放射線?モミの木異変 -上に伸びない幹 福島で放医研調査-

(2015年8月29日朝日新聞掲載記事より)

放射線?モミの木異変 ー上に伸びない幹 福島で放医研調査ー
放射線?モミの木異変 ー上に伸びない幹 福島で放医研調査ー

放射線医学総合研究所で、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響を強く受けた、帰還困難区域内の空間線量率が特に高い地域に自生するモミ個体群を調査した結果を解析したところ、空間線量率が低い地域の個体群と比べて形態変化の発生頻度の顕著な増加が認められました。また、空間線量率に依存してその頻度が高くなっていることがわかりました。
空間線量が最も高い大熊町(33.9μ㏜/h)で9割以上が変化、浪江町の2か所(19.6μ㏜/hと6.85μ㏜/h)では4割強、3割弱と変化率が減少するものの、北茨城市(0.13μ㏜/h)でも1割弱で変化があったそうです。
針葉樹が一般的に放射線高感受性であることは、アメリカや日本における野外放射線照射施設(ガンマフィールド)を用いて行われた樹木の放射線照射実験や、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故の事例等から知られています。チェルノブイリ原発事故後の放射能汚染地域においては、ヨーロッパアカマツ(Pinus sylvestris)とドイツトウヒ(Picea abies)の針葉樹2在来種が明瞭な生物学的障害を示したことが報告されています。
今回の研究による形態変化は貴重なデータではありますが、動物による食害や病気、冷害などによる可能性もあるので、モミの木の変化が本当に放射線の影響なのか、実験室で放射線を当ててどう変化が起きるのか確認する必要があるとのことでした。

福島県では、原発事故以来異常な成長を見せる植物について不安に感じる声が周囲から数多く聞こえてきています。

福島県いわき市の枝垂れ桜
福島県いわき市の枝垂れ桜

 

◀福島県いわき市の枝垂れ桜の木
(2013年撮影)横に広がるように葉が茂っています。

 

 

福島県いわき市の琵琶の木
福島県いわき市の琵琶の木

 

福島県いわき市の琵琶の木▶
(2013年撮影)幹に葉が覆い茂っています。

 

 

 

 

 

▲福島県いわき市のぶどう
(2012年撮影)10年以上前に植えたがそれまでは実が付いたことは無かった。原発事故後異常に茂り、初めてぶどうの実が数多く付いた。

最近富岡町の森林を見て来た人によると、上記の写真の植物と同様に、森林も異常なほどに著しく茂っているとのことでした。
福島県郡山市で暮らしている私も、震災後から道端の植物が異常に茂っている様子を見て、違和感をずっと抱いています。
このような植物の変化について研究で明らかになるには、チェルノブイリ原発事故の時のように何年もかかるのでしょう。専門家による放射線の影響を認める発表が無いなかで、植物の実際に目で見て明確に分かるほどのこうした変化が、今後人間にはどのように現れるのだろうかと常にどこかに不安を抱えながら生活しています。