(2015年9月1日朝日新聞・福島民報新聞掲載記事より)
東京電力福島第一原発事故による影響を調べる甲状腺検査で、今年4月から6月末までに新たに1人が甲状腺がんと診断されました。これにより、検査対象となる事故当時18歳以下だった約38万5千人のうち甲状腺がんと確定したのは合計104人となります。県検討委員会では「現時点で、放射線の影響は考えにくい」との見解を示しています。
この報道について、福島県で最も購読されている地方新聞『福島民報新聞』では3面に大きく取り上げられていますが、『朝日新聞』では最後の社会面に小さく掲載されているのみでした。
1986年4月26日のチェルノブイリ原発事故後はチェルノブイリ地方で小児、特に女児に多くの甲状腺がんが見られたことが報告されています。一般に小児の甲状腺がんの発生は100万人当たり1~3人といわれていますが、原発事故の2~3年後から急な増加が見られます。そして、被ばく時の年齢によってそのピークが異なり、0~10歳までの乳幼児・小児は被ばく7年後にピークがあり、以後漸減して、1997年以降は通常の発生率に戻っています。10~19歳の思春期では被ばく10年後にピークが見られ、2002年以後は急激に増加しますが、通常の発生率には戻っていません。
しかし、チェルノブイリ事故当初の発症者が少なかったのは、当時の検査に問題があったためとの説もあります。現在、甲状腺がんの発症が福島原発事故の影響によるとは認められていませんが、今後も甲状腺がんを発症する人が増加すれば、認めざるを得なくなるかもしれません。
(2015年9月1日福島民報新聞掲載記事より)
甲状腺検査をめぐっては、これまで検査結果のみが公表され、将来的な見通しなど詳細な分析はされてきませんでした。しかし、福島県の県民健康調査検討委員会や保護者から被ばく影響の解明を求める意見が相次いでいたため、福島県では甲状腺検査結果を客観的に分析し、地域ごとの発生状況について相関関係の研究を進めることに決めました。甲状腺がんの将来の患者数を予測し、今後の健康管理に反映させる意向です。
福島のお母さん達は、我が子の健康や将来について不安を抱えながら為す術がなく、県外へ避難して行った人がいる中で福島に残る選択をした自分は間違っていなかったのか、心の中で自問自答をしながら生活しています。関係者に原発関係の仕事に就く人がいる可能性や、放射能に対するそれぞれの考え方の違い、様々な利害関係から、不安を軽々しく口に出すことは出来ません。被ばくを避けるために子どもの外遊びを控えたことにより、体力的な問題を心配する声も挙がっています。
この甲状腺検査の新たな研究により、子どもと保護者の疑問が解消され、少しでも不安が払拭されることを願っています。