(2016年2月6日福島民報新聞掲載記事より)
2016年2月5日、東京電力福島第一原発事故前後の福島県相馬市、南相馬市の両市民の慢性疾患発症の変化について研究結果が公表され、避難の有無にかかわらず、事故後に糖尿病、高脂血症の患者が増えている現状が明らかになりました。
研究では、事故前、事故後にそれぞれ1回以上特定健康診断を受診した両市民(40~74歳)計6406人を対象に、避難区域内の住民と区域外の住民のグループに分けて分析しました。
事故後3年間(平成24~26年)の慢性疾患の発症割合を事故前3年間(20~22年)と比べた値は【表】の通りです。事故前3年間の平均値に対し、区域内の住民は糖尿病が1・21~1・60倍、高脂血症は1・16~1・30倍に増加。区域外の住民は糖尿病が1・11~1・33倍、高脂血症が1・03~1・14倍に増えていました。増加率は避難区域内の方が区域外より高い傾向にあります。
研究チームではこの結果を受け、上昇の原因については「現時点では、生活習慣の変化や社会状況、環境の変化という表現をせざるを得ない」と説明し、「災害後は長期的な慢性疾患の管理が重要」と述べました。
チェルノブイリ原発事故では、甲状腺疾患に限らず様々な病気の増加が報告されています。事故から2年後には、大人については糖尿病、慢性気管支炎、虚血性心疾患、神経系統の病気、胃潰瘍、慢性呼吸器系の病気などが、それ以前に比べて2倍から4倍に増加しています。(1989年 IAEA非公式会議。ベラルーシの保健大臣からの報告より)
そしてチェルノブイリ原発事故から27年経った今も、様々な疾患が依然増加傾向にあります。現地の医師は、研究現段階で実際にチェルノブイリ原発事故が国民にもたらした健康被害を総括するのは時期尚早であり、がんの分野についての結論を出すのはまだ早いと述べています。
福島原発事故かもうすぐ5年となる今、健康被害はまだ始まったばかりと言えます。事故と病気との因果関係について結論が出るのも、きっと果てしなく先の事なのでしょう。今私たちに出来る最善の事が何であるのか、改めて考えさせられます。