東京電力福島第一原発の廃炉作業で発生するがれきなどの廃棄物が2017年3月、構内での保管容量を超える見通しとなり、東電は早急な対策に迫られています。8月末現在の保管量は限度量の約半分となりました。
構内には汚染水タンクが林立しており、貯蔵庫と廃棄物を減容化する焼却炉を設ける敷地の確保は困難な状況です。
放射性物質の付着した廃棄物を構外に運び出すのに法的な制約はありません。東電は外部に持ち出した上で建設資材として再利用する案を検討しています。しかし、原発事故で発生した廃棄物のリサイクルには、業者や一般市民の抵抗感が根強いとの見方も示し、「現状では構内に保管する方法が現実的だ」としています。
原子力規制委員会は専門委員会を設け、廃棄物の建設素材としての再利用を念頭に協議を開始する予定です。
日本より先に「廃炉の時代」に入っている欧米の主要国では低レベル放射性廃棄物の処分地がすでに決まり、埋設処分が進んでいます。
福井県などの資料によると、2014年8月に米国では全127基中、27基の廃炉が決定し、うち10基で廃炉が完了しました。解体で出た低レベル放射性廃棄物は、ユタ州やテキサス州など国内4か所に整備された広大な処分場に埋設されています。
「脱原発」を進めるドイツでは全32基中、7割の23基の廃炉が決まり、稼働中の9基も2022年までに運転を終える予定です。同時期に大量の廃棄物が出る見通しですが、処分責任を電力会社が負う日本とは異なり、国が責任を負い、処分場の建設を進めてきました。
又、最終処分地を決めているのは、世界でフィンランドとスウェーデンだけです。スウェーデンの廃棄物管理会社(SKB)の広報担当者は、「30年のリサーチを要した」と述べています。国内のあらゆる場所を調べ、地震から次の氷河期まで可能性のあるすべてのシナリオを考慮にいれた、とドイツ国際放送Deutsche Welleが報じています。
日本でもこれから原発の廃炉が進む中、廃棄場の問題について電力会社任せにする事には限界が見えおり、国が主導となり決めざるを得ないでしょう。その場合、東京で使う電力を福島の原発で発電していたように、災害の危険性が低く自然豊かな地方が犠牲となるのではないかと不安を感じています。
又、政府はごくレベルの低い放射性廃棄物は放射性廃棄物とせず、一般ごみとして処分してかまわないとする「クリアランスレベルの設定」をしました。これにより放射性廃棄物が再利用され私たちの生活環境へ入り込む事となりましたが、どのような影響をもたらすのかは定かではありません。(参考:河田昌東氏による連載より http://www.chernobyl-chubu-jp.org/_userdata/kawata42.pdf)
豊かさを求め続けてきた資本主義の影である原発のツケを、私たちの子孫が支払わされる未来はどのような世界なのでしょうか。福島原発事故を礎として、これまでの価値観を変えていかなくてはいけない事を忘れてはならないと思います。