シンポジウム『いま被ばくを考える ―チェルノブイリ30年 私たちがなすべきことは―』に参加してみて

2015年12月12日(土)福島県郡山市にある市民交流プラザにて開催されたシンポジウム『いま被ばくを考える ―チェルノブイリ30年 私たちがなすべきことは―』(主催:低線量被ばくと健康プロジェクト)に参加してきました。
シンポジウムでは下記の5人の専門家による発表と、その後参加者との質疑応答の時間が設けられていました。

  1. 大隈貞嗣氏(三重大学医学系研究科助教) 『福島県民健康調査における過剰診断論を整理する』
  2. 崎山比早子氏(元放医研主任研究官) 『“福島安全宣言”と帰還政策―専門家の責任』
  3. 澤田昭二氏(名古屋大学名誉教授) 『原爆被爆者に対する放射性降下物による被ばく影響の真実』
  4. 曽根のぶひと氏(九州工業大学名誉教授) 『放射線から身を守るためにーICRP/日本の防護策の誤りとは』
  5. 西尾正道氏(北海道がんセンター名誉院長) 『長寿命放射性元素体内取込み症候群』

現在、福島県内では小児甲状腺がんの多発が見られています。それについては過剰診断論も出ており、専門家により意見が分かれているのが現状です。今回のシンポジウムでの発表者の1人である西尾正道氏によると、『福島県の小児甲状腺がんの多発が低線量被ばくによるものであるとすれば、大変な被ばく量だと言える。がんの進行する時間を考えると、低線量被ばくの影響が現れてくるのはこれからである』との事でした。いずれにせよ、あと2~3年すれば小児甲状腺がんの多発の原因が明確化するとの見解で、講演者の意見が一致していました。

又、小児甲状腺がんで肺にまで転移しているケースも出ており、小児に限らず成人の甲状腺がんも増加しているそうです。福島県立医大での成人を対象とした甲状腺がんの手術数は、近年増加傾向にあるとの事でした。さらに甲状腺がんは再発が多い特徴を持ち、30年以内で36%が再発します。実際にすでに甲状腺がんの再発も増えているそうです。私は毎日、新聞で原発や放射能に関する情報を収集していますが、そのような報道に出会ったことは無く、情報が偏っている事を実感しました。

核災害はひとたび起きると人のなりわいを根こそぎ奪ってしまいます。しかも、その持続時間は人の寿命をはるかに超えます。その事故を起こした責任は未だ問われていません。そればかりか、責任の所在を明確にすることなく、責任を負う側が政策決定、安全宣言をしているのが実態です。更に政府は核エネルギー利用促進のために放射線のリスクを過小評価しています。騙されないためには科学的根拠に基づいて、個人個人が判断力を付ける事が必要です。一人一人は微力でも、集まれば大きな力になります。個人の権利、健康を最優先にした、原発のない民主的な社会を目指す事が今求められているのだと思います。