除染ごみ 搬出遠く ―中間貯蔵施設用地取得1%―

(2016年2月13日・17日福島民報・14日朝日新聞掲載記事より)

東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の予定地は、福島第一原発を取り囲むようにしてあります。放射線量が高く人が許可なく立ち入れない「帰還困難区域」です。福島県と大熊、双葉両町が除染廃棄物の搬入受け入れを決めてから、間もなく1年を迎えます。
又、除染廃棄物を中間貯蔵施設建設予定地内の保管場に搬入する“パイロット(試験)輸送”は、順調に進めば2016年3月中にも完了する見通しです。
しかし、中間貯蔵施設建設予定地の用地交渉は進んでおらず、施設整備と廃棄物の本格輸送を始める見通しは立っていません。交渉の結果予定地の取得が出来たのはわずか1%未満に留まっています。福島県内の復興に欠かせない施設ですが、交渉に携わる人手不足が深刻であり、地権者からは「先祖伝来の土地を手放したくない」という複雑な思いも聞かれます。

一方、福島県によると除染廃棄物の仮置き場は、ほぼ満杯に近い状態です。
中間貯蔵施設への本格輸送開始に見通しが立たない事で、新たに出た除染廃棄物の行き場は無く、住宅や事業所などの除染現場敷地内に置かざるを得ない状況となっています。
私の住む郡山市でも、普段外を歩いていると、道路の至る所に除染廃棄物が置かれているのが目に入ります。一軒家では、自宅の除染で出た汚染土を庭の下に埋めています。除染によりいくらか線量が下がったとはいえど、庭の下に汚染土が埋まっているのは気持ちの良いものではありません。ここで生活していく上では、放射能を忘れる事は出来ないのです。

当プロジェクトの事務所付近にあるアパートの軒下に置かれた汚染土
当プロジェクトの事務所付近にあるアパートの軒下に置かれた汚染土
除染で出た放射性廃棄物を埋める為に、庭に穴を掘っている様子
除染で出た放射性廃棄物を埋める為に、庭に穴を掘っている様子

福島の復興のためには、放射性廃棄物の行き場を定める事は急務です。
このまま、除染廃棄物がある風景の中で、次の世代が育って行く事は心配です。未来のある子ども達の為にも除染廃棄物の受け皿となる中間貯蔵施設を早く作って欲しいという想いはありますが、中間貯蔵施設予定地の方にとって人生が詰まった『家』を手放す事を迫られる心情を考えると、その解決の難しさを感じています。