福島第一原発事故後に元作業員が被ばくし白血病、労災初認定

(2015年10月21日福島民報新聞、10月21日朝日新聞掲載記事より)

厚生労働省は20日、東京電力福島第一原発事故後の作業に従事し、白血病になった元作業員に、労災を認定したと発表しました。原発事故への対応に伴う被ばくと疾病に一定の因果関係があるとして労災が認められたのは初めてとなります。

労災が認められたのは北九州市在住の男性(41)。男性によると、2012年から13年まで、東京電力の協力企業の作業員として、3号機や4号機周辺で、構造物の設置や溶接の作業に当たり、14年1月に急性骨髄性白血病と診断されました。累積の被ばく線量は福島第一原発で約16ミリシーベルト、定期点検の工事で12年に約3カ月間働いた九州電力玄海原発で約4ミリでした。

放射線被ばくによる白血病の労災は、年間5ミリシーベルトを被ばくし、被ばくから少なくとも1年を超えてから発症した場合について、業務以外の要因が明らかでなければ認定するとの基準があります。

公益財団法人放射線影響協会の原発作業員の疫学調査などによると、90年度から09年度までに累積被ばく量が10ミリ以上で白血病で死亡した人が34人いました。100ミリ以上被ばくした後に胃や肺などの固形がんで死亡した作業員も60人以上います。

福島原発事故後に作業に当たり、累計被ばく量が5ミリシーベルトを超えた人は8月末で2万人以上おり、今後も増え続けるでしょう。労災認定に必要な被ばく量や健康状態の把握は万全とは言えず、申請も容易ではありません。

一方、被ばくした一般住民ががんを発症しても治療費や休業補償が支払われる仕組みはありません。福島県民約46万人を調べた外部被ばくの推計調査では、事故後4カ月間で5ミリ以上被ばくした人が原発作業員ら以外に約950人いました。

原発作業員の被ばく管理に詳しい阪南中央病院(大阪府)の村田三郎・副院長は「作業員は十分とはいえないにせよ放射線防護対策をとった上で被ばくし、被ばく線量も管理されている。一般住民は無防備な状態で被ばくして、線量管理もされていない。作業員の目安より低い線量で治療費や休業補償が受けられる枠組みを作るべきだ」と訴えています。

福島県で暮らす人にとって、放射能にまつわる不安の大部分は、将来の健康に対する事だと思います。原発作業員はもちろん、一般住民に対しても、被ばくから受ける健康への補償制度を国で確立することなく進める原発の再稼働など、あり得ない事だと思います。