(2016年2月13日・17日福島民報・14日朝日新聞掲載記事より)
環境省は中間貯蔵施設の用地地権者2365人のうち、1月末までに約1220人を訪問し、建物など約810件の物件調査を終えた。その後に算定額を示し、契約に至ったのは44件にとどまる。依然、地権者約1000人の連絡先を把握できていない。
建設予定地は約16平方キロと広大だ。当面必要となる除染廃棄物の保管場整備にも、まとまった土地が必要となる。これまでに確保した用地は点在している。「このままで本格工事に入れるのか」。関係者は頭を抱えている。
福島県内の除染作業で出た廃棄物がまちに残されたままだ。環境省は、中間貯蔵施設の予定地地権者と交渉するが、人手不足で用地確保は進まない。住み慣れた家を諦めきれない人がいる一方、予定地の外の人たちは廃棄物の早期搬入を望む。福島県も対策に乗り出した。
東京電力福島第一原発事故の除染で出た汚染土などを集めて保管する中間貯蔵施設について、予定地の取得が1%未満にとどまっている。地権者との用地交渉が始まって1年以上たつが、物件の査定に手間取っている。福島県内各地に残る除染廃棄物を施設に運び出すめどが立っていない。
原発事故に伴う除染廃棄物を中間貯蔵施設建設予定地内の保管場に搬入するパイロット(試験)輸送は、順調に進めば3月中にも完了する見通しとなっている。試験輸送の対象は汚染土壌や草木、1キロ当たり10万ベクレル以上の焼却灰など。環境省が県内43市町村から、それぞれ1000立方メートルずつを1年程度かけ搬送する計画で、2015年3月13日に始まった。
環境省は中間貯蔵施設の整備を加速化させるため、建設候補地を抱える大熊、双葉両町に公有地の売却を打診した。しかし、両町とも、住民感情を考慮し慎重に対応する方針だ。
これまでに契約した個人所有の土地は建設予定地内に点在しているため施設整備は難しい。一方、町などが所有する公有地は予定地約16平方キロの約5分の1を占めている。運動公園などのまとまった用地を確保できれば、速やかに工事に着手できる。
ただ、両町の関係者は「町が交渉を始めれば、契約に慎重な地権者をあおっていると受け止められる」との懸念も抱く。大熊町の渡辺利綱町長は「建設を受け入れた以上、協力を拒むわけではないが、地権者交渉がある程度まで進まないと対応は難しい」との考えを示している。
東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の予定地は、福島第一原発を取り囲むようにしてあります。放射線量が高く人が許可なく立ち入れない「帰還困難区域」です。福島県と大熊、双葉両町が除染廃棄物の搬入受け入れを決めてから、間もなく1年を迎えます。
又、除染廃棄物を中間貯蔵施設建設予定地内の保管場に搬入する“パイロット(試験)輸送”は、順調に進めば2016年3月中にも完了する見通しです。
しかし、中間貯蔵施設建設予定地の用地交渉は進んでおらず、施設整備と廃棄物の本格輸送を始める見通しは立っていません。交渉の結果予定地の取得が出来たのはわずか1%未満に留まっています。福島県内の復興に欠かせない施設ですが、交渉に携わる人手不足が深刻であり、地権者からは「先祖伝来の土地を手放したくない」という複雑な思いも聞かれます。
一方、福島県によると除染廃棄物の仮置き場は、ほぼ満杯に近い状態です。
中間貯蔵施設への本格輸送開始に見通しが立たない事で、新たに出た除染廃棄物の行き場は無く、住宅や事業所などの除染現場敷地内に置かざるを得ない状況となっています。
私の住む郡山市でも、普段外を歩いていると、道路の至る所に除染廃棄物が置かれているのが目に入ります。一軒家では、自宅の除染で出た汚染土を庭の下に埋めています。除染によりいくらか線量が下がったとはいえど、庭の下に汚染土が埋まっているのは気持ちの良いものではありません。ここで生活していく上では、放射能を忘れる事は出来ないのです。
当プロジェクトの事務所付近にあるアパートの軒下に置かれた汚染土
除染で出た放射性廃棄物を埋める為に、庭に穴を掘っている様子
福島の復興のためには、放射性廃棄物の行き場を定める事は急務です。
このまま、除染廃棄物がある風景の中で、次の世代が育って行く事は心配です。未来のある子ども達の為にも除染廃棄物の受け皿となる中間貯蔵施設を早く作って欲しいという想いはありますが、中間貯蔵施設予定地の方にとって人生が詰まった『家』を手放す事を迫られる心情を考えると、その解決の難しさを感じています。