(2016年2月16日福島民報、2月17日福島民報・赤旗新聞掲載記事より)
高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)を運営する日本原子力研究開発機構が、もんじゅを廃炉にするには30年間で約3000億円の費用が必要との試算を原発事故の次の年に行っていたことが分かりました。原子力機構は「当時、もんじゅの存続の是非が議論されたため、内部で試算した」としています。
もんじゅの廃炉費用が明らかになったのは今回が初めてで、その額は通常の原発の数倍に上ります。もんじゅにはこれまで1兆円超がつぎこまれ、再稼働する場合も改修費など1000億円超が必要です。運転を再開しても廃炉にしても、さらに巨額の費用負担が発生する実態が明らかになりました。
『もんじゅ』は、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使い、高速の中性子で核分裂を起こし、発電しながら消費した以上のプルトニウムを生み出すことから“高速増殖炉”と呼ばれます。政府は「夢の原子炉」として、使用済み核燃料の再処理工場とともに核燃料サイクルの両輪と位置付け、1兆円を超える多額の国費を投入して研究開発を続けてきましたが、事故やトラブルが後を絶たず運転実績はほとんどありません。2012年には大量の機器の点検漏れが発覚、原子力規制委員会が13年5月、事実上の運転禁止命令を出しました。
では、もんじゅはなぜ今まで運転を続けてきたのでしょうか?それは、運転をやめる事が出来ない色々な理由があるからです。日本はすでに、核兵器数千発分に相当する47トン以上のプルトニウムを保有しており、もんじゅなどでプルトニウムを利用することを理由に、その保有を国際的に容認されています。もんじゅの廃炉などで、その前提が崩れれば、「日本も核兵器に転用か」といった国際的疑念が高まりかねないからです。
又、核のゴミの問題もあります。高速増殖炉は核のゴミのリサイクルを目標に研究開発されていましたが、実際は失敗続きで破綻しています。しかし、核燃料サイクルが不可能である事を認めれば、原発が『トイレの無いマンション』であると認めてしまう事になります。原発の再稼働や核の輸出を目指している政府や電力会社としては、それでは都合が悪いため、やめるにやめられない状況となっているのです。
もんじゅの継続が、問題の先送りでしかない事は明らかです。無駄な国費がこれ以上費やされる事の無いように、一刻も早く廃炉へと進む事を願っています。