福島原発事故に伴う高齢者施設入所者の避難による死亡リスクは、放射能被ばくによる死亡リスクの400倍

(2015年9月19日福島民報新聞掲載記事より)

原発再稼働に伴い事故時の幅広いリスク軽減策が必要
原発再稼働に伴い事故時の幅広いリスク軽減策が必要

東京電力福島第一原発事故に伴い、高齢者施設の入所者や職員が避難する事によって抱えたリスクを、避難によって回避できた放射能被ばくのリスクと比較すると、約400倍になることを東京大学などの研究チームが米科学誌プロスワンに発表しました。持病や障害を抱える高齢者の急な避難は被ばく以上に負担が大きく、寿命を縮める危険性が高いことを示唆する結果です。

しかし、だからといって「避難しない方が良い」という単純な結論は出せないところが原発事故対応の難しいところです。チームの村上道夫・前東大生産技術研究所特任講師(現福島県立医大准教授)は「負担の少ない移動方法や避難先を準備して、施設で待避できるよう医薬品や食料を備蓄すれば、リスクは軽減できるはずだ」と話しています。

福島第一原発事故の際には、原発周辺の施設や病院の入居者や患者が避難の混乱で死亡する例が相次ぎました。移動に伴う負担や医療やケアの不足、心身のストレスが主な原因とみられています。

川内原発の再稼働に際し、鹿児島県が避難先を決めたのは10㎞圏内の施設だけでした。しかし、福島県の経験を見れば10㎞圏外でも避難せざるを得ない状況が生じる可能性は高く、同時に多くの施設は避難するべきか苦渋の決断を迫られる事になります。
もしまた原発事故が起こり同様の状況が繰り返されれば、施設は避難を選択せざるを得ないと言っています。原発に近い高齢者施設は入所者や職員の安全を確保するため、いくつもの対応策を用意しておかなければならないでしょう。

川内原発を皮切りに日本は原発回帰へと動き出し、私たちはまたいつ原発事故が起こってもおかしくない状況へと戻りつつあります。
再び余命をいたずらに失う事のないよう、福島第一原発事故での教訓を活かし、幅広いリスク軽減策を早急に準備する必要が求められています。