指定廃棄物「1県1カ所処分場」行き詰まり

(2016年2月5日朝日新聞・福島民報新聞掲載記事より)

東京電力福島第一原発事故で出た放射性物質で汚染された稲わらやごみの焼却灰などの『指定廃棄物(※)』について環境省は2016年2月4日、放射性物質濃度が基準を下回れば指定を解除して、自治体が処分できるようにする方針を示しました。一部で処分が進む可能性がでてきましたが、国が集めて処分するという方針の転換に、自治体では戸惑いが広がりました。

指定廃棄物は2015年末時点で12都県で計約17万トンが保管されています。環境省は保管量が多い宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の6県では1カ所に集める方針でした。福島県では民間産廃処分場への集約が決まりましたが、他5県では処分場の新設計画が候補地の反対で進んでいません。一方、震災から約5年が経ち、放射性物質が減って指定基準を下回る汚染ごみが出てきました。

環境省が示した指定の解除手続きでは、濃度が基準を下回っていることを確認した上で、保管されている自治体などと協議します。解除後に自治体が処分する場合、費用は国が負担します。

 

茨城県では保管場所の漏出防止策を強化し、指定廃棄物を置き続けることを認める考えを示しました。茨城県内の1ヵ所へ指定廃棄物を集約するための処分場の新設が候補地に反対された後、環境省が県内首長の意向を聞いたところ、現在の場所での保管継続を望む声が大勢を占めました。保管場所が10カ所と限られ、浄水場などの公共施設内にあって管理しやすいからです。しかし、25年後も指定基準を超えたままの汚染ごみは、最大でも約0・6トンになるという推計もあります。橋本知事は「現実的に早期に安全確保するにはこの方法しかなかった」と話しました。

一方、保管の量も場所数も多い栃木県の福田富一知事は環境省の新方針に懸念を示しました。県内の指定廃棄物の大半は稲わらで、農家などに一時保管されています。ここ数年、竜巻被害が相次ぎ、2015年9月には関東・東北豪雨にも見舞われました。指定廃棄物の飛散や流出の恐れがあり、福田知事は早く集約管理すべきだと考えています。

 

指定廃棄物を一刻も早く減らすために出されたこの方針ですが、解除された指定廃棄物の処分がすんなり進むとは限りません。指定基準に至らない指定廃棄物でさえ、住民の反対で処分が滞る自治体が少なくないからです。近い将来、指定廃棄物の容器が破損して処理が厄介になることも予想されます。また、今後はこれに不住家屋が加わるので、可燃廃棄物は更に増加するでしょう。

環境省は「8千ベクレル以下では通常の廃棄物と同じ処理で安全性に問題がないという技術的、科学的な知見は示されている」と、理解を求める考えでいます。

※『指定廃棄物』とは・・・・原発事故で出た放射性物質で汚染されたごみのうち、放射性セシウムの濃度が1キロあたり8千ベクレルを超えるものを、自治体の申請に基づき環境相が指定します。セシウム134の半減期は2年セシウム137は30年で、廃棄物の濃度は徐々に下がっていきます。)