物質が漏れ出そうとしています。そのため、巨大なかまぼこ形の「新シェルター」で石棺を丸ごと覆って放射性物質の飛散を防ぐ計画です。年内にもレールで移動させ、ようやく廃炉作業の準備にたどりつきます。
新シェルターは2012年に本格着工し、建造には最終的に15億ユーロ(約2千億円)かかる見込みです。地震や竜巻にも耐えるように設計され、今後100年間の封じ込めを目指しています。ただ、石棺の解体など廃炉作業の具体的なめどはたっておらず、維持管理の資金面でも不安が残っています。また、放射能による汚染は半減期から考えると1,000年は消えず、シェルターを10回は作る事になります。
廃炉への道のりは険しく、その終わりは見えません。
一方、福島第一原発の廃炉には40年かかると言われていますが、果たして本当に可能なのでしょうか?
元京都大原子炉実験所助教の小出裕章氏は、『最も重要なのは溶け落ちた核燃料をどうやって取り出すかだが、人もロボットも近づけず、状況がまったく把握できていない。最終的にはチェルノブイリのように石棺で封じ込めるしか手がないのでは』と述べています。(2015年12月9日中日新聞より)
廃炉までにかかる時間や費用、労力はあまりにも果てしなく、まるで予想が尽きません。
今、政府は福島原発周辺立地自治体の避難区域解除を進めていますが、帰還を選択するのは主に高齢者であり、若者はほとんど戻りません。廃炉が終わる頃には無人化しているのではないか、と懸念する声も上がっています。
今も福島で暮らす私は、放射能がどれほど人の心を傷つけ苦しめるのか、震災以降目の当たりにしてきました。
原発事故を風化させないために、1人でも多くの人に原発の問題に興味を持って欲しいー。そしてこの地を訪れ、報道されない福島の『今』を知って貰える事を願っています。